観光立国研究会は、地域デザイン事業本部(北陸ブロック)と協賛で、10月3日より2泊3日で北陸視察旅行を開催しました。北陸でまちおこしにたずさわっている方々から直接話を伺い、実際に歩きました。
参加メンバーは以下7名で、終始和気あいあいとした雰囲気の中、非常に充実した旅となりました。
<参加者(敬称略)> 市古、山口、瀬谷、宮武、寺田、川﨑、見目
金沢では、寺田さんの紹介でひがし茶屋街まちおこしのレジェンドである佃一成様や泉鏡花研究家の小林弘子様から貴重なお話を伺えました。高岡では、DF北陸ブロックリーダーの川﨑さんにプランニングから引率に至るまで大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。
主な工程
※①~④はまちおこし視察
10/3(木)
~11:00 | 金沢集合、駅ビル内「おでん 黒百合」にて昼食後、ひがし茶屋街へ |
13:00~14:30 | ① ひがし茶屋街「浅の川園遊会館」にて 佃一成様講話、および、館長の上原純一様より会館の紹介 |
14:30~15:00 | 主計町(かずえまち)茶屋街散策(寺田さんの案内で) |
15:00~16:00 | ② 金沢文芸館にて小林弘子様(泉鏡花研究家)の講話<金沢と文学> |
16:15~18:00 | ③ 「九谷窯元 鏑木店舗」八代当主 鏑木基由様との懇談 |
18:15~20:30 | 東山 志(よし)にて加賀料理の夕食 (ホテル・トリフィート泊) |
10/4(金)
~10:10 | 金沢より新幹線で新高岡に移動し、バスで南砺市井波へ |
10:10~13:20 | ④ 一般社団法人ジソウラボ 島田優平代表理事との懇談後、島田代表の案内で井波のまちあるき。移住企業家の店・宿泊施設等視察。その中のイタリアンレストラン「nomi」にて昼食。 |
13:20~18:00 | 瑞泉寺周辺を散策。バス、タクシーを乗り継ぎ高岡に移動。 ホテルチェックイン後、日本三大大仏「高岡大仏」、高岡万葉祭り、高岡物産館等見学。 |
18:00~ | 「御料理 八百石」にて郷土料理の夕食。 終了後有志でスナック「めだか」にて引き続き懇親。 (ホテル・ニューオータニ高岡泊) |
10/4(金)
~9:00 | ホテルチェックアウト後、JR氷見線で雨晴(あまはらし)へ。 |
9:00~11:30 | 雨晴国定公園、道の駅 雨晴、万葉歴史館等見学。瑞龍寺に移動 |
11:30~13:30 | 瑞龍寺門前「やすらぎ庵」にて昼食。 住職による案内・講話をいただきながら、国宝瑞龍寺見学。 |
13:30~16:00 | 重要伝統建造物保存地区(高岡鑄物発祥の地「金屋町」)散策・見学(ボランティアガイドによる案内)。地場センターでお土産チェック後、ホテル ニューオータニ高岡ロビーにて解散。 |
視察旅行
① ひがし茶屋街・・・佃食品(株)
代表取締役会長 佃一成様 講話(浅の川園遊館にて)
江戸時代より料亭・郭のあった東山界隈が衰退する中で、佃さんは1980年青年会議所の仲間3人と共にまちづくりフォーラムを開催し、「老舗・文化・ロマンのまち」の復活を目指す。
復興の核となる「浅の川園遊会」を毎年開催し、川床や水芸等趣向を凝らし多くの観光客が集まるようになった。また、「鏡花の夕べ」など文化的イベントや文化人との交流も深めた。
まちづくりに祭りが効果的であり継続が重要であること、4、5人の核となる人と30人ほどの賛同者が必要であることなど、実体験を通してのまちづくりのポイントを教授いただいた。
「浅の川園遊会館」は金沢の伝統的町家を改築した建物で、休憩スペースのほかパネルや展示、映像で茶屋街の歴史やまちづくりを学ぶことができる。舞台でお座敷体験も実施しており、この地の観光拠点になっている。
ひがし茶屋街と浅野川を挟んで向かい合う主計町茶屋街は、明治初期からの古く風情のある街並みが残っている。小雨の中、寺田さんの解説を聞きながらまちを散策した。


上原純一館長による館内見学

(前列中央が佃様)

②金沢文芸館・・・泉鏡花研究家 小林弘子様講話「金沢の文学」
小林さんは寺田さんの友人でペンクラブ会員。泉鏡花記念金沢市民文学賞を受賞している。
金沢は、金沢3文豪(泉鏡花、徳田秋聲、室生犀星)のほか、西田幾多郎、鈴木大拙など多くの文化人を輩出。優れた人材がどのように金沢の地で生まれ育ち世に出て行ったかを語っていただいた。
前田家は外様大名のため、幕府の警戒を解くために武道・蓄財より文化・芸能面の育成・奨励に努めたことが文化的背景にあるとのこと。
なお、金沢文芸館2階には「金沢五木寛之文庫」があり、全著作のほか写真・パネル等充実した展示がある。

笠間さん(前列右1人目、
小林さん友人)を囲んで

③ 伝統工芸とまちづくり・・・鏑木商鋪代表取締役 八代当主 鏑木基由氏
9/10 地域デザイン勉強会で講演していただいた鏑木基由氏のお店(九谷ミュウジアム)を訪ねた。九谷ミュウジアムは長町武家屋敷にある風情ある和風建築で、九谷焼の販売だけでなく鏑木コレクションの展示や茶室・庭を臨む食事スペースもある。ここで鏑木さんから、九谷焼を通して伝統工芸を守るとともに、金沢の文化と伝統を世界に向けて発信している取組みや、今後さらに発展させるための武家屋敷のまちづくり構想、そのための課題等を語っていただいた。
千本の木を植えるようにまちおこしは一度で実現できなくても少しずつ継続すること、自分が自分であるためには周りも栄えることが肝要、評論家や理論家は不要、など実際にまちおこしを進めている人ならではのご意見をいただいた。


バックに集合写真
④ 南砺市井波・・・NPOジソウラボ代表
(株)島田木材代表取締役 島田優平氏
DF北陸ブロックリーダーの川﨑さんの紹介で、井波で家業の林業を継ぎながら町おこしを推進している島田優平さんより、ジソウラボの取組み状況を伺った。
島田さんが代表をつとめるジソウラボは、井波内外から若い人材を招いて土地の魅力となるような事業創出を支援している(例:古い建物をリノベーションしたレストラン、パン屋、まち宿、ビール工房、コーヒー店、モビリティプロジェクト、地域商社等)。
井波の人口は8,000人で、うち200人が木彫り職人の「木彫りのまち」。そのルーツは瑞泉寺再建のために京都本願寺から井波に来た彫刻師 前川三四郎が技術を広めたことにある。前川三四郎のようにまちの事業の源泉となる人材を、今後100年を見据えて見出し育てることが、ジソウラボの使命とのこと。「まちづくりは今住む人が楽しい町にすること。主役はまちのひと」「まちおこしは役所がするものではない。自分たちがビジョンを持たねば」「逸材を輩出する土地にしたい」・・・等々熱い思いを語っていただいた。
打合せ後には、実際に井波の家並みを島田さんの案内で散策し、イタリアンレストラン「nomi」で昼食。当店のシェフも県外から移住した人で、「島田さんと話すと幸せな気持ちになる」。島田さんの移住してきた人への温かい支援や心遣いを感じた。
食事後にまちの起源である瑞泉寺と参道を散策し、高岡に戻った。

(SCアスモ会議室にて)

案内で散策

その他の観光
高岡駅近くの高岡大仏に拝礼した。高岡大仏は日本3大仏と称され(他説あり)端正なお顔が特徴。その後近くの高岡古城公園にて「高岡万葉祭り」を見学した。高岡は大伴家持が国守として5年間在任し数多くの秀歌を残したことから、市では「万葉のふるさと高岡」としてPRしている。


万葉集全20巻4,516首を
リレー方式で歌い継ぐ
食の分野でも、1日目はひがし茶屋街にある「東山 志(よし)」にて、2日目は高岡の「御料理 八百石」にて、北陸の恵みを堪能した。豊富な食材に洗練された料理、土地の日本酒と、メンバー一同至福の時を過ごした。

3日目は、雨晴国定公園や万葉歴史館、国宝瑞龍寺、高岡鋳物発祥の地 金屋町を巡った。
※ 3日目旅行記は瀬谷さんがトピックスとしてまとめています。こちらをご参照ください。
おわりに
今回のツアーを企画し緻密な計画を立て引率してくれた観光立国研究会観光分科会リーダー 山口さんのコメントを紹介します。
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北陸視察旅行の旅程作成を担当しました。参加者の皆さんから多くの意見を頂戴し、皆さんの経験や知見を活かした旅程が完成しました。素晴らしい仲間のおかげで、通常のツアーとは一味違う旅が実現できたと思います。私にとっても非常に興味深く、印象に残る北陸の旅となりました。
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以 上(見目久美子)