「フレイル予防の実装化でのDF貢献に大いに期待」
東大IOG辻プロジェクトリーダーが表明
連携は着実に進む

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ディレクトフォース(DF)は、超高齢社会時代に対応する新社会システムづくりで問題意識を共有する東大高齢社会総合研究機構(IOG)との間でプロジェクト連携を進めていますが、2024年9月10日に開催の合同会合で、IOG側プロジェクトリーダーの辻哲夫氏(元厚生労働省事務次官)から、DFに対する心強い応援メッセージがありました。その発言は、DFとIOGとの連携が着実に進みつつあることを印象付けるものでした。

辻哲夫氏の発言は、高齢社会対応でさまざまな取り組みを行うDF側会員が、9月10日の会合で前回7月19日会合時の報告をフォローアップする形で、それぞれの活動や取り組みの報告を行ったのを受けたものです。ポイント部分は以下のとおり。

「健康長寿社会に向けフレイル(心身の虚弱)予防が国民的課題となる、との判断から、東大IOGは、7月24日に自治体や企業などと一緒にフレイル予防推進会議を立ち上げました。今回、皆さんの取組み報告をお聞きしていて、フレイル予防の今後の実装化、高齢社会国日本の課題解決に真摯に取り組まれつつあり、心強く思いました。今後、ディレクトフォースの皆さんが知見を最大限に活用され、貢献いただくことを強く期待します」

DFメンバーが合同会合で報告した今後の取組み内容は、以下のとおりです。これらについて、検討内容が整った時点でDF内でオーソライズを行った後、順次取進めていく所存です。

  • DF健康医療研究会が行った過去の会員健康調査を定点観測の形で再度調査すると同時にフレイル予防に関する認識度調査を行う。DFはIOGとの連携で、やれることからやっていく積極姿勢で臨みたい(DF側プロジェクトリーダー・江村泰一会員)
  • 2025年から本格化する超高齢社会時代への対応が重要。IOGの専門研究者と新社会システムづくりでプロジェクト連携を模索したい。高齢者生きがい就労が抱える現代課題を探るため、自治体や企業などの取組みを現場調査する(牧野義司会員)
  • 企業を定年退職した人たち向けに、第2の人生にアクティブ対応するためのアドバイスを行うセカンドキャリア塾を開設する。DFメンバーが講師役(平井隆一会員)
  • DF会員のみならず、DF会員の出身企業の企業内健診を積極活用し、現役社員を対象にオーラルフレイル調査を行う。そのデータをIOGと共有する(岩佐俊明会員)
  • DFの80歳以上の会員でフレイル予防に関する同好会を立ち上げ、シニア会員のフレイルチェック度合いを定点測定し、データはIOGと共有する。DFの会員が持つIT技術をアクティブに活動する地域自治会などに技術支援の形で提供、またDFが支援するベンチャー企業をIOG産学連携プロジェクトに紹介したい。(宮崎泰雄会員)
  • 山梨県北杜市などの自治体と連携して地域高齢社会の課題を探る。(藤村峯一会員)
  • 高齢者見守りセンター(フレイルサポートセンター)でのICやスマホ活用によってフレイル度合いの数値化につなげることを検討する。(立石裕夫会員)
  • DF会員を含め女性フレイル予防推進体制づくりにチャレンジする。(得丸英司会員)

DFと東大IOGとの合同会合で議論が集中したのは、フレイル予防策、中でも80歳以上のOVER80グループへの対応をどうするか、もう1つは高齢者生きがい就労の仕組みが地域社会で広がりあるモデルとなって定着できるか、という2つの点でした。

まず、OVER80グループのフレイル予防策に関して、DF側から宮崎泰雄会員が「DF会員のうち、80歳以上が2024年時点で2割だが、高齢化が進み、あとに続く世代が80歳代に仲間入りする2027年には、その数が大きく増加する、という。この高齢者層のフレイル予防対策は間違いなく重要。それに関するDFのデータを東大IOGに提供し研究テーマにしたらいい」と述べました。他のDF会員からも「同感だ。高齢者特有のさまざまな問題が考えられるので、しっかり議論する必要がある」との指摘がありました。

本件については、OVER80グループ世話役の保坂洋会員と協議の上取進めていきます。

この点に関して、IOGの辻哲夫氏は、「東大は学術的知見をいろいろ持っていますが、社会実装にあたっては、まだ対応が十分でありません。自治体の取り組みがベースになり、そこに企業が加わって産業化していくことが極めて重要。その点でもディレクトフォースの皆さんの取組み、そのデータは活用させていただきたい」と述べました。

辻哲夫氏によれば、独立行政法人の福祉医療機構が80歳代の課題に関して研究を行っている。高齢社会化が進む現代でも、80歳代の人たちの体力、気力が落ちるのはやむを得ないにしても、フレイル予防策によって体力低下の進行を抑えることが重要だ、という。

DF、東大IOGとしては、フレイル予防の社会実装、フレイル予防の産業化などに関しては、テーマや課題が数多くあるので、引き続き共通課題として、互いに検討し合うということになった。

もう1つのテーマ、高齢者の生きがい就労の仕組みが地域社会で、広がりあるモデルとなって定着できるかどうか、という問題に関しては、DFの中尾誠男会員が、ご自身が社外取締役になっている企業の事例をもとに、1)女性の活用、2)高齢者就労の場づくり、3)外国人労働の活用の3つによって、雇用労働力の確保に努めていること、中でも高齢者の就労の場づくりには力を注ぐことが必要、と述べました。

この点に関して、辻哲夫氏は「私が聞いているところでは、必要とする人材のマッチングがうまくやれているかどうか、その場合、企業側が雇用にあたって、再トレーニングの仕組みをしっかりとつくっているかどうかなどが重要だ、という。その点は確かにポイントだ、思った」と述べました。

その際、DF、東大IOG合同会合で、興味深いビジネスモデルが3つある、との話が出ました。1つは、マンション管理サービスをシステム化したウエルネス社、2つめはリクルートOBがビジネス化した「おしごとコンビニ」のシステム、最後の3つめはプロフェッショナル人材に特化した人材マッチングサービスを行うみらいワークス社です。

いずれも高齢者就労ともリンクしており、マッチングアプリなどを活用して、ビジネスとしても成功しつつある、との話でした。

辻哲夫氏は「この分野の専門家の1人、東大名誉教授の秋山弘子氏が、高齢者の生きがい就労を地域社会に定着させる仕組みをつくれたら、日本は幸福な長寿社会モデルの先駆け国になれる、という問題意識で、仕組みづくりにチャレンジされているが、DFの皆さんもそれぞれの知見を活かして、モデルをぜひつくっていただきたい」と述べました。

その点に関して、DFの真瀬宏司会員は、「みらいワークス」の取組みがなかなか面白い、と聞いている。プロフェッショナル人材に関するマッチングサービスがメインだが、いまは人手不足時代でもあり、アイディア次第でいくらでもビジネス化が可能だと思う」と述べました。

辻哲夫氏からは、「地域社会で高齢者生きがい就労を生み出すプラットフォームをつくっていくことが今後、ますます重要になってくると思います。政治や行政がもっとそういった点に踏み込むことが重要ですが、DFの皆さんは、そういった点に問題意識も持っておられるので、ぜひ積極的にかかわっていただきたい」と、DFに問題提起がありました。

このあと、フレイル予防は、DFにとっても高齢者対策のみならず、まちづくりなど多目的な面でプラスになるため、改めて、DF内で、この問題の周知徹底を図れるように、体制づくりが必要との意見が出ました。

そこで、DF地域デザイン総合研究所として、フレイル予防に関する会員向けアンケート調査を行って問題意識を醸成すること、また、辻氏ら東大IOG専門家を講師に招いて会員勉強会を開催することが必要、との点で意見一致しました。

次回のDFと東大IOGとの合同会合は11月28日15時半に開催、と決めましたが、互いに本音ベースで、もっと意見交換しながら交流を深めることも重要、との判断から、合同会合後にパート2会合を開くことにしました。  

 以 上(超高齢社会 牧野義司)