第163回経済・産業懇話会
「日本産業は何を目指せば生き残れるか」
日本の化学の競争力と課題、次世代人材の育成
~日本化学会からの視点で~

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日時2024年7月18日(木) 14:30~16:45
講演「日本の化学の競争力と課題、次世代人材の育成 ~日本化学会からの視点で~」
講師鈴木慎一氏(日本化学会事務局長)
会場スタジオ751 + Zoom
参加者34名

趣旨

今回は日本化学会事務局長の鈴木慎一さんから、日本の化学研究の競争力の現状と課題についてお話を頂いた。 日本の産業を支えてきた、化学などの研究開発力が諸外国に後れを取りつつあると言われている中、かなり厳しい現状を再認識することができた。

  • 論文数や引用数などの相対的地位の低下
  • 化学会の会員数の低下
  • 米国などに比べて、財政基盤も弱い
  • 科研費の削減で疲弊している大学の実情

など今後日本がノーベル賞を取れるのか心配になりました。
討議では活発な意見交換ができ、理解を深めることができました。

講演資料

一部の非公開資料を除いて添付。転用不可。

講演資料(転載不可)

質疑応答

Q化学会での情報に対する研究や実用化などはどのようにしているのか AIを手段として収入につなげることをしているのか
A情報やデータの取り扱いについては情報化学部会があり、ここで扱っている
米国ではジャーナルが収入源で世界中の化学物質に関する論文、特許などの検索を行うデータシステムがあり、収益につなげている(SciFinder)
日本も米国のシステムに頼っている
Qイギリスでも同様のシステムがある 今のままでは日本の大学は大変
A今からデータベースを構築立ち上げするのは困難 日本の得意とする新材料に関するデータベース(Material informatics)などは可能性を提案したが、企業はデータを出したがらず進まない
Q財政規模が小さいというが、昔はもっと小さかったのではないか それでも世界に伍してきたと思うのだが どうしてか
A日本の引用論文が少ないのは、日本の研究者が仲間の論文を取り上げないという側面もある 中国などは互助会的に論文を引用しあっている
日本の論文数が減ったわけではない 海外がもっと多くの論文を出すようになった
また、実験のやり方など、効率的に論文が出せるようになっている
Q化合物は生成AIで予測できるようになってきた 商品開発はAIにまかせればよい
Aトップダウンかボトムアップかということがある
科研費が減り、国の大きなプロジェクトへの参加での競争資金に飛びつく
そのようなテーマは各国も力を入れている
日本は新しい発想からの研究がやりにくくなっている
自由な発想で研究できる科研費が減り、国の決めたテーマに資金が回る
科研費をもっと若手に回すよう国に要請、 ボトムアップを増やす必要がある
Q翻訳者の話で、仕事が減ったと聞いている AIによる翻訳進んでいる
日本人の壁であった英語での発信力が、これからはAIでもっとやれるようになるのではないか その環境つくりはできないのか
A今はほとんどの先生がChatGPTなどを使っている 編集も実用の域にある
Qいまは高度なソフトでなくても充分役に立つ
学会運営だが、大学 学会 企業 この3つの役割はなにか
A理解は難しい、学会は緩やかな集まりで誰でも入れる
サービスは受けたければできる 生かすのは個人の問題
学会でのネットワーク作り、新しい発想の発見、企業とのつながりなど
参加者の思いが生かせる場所
Q学会の開催には大きい資金がいる、先生はボランティアーだ
A出版でOxfordを協業した、版作りWeb化などを依頼している
広報活動は化学会がやる 米国などは論文審査などにも資金を出すが日本は無料
Q日本ではドクターになることのコストパフォーマンスが悪い、メリットは何か
ドクターが企業では活躍していない
日本では不要な学歴と思われている
Aノーベル賞クラスの先生方は皆素晴らしい人達だ 企業に行ったら邪魔者になるかもしれない 一部のドクターは付き合いにくい
しかし、今後に日本のシステムの中でのドクターの役割が変わってくるのではないか
Q以前はドクターを採用するのは研究内容からではなかった、3年間な研究をしてきたという経歴で見ていた、欧米では研究の内容・知識を採用する
日本では企業への協調性を強要してきた
これからはジョブ型の採用が増える ドクターの能力を上げる必要がある
A国はもっとドクターを取れ、と文科省や企業に要請している
Q役所のシステムを変えないとだめではないか
申請書ばかりで時間を取られる
インボイス制度などを見ると、税収とインボイスに費やす膨大なコストが見合っているとは思えない、このままでは日本は沈むばかり
問題を意識して解決しようとしても、実務が判っていない
ジョブ型制度なども日本に合ったものにしていくべき
ベンチャーなども企業の中で育てるような
大企業に行きたい学生、ベンチャーを起業したい学生 両端は別として、中間の領域の学生をどう生かすべきか
米国では ベンチャーキャピタルが力をもって、アイデアを事業に育てている
A日本にはそれがない 先生は一つのベンチャーを立ち上げたら、それ以外の研究はできなくなる
米国では御用聞きのように研究室にVCが来て、良いアイデアがあると金を出す
先生はまた、自由に研究に入りこめる
QVCが実務をやるのではなく 人を集めてやらせる
日本のVCとは違う、資金を出しても育てる能力がない
問題はアイデアを引っ張っていく人材を育てることではないか、企業化マインドを持った人を探してくることだ
どうして日本がこのようになってしまったのか、根本的なことを考える必要がある
日本人にハングリー精神が欠落してきたことが大きい 新しいことをやらない 企業ではドクターなど必要としない 社会のマインドが日本をこのようにしている
行くところまで落ちないとだめか
日本化学会の化学実験の会、DFの理科実験グループをサポートできないか
A資金は無理 化学だいすきクラブとの接点 実際の実験教育は支部がそれぞれやっている 本部からと件の要請はしていない
Q地方でやるときにDFのメンバーが行くとコストがかかる 協力してもらえるとやれる

以 上(浅野応孝)

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