DFと東大IOG双方で接点多いことを確認
本格連携に向け足並み揃う

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東京大学 高齢社会総合研究機構 (u-tokyo.ac.jp)

2024年7月19日に開催したIOGとの会合では、DF側プロジェクトリーダーで健康医療研究会代表の江村泰一氏が冒頭に「高齢社会問題解決に向けてDFができること」というテーマで問題提起しました。具体的には、DFがいま取り組みつつあるプロジェクト報告だけでなく、今後の高齢社会課題に対応する問題提起や新たな活動提案などです。

また、IOGも産学連携の形で進めるジェロントロジー(老年学)アカデミープロジェクトの現状報告と同時に、DF側に対する問題提起を行いました。そして、IOG側プロジェクトリーダーの辻哲夫氏(元厚労省事務次官)が、これまで東大IOGが人口の少子高齢化の進む千葉県柏市豊四季台で展開する健康長寿のまちづくり、とくにフレイル(高齢者の身体虚弱化)予防プログラムの開発など社会実験型プロジェクトなどの取組みを紹介すると同時に、DFとの連携に大いに期待したい、と述べました。
これらを踏まえDF、IOGの双方で接点多いことが確認されたため、双方は今後の本格連携に向けて足並みをそろえる形となりました。

 まず、江村氏が、IOGとのプロジェクト連携にあたって「DFは、問題意識旺盛な企業幹部OBが社会貢献の形でさまざまな活動を行ってきたが、IOGに蓄積された諸研究成果やノウハウを可能な限り活用させていただき、いい意味での化学反応によってWIN・WIN関係を構築したいと考えている」とあいさつしました。

 この江村氏のあいさつに合わせて、DF超高齢社会問題研究会代表の牧野義司(このレポート筆者)も「人口の高齢化が急速に進んで経済社会に数多くの問題を投げかけるアジア諸国にとって、日本が先行して新社会システムをつくり出せば、大いに評価対象になるのに、残念ながら、制度設計ができていない。そこで、この際、IOGとの連携によって、問題意識に磨きをかけるための刺激を得ると同時に、DFとしても企業や大学、自治体間のネットワーク調整やつなぎ役など役割を果たしたいと思っている」と述べました。

 このあと、DF側の会合出席メンバーがいま取組んでいる活動の報告や新たな社会システムづくりにつながる提案を行いました。このうち、平井隆一氏が仕事の関係で急きょ欠席されたため、江村氏が託されたレポートを紹介しました。

定年後アクティブ人生伝授の「セカンドキャリア塾」を
平井氏が提案

平井氏のレポートは、人生100年時代のもとで、企業を停年退職した人たちがこれまで培った後半生の活動体験や経験を、あとに続く現役世代に伝え悔いのない人生を送るようにアドバイスやノウハウ伝授のための「セカンドキャリア塾」をつくろう、というものです。

平井さんはレポートで「定年後、これから何をすればいいのかわからず困っている人がいかに多いことか。そこで、現役のうちから定年後を見据え、何をやってアクティブに後半生を過ごすか、人生の先輩たちが実例をもってアドバイスすることは間違いなく重要」と述べています。「セカンドキャリア塾」で取り組むべき具体案を挙げ、なかなか魅力的です。

岩佐氏、藤村氏ともにDFのフレイル予防の積極取組み必要を強調

続いて、岩佐俊明氏が、今後本格化する日本の高齢社会で大きなテーマとなる高齢者のフレイル予防対策、とくにご自身の歯科医体験を踏まえオーラル(口内)フレイル予防が重要と問題提起、そして、現役世代が早い段階から、その予防に向けての取り組み、とくに企業内での取り組みが重要で、DFが会員企業との橋渡しにとどまらず講師派遣などのマネージメントにもかかわるべきだ、と提案しました。

また、藤村峯一氏は、東大IOGが千葉県柏市豊四季台地域でのフレイル予防活動を今後、全国に拡大しようとする取り組みに関して、DFも積極連携が必要と発言しました。藤村氏はその際、DF地域デザイン総研の地域活動で培ったリソースをもとにDF全会員に対し、フレイル予防がなぜ重要かを周知徹底するだけでなくフレイルチェックなどのサポーター活動への参加依頼、またDF関連企業や団体、会員の出身企業の健保組合への働きかけが重要になる、と述べました

宮崎泰雄氏は、千葉県柏市での地域活動ですでにフレイル予防にかかわっている活動体験をもとに、いくつか踏み込んだ提言を行い、IOG関係者の関心を引きました。

宮崎氏によると、2022年1月から市内20か所ある「通いの場」の一つ「コミュニティルームはなみずき」で、柏市社会福祉協議会の支援を得て、フレイル予防の取組を開始しました。重要なのは、「通いの場」活動に参加したボランティア(約50人)に対してフレイル予防ポイント(柏市のフレイル予防推進ツール。1回参加200ポイント、年間5000ポイントが上限。WAONカードとして利用可)が付与され、実利的なメリットをつける工夫がされており、ボランティアに参加した人たちにはインセンティブとなるばかりか、地域社会への貢献を誇りにする地域住民も増える、という話です。

宮崎氏は「DFの取組みとして、いろいろなことが考えられる。たとえばOVER80歳フレイル予防の同好会を設立し、メンバーが活動で集めた定点測定データを東大IOGに提供してフレイル予防の定期的な効果測定につなげていくことが必要。また、DFが産学連携の一環で支援しているベンチャー企業など新興企業に対しても、フレイル予防活動を働きかけるなどで貢献していくこと重要だ」と述べていま

高齢者見守りセンターやスマホの積極活用が重要と立石氏

また、東大IOG関係者の関心を呼んだのが立石裕夫氏の高齢者見守りセンター(仮称)の提案でした。立石氏の問題意識は、人口の高齢化が本格化する日本で公的な介護施設の建設が思うように進まない中で、介護施設を補完するための高齢者向け医療や生活支援を行う高齢者見守りサービスセンターを民間でつくり、看護師や介護士などの有資格者が運営に参画する仕組みを立ち上げれば、高齢者支援のすそ野を広げることに役立つのでないか、というものです。

また、東大IOG関係者の関心を呼んだのが立石裕夫氏の高齢者見守りセンター(仮称)の提案でした。立石氏の問題意識は、人口の高齢化が本格化する日本で公的な介護施設の建設が思うように進まない中で、介護施設を補完するための高齢者向け医療や生活支援を行う高齢者見守りサービスセンターを民間でつくり、看護師や介護士などの有資格者が運営に参画する仕組みを立ち上げれば、高齢者支援のすそ野を広げることに役立つのでないか、というものです

立石氏は、この高齢者見守りセンター構想以外に、ICT(情報通信技術)を積極活用して高齢社会に「超」がつく超高齢社会時代に対応した取り組みも可能だ、と問題提起しました。具体的には、スマートフォン(スマホ)が急速に普及している状況下で、個々人がスマホを活用して身体的なフレイル度をチェックできるようにスマホを多機能化すること、また認知症の高齢者が外出して行方不明になるリスクを防ぐため、逆探知機能をつけたスマホを高齢者に持たせて追跡可能なようにすること、高齢者に簡易スマホを持ってもらい、突発緊急事態にスマホに備え付けの緊急コールボタンを押して応援を依頼することなどがスマホ活用例として考えられる、と述べました。

東大IOGの神谷氏はフレイルサポートセンターで国民運動を提案

これらDFの取組みを受けて、東大IOG側からは、民間企業出身の神谷哲郎氏が、千葉県柏市豊四季台で本格的に取り組んだ柏市プロジェクトに加え、他府県で進めているプロジェクトを報告したあと、今回のDF側のいくつかの報告内容について、「DFの取り組みは、私たちの取組みと軌を一にするもので、本当に心強い。今後、ますます連携を強めていきたい」と述べました。

その際、神谷氏は、高齢者の見守りセンターのネーミングについて、「高齢者の見守りという言い方よりも、身体の虚弱化(フレイル)を予防するという意味で、フレイルサポートセンターの名称の方が国民的な運動に広げていく場合にはなじみやすいかもしれない」と述べたのが興味深い点でした。

超高齢社会対応の政策にはデータ確保が重要とIOG側リーダーの辻氏

神谷氏に続いてIOG側プロジェクトリーダーの辻哲夫氏が、会合を締めくくる形でDFとの連携に関して、「これまで幾度かDFの皆さんと共通の課題への取り組みなどを話し合って、超高齢社会のさまざまな課題に対するスタンスが一致していることがよくわかった。引き続き連携強化をしていきたいので、よろしくお願いしたい」と述べました。

辻氏の発言で印象的だったのは、「フレイル予防政策は、高齢社会化が本格化する日本にとって、間違いなく重要なテーマ。その場合、政策の裏付けとなるデータ確保がポイントとなる。IOGとしては、高齢者向けフレイル健診のチェック項目を整備したい。その点でDFの皆さんからもご提案いただきたい」、「超高齢社会が今後、どんな社会になるのか、超高齢者が消費する市場は成熟市場として魅力的な市場となるのか、元気な高齢者を中心に高齢者雇用をどこまで創出できるのかなど、見極めるべきテーマは多い。DFの皆さんは、企業幹部OBとしての豊富な経験をお持ちなので、IOGは心強く思っている。互いに手を携えて頑張りましょう」。

以 上(牧野義司)

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