第20クール企業ガバナンス部会
第4回(12月度)月例セミナー講演要旨

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日 時2024年12月23日(月)13:30~15:30
場 所DFスタジオ751+Zoomのハイブリッド方式
テーマ「株主総会はどのように変わるのか?」
講 師三井住友信託銀行 ガバナンスコンサルテイング部 IR担当部長 加藤佳史氏
聴 講42名(後日視聴した者を含む)

(1)株主総会の歴史
①日本の株主総会の変遷
・97年商法改正で利益供与要求に罰則、海外投資家の影響力向上で、総会屋完全排除
②現在の株主総会を巡る環境
・CGC、スチュワードシップコード、個人株主の洗練などにより大きく変化
・議案作成時点で機関投資家、議決権行使助言会社と相談するケースも

(2)2024年6月主総会の概況
・株主総会の集中率(6月末最終営業日の前日)は、1998年をピークに低下傾向
・招集通知のTDnetによる開示(法定14日前)を総会開催28日前までに行った企業は全体で2割。時価総額5000億円以上企業は62.1%と機関投資家の要請に対応
・決算説明資料は英訳されるケースが多いが、有価証券報告書は、ミスがあると影響が大きいので、英訳比率はまだ低い
・総会前の有価証券報告書開示企業は1.9%。日本だけのルール。外資系運用会社等から政府への要望も大きい。総会の当日・翌日開示で90%以上あり、事務的には可能。基準日の3ヵ月以内とか、基準日を4月から5月へ、など議論が続くと思料
・バーチャル総会は、事前質問に十分な回答ができる一方、チェリーピックも可能

(3)株主提案の動向
・2024年は株主提案を受けた企業は91社、375議案
・アクティビストは2022年から活動が活発化。提案目的別では、増配や自己株式取得等、総還元性向の上昇を求めるなど財務関連の要求がかなりの部分。次いで、アクティビストの人脈に基づいて社外取締役の選任提案や、持合い解消、気候変動関連対応等の定款対応提案。近時は、資本コストや役員報酬個別開示を求める提案も増加傾向
・株主提案を受けた企業は、中小型株だけでなく1000億円~3000億円以上の社数が増加。2024年はPBR1倍以上の企業への提案も増加
・アクティビストが日本に注目する背景として、PBRから見ても日本株がまだ割安だということ。 また、アクティビストは、経産省、金融庁は自分たちの味方だと言っている。アクティビストには、新顔も少なくない

(4)機関投資家の議決権行使基準動向
・2024年の株主総会・会社提案議案への反対比率は、12.0%と微減
・株主提案への賛成比率は17.0%とほぼ横ばい
・退職慰労金支給議案、買収防衛策導入議案はいずれも高い反対比率
・新しいトレンドとして有事型防衛策は賛成するケース
・議決権行使助言会社の助言基準は、ISSではROEや買収防衛策、グラスルイスは、ダイバーシティや社外役員の在任期間、サイバーセキュリティについて改訂
・機関投資家の議決権行使基準では、業績基準を設ける企業が増加。取締役会のダイバーシティ、取締役会の社外取締役比率で過半数を求める動き、政策保有株式が純資産の20%以上の場合など。(以上定量項目)サステナビリティ課題への対応は、素材、工業、電力、化学メーカーなどが対象。定性項目なので、対話が重要

(5)これからの株主総会の方向性
・経産省の「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」で、株主総会のあり方が議論
・会議体としてみた場合、総会取り消し訴訟リスクを考えた運営の硬直的な対応とならざるを得ない面、社外取締役のチェック機能が働くことでの役割の再考、実質株主の把握などが議論される。動議を可能とするバーチャルオンリー総会の検討などが行われる

Q1個人株主との対話として総会を活用すべきではないか
A1まだ特殊株主の記憶があり、個人株主も変わる必要がある
Q2法務省は会社法を大きく変えるつもりはあるのか
A2議論はこれからだが、「稼ぐ力」にどこまで踏み込めるかがポイント。来年3月に法制審が開かれる。本来ならCGCの総括が必要
Q3日本独自のガバナンスが必要ではないか。サステナビリティならリードできるか、とか
A3官主導だった。一社一社考えるべき。何もしなければ何も変わらなかったのも事実。今後は、上場企業数は減っていくのではないか
Q4株主総会の権限が大きいため、日本でもアクティビストの活動増えてきている。米国はここまで総会に権限がない。それにも拘わらず、提案件数は多い。どういう提案が多いのか
A4米国は取締役会の権限が大きい。米国の総会の提案は、サイバーセキュリティ、サステナビリティ、アニマルウエルフェアなど
Q5アクティビストは今後も自由に活動できるのか
A5投機的な取引をするようなアクティビストは、活動もしにくくなる傾向はある
Q6アクティビストのいい指摘もあり、転換点にあるのではないかと考えるがどうか
A6アクティビストの改善効果が1年半しかないという指摘もあり、まだ、短期目線のアクティビストもいる。アクティビストに資金を出しているアセットオーナーの問題もある
Q7非上場化についてどう考えるか
A7投資家から見ると企業価値を上げるのはいいが、その会社の従業員にとっていいかも重要である。が、この動きは止めることはできない。グロース企業のアンケートで上場ゴールと書いた人が多い。プライム、スタンダード、グロース、どれも解決すべき問題がある

尚、講演終了後、ガバナンス部会総会を開催し、講師も参加した。 

以上(柳澤達維1359)





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