第20クール企業ガバナンス部会
第5回(1月度)月例セミナー講演要旨

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日 時1月23日(木)14:00~16:00
テーマ「コーポレートガバナンス強化への期待と実践」
講 師神野敬司氏 三菱UFJ信託銀行 法人コンサルティング部シニアコンサルタント
場 所スタジオ751 + Zoom
視聴者36名(後日視聴した者を含む)

1.コーポレート・ガバナンスの潮流

  • コーポレート・ガバナンス改革は、2014年の安倍政権による成長戦略として始まり、企業の稼ぐ力を取り戻すため、グローバル機関投資家からの資金調達を目指して推進された。
  • 2015年以降、社外取締役の導入など形式面での整備は進んだが、取締役会の実効性や企業価値向上への貢献については道半ばであり、さらなる実質化が求められている。
  • 今後は取締役会の役割明確化や監督機能の強化、各企業の特性に応じたガバナンス体制の構築が重要課題とされている。
  • ここ10年における取締役会実効性強化観点での課題は、①取締役会の役割の明確化、②社外取締役の実効性の強化(選任方法の検証、投資家との対話・エンゲージメントの充実、社外取締役の質の向上等)、③経営者の選解任等の機能の強化である。
  • 特にその会社における取締役会の果たすべき役割、機能の理解、その共有が必要である。

2.ガバナンス状況の check 取締役会の実効性評価の活用

  • 取締役会の実効性評価は、コーポレート・ガバナンス・コードでの明確な定義はないが、各企業の役割や機能を果たせているかを確認するもの。
  • 実効性評価の目的は、取締役会の改善点を洗い出し機能向上につなげることが主で、単なる評価チェックではない。
  • 企業と機関投資家は、中長期的な経営戦略やESG、長期ビジョンについての議論を重視する傾向にある。
Qプライム市場の企業で、コーポレート・ガバナンスを企業価値向上に結び付けられている企業の割合はどの程度でしょうか?
A実質的にガバナンスを強化できているという判断も一概にできないため、端的に割合は示せないが、企業価値向上に結び付けた企業は多くはないと考えます。多くの企業は形式的な対応に終始し、たとえばCEO後継者計画が未整備な企業も存在します。経営者がコーポレート・ガバナンスの本質を理解し、成長への取り組みを重視する企業が価値向上を実現できています。
Q投資家の期待と経営者の方向性の不一致について、どうお考えですか?
A企業の海外展開における課題は、競合の参入や経営環境の変化に加え、適切な人材確保の難しさにあると考えられます。ガバナンス強化は、優秀な人材を惹きつけるための施策の一環とも捉えられます。
Q取締役会における共通の価値観は、どのような場面で効果を発揮するのでしょうか?
A中期経営計画の策定時などで特に重要となります。ただし、これは固定的なものではなく、環境変化に応じて適宜見直しが必要です。
Q社外取締役の独立性と発言力について、近年の変化をどう評価されますか?
A10年前と比較すると、執行側への踏み込んだ発言や課題共有は増加しています。イギリスでは就任時の独立性を重視し、投資家は12年超の在任に否定的です。ただし、CEO解任などの重要決定に至る例は依然少数です。
Q女性取締役の登用について、現状をどう評価されていますか?
A2026年までに複数の女性取締役を求める投資家も存在しますが、現状は社外取締役が中心です。多様な価値観による意思決定への貢献は評価されており、着実な進展が望ましいと考えられます。
Q投資家の短期・長期志向について、実態はどうでしょうか?
A個人投資家は短期志向が多いものの、機関投資家は運用規模や手法から長期志向の傾向があります。パッシブ運用中心の機関投資家は、特に企業の中長期的成長を重視しています。
Q経営者の在任期間と中期計画について、どうお考えですか?
A日本企業は中期計画2回(6年程度)で交代する傾向にあり、欧米に比べ在任期間が短いです。アナリストからの要請で中期計画を重視する文化がありますが、柔軟な経営判断の障害となる可能性もあります。
Q取締役会の監督機能について、各国の特徴をどう見ていますか?
A米国は不正防止の統制を重視し、経営者の裁量を認める一方で厳格な責任を求めます。欧州は監査機能が強く、時に経営の機動性を損なう面があります。日本は監督重視の傾向にあります。
Q取締役会の実効性評価について、今後の展望を教えてください。
A今後、社外取締役の成果や個人評価が重視される可能性があります。第三者評価の活用も増加傾向にあり、特に後継者計画など重要課題について、外部機関による客観的評価の意義は高まっています。

以 上(柳昭駒)

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