日時 | 2024年6月24日(月)14:00~16:00 |
テーマ | 優秀なCEOや経営人材の育成方法と取締役会の果たすべき役割 |
講師 | 三宅浩四郎氏 エゴンゼンダー株式会社 経営コンサルタント |
聴講者 | 26名(後日視聴した者を含む) |
場所 | DFスタジオ751 + Zoom ハイブリッド方式 |
講演概要:
優れた経営人材・経営チームを作るための要諦
まずは何を置いても必要となる環境・風土(社長の強い思いや人重視カルチャー)。これに必要となる仕組み(採用・育成・評価・選定)を加え、さらに社長の能力・機能を明文化する。
社長後継者を作る基本的なプロセス
社長だけでなく経営人材候補も選定する。次世代・若手・ハイポテンシャル世代から幅広く選ぶが、同じ評価軸で見なければならない。イメージとしては、山の頂上(社長)を10合目に喩えると8合目に相当する人材を複数作ることを目標とする。
採用
社長候補者を外部から採用する時は、アトラクト・ストーリーが必要になる。給料ややりがいだけでなく、「その候補者のキャリアにとっての意味」を強く訴えることがポイントだ。
育成
トップリーダーに成長するには6つの分野での経験が必要であることが判ってきた。6つとは、大組織運営、事業運営(P/L責任)、複数事業・地域の経験、全社横ぐしの経験(企画等)、新規事業・組織立ち上げ、撤退・リストラの6つ。
成長のボトルネックになるものは5つ。①知識がない、②スキルがない、③アイデンティティ(自分の役割ではないと判断する)、④心理特性(性格的特徴)、⑤内的動機(やりたくない)の5つだが、①から⑤に進むにつれて改善が難しくなる。
選抜
出来れば30代前半で選抜を開始する。なぜなら、社長育成における最も効率の良い方法は経験であるが、前述の6つを全て経験するには1つの分野で2,3年としても15年~20年かかる。また、選抜に当たってはグループ全体・グローバル全体の視点が必要であり、どこに、どんな人がいるのか、人材の見える化が必要になる。定期的な入れ替え(敗者復活)をすることで、緊張感と期待感を持たせる。
評価
まずはあるべき姿像(当社の社長はかくあるべき)を作る。これが極めて重要で評価の軸になり、若手から次世代まで同じ軸で評価する。評価に当たっては、必ず社外人材との比較も行い、経験・知識・スキル、コンピテンシー(能力)、ポテンシャル(資質)、価値観・人柄を考慮するが、最も重要なのはポテンシャルに含まれる好奇心である。
取締役会の役割
取締役会の最大の役割は、社長の選定と解任。選定は新社長就任直後から開始する方が良く、候補者を数年かけて絞っていく。評価は指名委員会等が主体になって定期的に行うい、「社長のあるべき姿像」を指標として、多面的評価を行う。食事会等を企画し、仕事以外の面もチェックする。経営経験のある社外取締役によるメンタリングも有効。
その他
社長本人から見て、社長後継者が年々物足りなく感じて適格性が下がっていると錯覚することがある。これは、経営人材として一番成長できるポジションは社長であることに起因しており、後継者より社長自身が速い速度で成長していて差が開いているように感じるため。
Q&A:
Q1 | 8合目人材を育てる要諦は何か?また、昨今オーナー系大企業が後継者育成に苦戦しているが、社長が凄まじい速度で成長している企業における後継者育成は、どう考えればよいのか? |
A1 | 多様性の確保になる。例えば、深掘り型と調整型の様に異なるタイプの人材を選抜すると良い。オーナー系企業の後継者育成は正直難しく、社長自身が変わるしかないが、一つの策としては、独りではなく経営チームとして社長を後継するようにすると良い。 |
Q2 | 中小企業の社長後継についてアドバイスするとするなら、どのようなアドバイスをするか? |
A2 | 人材不足という問題があるため、承継問題が表面化する前に手を打つ必要がある。それが難しい場合は会社の売却になる。 |
Q3 | 社長候補から漏れた人はモラールダウンしないのか? |
A3 | 結論としては、YesでありNoである。大事なことは、敗者復活・入れ替え戦があることを事前に伝えることだ。 |
Q4 | 外国人社長を招聘することについて、注意するポイントは何か? |
A4 | ①社長を外部から招聘することの是非、と②社長が外国人であることの是非、という2つに分解する必要がある。①については、グローバルに見ても外部招聘で成功している例は実は少ない。②については、難しい面がある。外国人社長のサポーターが継続的に社内にいないと難しい。 |
Q5 | 選定すべき若手人材の発掘における注意点はないか? |
A5 | 30代から50代にかけて、ポテンシャルからコンピテンシーへ評価の重要度が移動する。若手のポテンシャル評価においては、自己評価よりも他者評価を重視すると良い。イメージとしては「目を開ける」機会を与えることだ。 |
Q6 | 取締役会の重要な機能として社長の選解任が挙げられているが、現実は困難。又、個別案件より戦略を重視すべきと言われるが、社外取締役の役割はどのようにあるべきだろうか? |
A6 | 個別の業務執行の監督は社外取締役でなくても可能。欧米の取締役会は、日本に比べて開催頻度が少なく、個別業務執行の監督ではなく重要なテーマ(デジタル、経営人材、M&Aと投資、等)を決めて、1回の取締役会で徹底して議論する方法が取られている。これにより執行側メンバーに気づきを与えることができるため、日本企業ももう少し重点テーマの議論をやっても良いのではないか。 |
以 上(柳 昭駒)