日時 | 2024年2月21日(水)14:00~16:00 |
場所 | スタジオ751 + Zoom |
テーマ | 最近の社外取締役・監査役の実務課題 |
講師 | 三優監査法人名誉会長 杉田 純 氏 |
参加者 | 44名 |
講演概要
本編として、以下の8つの大項目について説明があり、適宜、補足資料編としてお送りいただいた資料にも言及された。
前段:東証の問題意識としての PBR 1倍割れ企業比率(日本60%、米5%、EU20%)
- 激変する経済・環境
- 日本は個人消費不調続く
- 金利引き上げは賃上げ結果待ちとなるだろう
- 中国経済不安が進行している
- 国内は人手不足解消がキーである。リスキリングに時間が掛かる
- グローバリゼーションでは生産地移転(中国から他国へ)。人権 DueDeli が重要に
- CGコードの取り組み
- 2021年6月の改定は日本の取り組みの遅れを取り戻したもの
- プライム上場企業は独立社外役員1/3以上、’25年までに女性役員1名以上、多様性充実
- これらは社外役員として指導すべき項目
- 2022年 CGS ガイドライン改訂より 社外取締役の資質・評価の在り方
- 東証でも CGC でも社外取締役は非常に重要としている
- トップの選解任や取締役会全体のシステム改善が主な役割
- 「監督」とは経営の仕組みの実効性に対して行うもの
- 機会に対してリスクを取らないことに伴うリスクに関する助言も重要な役割である
- 社外役員評価のひな型はまだ出てない
- 社外取締役の5つの心得
- 最も重要な役割は経営の監督。暴走を防ぐだけでなく攻めの経営への助言
- 社内の常識でなく社会の常識で、中長期の全社最適視点をもって
- 様々なしがらみに拘らない活動を行う
- 社長と良いコミュニケーションをもつ
- 利益相反には厳しく対応する
- 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
- 成長性の高い事業があることを示せ。資本効率や株主還元中心のものが多い
- ROIC 分解ツリーや逆ツリーを活用せよ。人的資源の活用にも有効である
- 人的資産と無形資産価値がブランド力・企業価値向上につながる
- 海外投資家は EBITDA を見ている
- 知財・無形資産の投資・活用戦略
- 日本企業は無形資産価値向上の開示が不足している
- 7つのアクションは分かりやすい。バックキャストで進める
- 人的資本の開示と方向性
- 自然関連財務情報の開示(新たなサステナビリティ関連情報)
- TNFD では LEAP アプローチが推奨されている。
(LEAP=Locate(発見)、Evaluate(診断)、 Assess(評価)、Prepare(準備))
- EU の GX/DX にも要注意。製品ごとに DPP が求められる。
(DPP = Digital Product Passport)
質疑応答
Q1 | 資本コストを意識した経営は大変な手間である。その中で、1. CFO の重要性、2. 社外取締役の役割、をどのように考えるか? |
A1 | 社外役員養成講座で財務系をしっかり学ぶ必要がある。取締役のリスキリングが要請されている。しかし、時間的に限られているので、経企室や財務部門を強化してより分かりやすい資料作りをすることも有効である。 |
Q2 | 無形資産・知財の開示取り組みが日本は遅れている。開示基準も無く、開示事例も乏しく、会社によっても取り組みが大きく異なる。米企業はどうか? |
A2 | 米国でも現状では特許件数とか研究員数程度。これから取り組みが進み基準作りも進むと考えられる。 |
Q3 | 気候変動と人的資本は開示基準あるが、無形資産や自然資本については基準無しに開示要請がある。方向性は示されたようだが、今後の時間軸はどのようなものと考えればよいか? |
A3 | 基本は ISSB や国際会計基準に依らざるを得ない。彼らは他にとられたくないので先行している。ただし、良いものは取り込む姿勢を持つ。懸念は基準なしに監査法人以外に認証機関を作ろうとする動きがあること。基準無しには認証できない。 |
Q4 | 女性役員急増は不可能ではないかと思われる。社内育成が良いが、時間がかかる。政府が優遇税制等の十分な支援をすべきと思われるがどう考えるか? |
A4 | 2025年の一名以上(約1400人増)でも難しい。2030年三割にはさらに3千人ほど必要で非常に大変である。しかし、良いことなので目標変更はないだろう。 |
以上(猪野 久仁朗)