千葉県柏市で展開中のまちづくりプロジェクトの実情や課題を学ぶ
本格的な高齢社会に対応する新たな社会システムづくりに関心を持つ私たちは、高齢社会問題を総合的に研究するシンクタンクの東京大学高齢社会総合研究機構が、2010年から産学連携の形で千葉県柏市、UR都市機構と一緒に、急速に高齢化の進む柏市豊四季台団地などの地域での高齢社会時代対応まちづくり・柏プロジェクトに積極的に取り組んでいることに強い興味を持ち、2023年の分科会の年間研究プロジェクトにして、研究調査活動に踏み出す考えでいました。
柏プロジェクトの辻哲夫氏、老年学権威の秋山弘子氏からアドバイス得る
そんな矢先、東京大学高齢社会総合研究機構の客員研究員(元厚生労働省事務次官)で、柏プロジェクトリーダーの辻さんと交流する機会があり、いろいろ話し合った結果、2023年8月7日午後に東京大学工学部8号館ライブラリーで、ディレクトフォースと一緒に高齢社会問題に関する意見交換会を行おう、ということになり、第1回会合開催が決まりました。
当日は、ディレクトフォースの100歳社会総合研究所メンバーを中心に14人が参加し、辻さんから、これまでの柏プロジェクトの取り組み、そこで生じた課題などのお話をうかがえる予定です。私たちにとっては、研究テーマに具体的に踏み込めるので、とても期待しております。
辻さんのお話を受けて、同じ東京大学高齢社会総合研究機構の客員教授で、ディレクトフォースとも接点のある東京大学名誉教授の秋山弘子氏にもご参加いただき、高齢社会に対応する新社会システムづくりに関して、アドバイスをいただけることになりました。秋山さんは老年学という新たな研究領域の専門家です。
柏プロジェクトは医療や介護に頼らないアクティブシニアの誕生をめざす
柏プロジェクトが抱える問題点や課題などに関しては、8月7日に辻さん、秋山さんからお話をうかがい、意見交換を行ったあとで、別途活動報告第2弾の形でレポートしますが、とりあえず柏プロジェクトの概要を申し上げましょう。
この柏プロジェクトは、冒頭に少し触れたとおり人口の高齢化が急速に進む千葉県柏市の地域で抱える問題や課題を浮き彫りにして、課題解決のための実践に取り組むことで、全国の同じような問題を抱える地域のモデル事例にしよう、と東京大学高齢社会総合研究機構が中心になって千葉県柏市、UR都市機構の3者で2010年から動き出したものです。現在まですでに13年がたち、2016年からプロジェクト第2期に入っています。
社会実践型アクションリサーチで3つのテーマにチャレンジ
辻さんらプロジェクト関係者によると、「誰もがいつまでも活躍し安心して暮らせるまちの実現」が主軸テーマで、在宅医療の推進、生きがい就労の創成、生活支援と健康づくり・介護予防などのテーマに関して、これまで研究と現場活動を行ってきた、とのことです。辻さんらが、社会実践型アクションリサーチ・プロジェクトと位置付けているのが興味深いところです。
もう少し具体的に申し上げると、柏プロジェクトでは「いつまでも活躍できるまち」、「健康長寿のまち」、「弱っても安心して暮らせるまち」の3つのまちづくりをめざしています。
このうち、1つめの「いつまでも活躍できるまち」は生涯を通した就労、教育、社会参加の支援と促進を進める、2つめの「健康長寿のまち」はフレイル(加齢・老化に伴う体力の衰え、病気などを引き起こす状態)予防のプログラムの開発、3つめの「弱っても安心して暮らせるまち」は病院などに頼らない在宅医療の普及、地域包括ケアシステムの構築がテーマです。確かに、日本全国のどの地域にも関係するテーマばかりで、辻さんらはこれらのテーマを深堀りして、先進モデル事例にしていきたいそうです。
超高齢社会問題分科会にとってプロジェクト連携はプラス
私たちディレクトフォース100歳社会総合研究所の超高齢社会問題分科会の問題意識も、柏プロジェクトがめざすものとほぼ同一線上にあり、その点でも今回の東京大学高齢社会総合研究機構などとの連携が軌道に乗れば、ディレクトフォースにとっても大きなプラスになること間違いなし、です。
辻さんらプロジェクト関係者からはディレクトフォースに対し、企業幹部OBの経験を生かして、企業が地域社会と共生して高齢者雇用につなげるプロジェクト展開を行うことで、企業の地域貢献につながるので、アイディアをお持ちであればぜひお聞かせ願いたい、とのことでした。この点は重要ポイントです。
(文責 DF超高齢社会問題分科会世話役 牧野 義司)