2025年2月1日(No. 430)
加藤佳史
1960年、昭和35年、ネズミ年(かつてんびん座)生まれの私ですが、この原稿を書いている時点で64歳になっています。
今だ、現役の会社員として勤務していますが、良い機会なので、日本人男性の平均寿命の推移を調べてみました。

厚生労働省が公表している「簡易生命表」によると、私が生まれる5年前、つまり1955年の日本人男性は63.60歳。私が生まれた1960年がちょうど65歳というデータがありました。私の両親が私を生んだ年は、母親が24歳、父親が25歳と今から見れば相当に若い年齢ですが、恐らく、当時としては平均程度だったのかなと思います。

多くのディレクトフォースの会員の方々は、私より年長で人生の先輩ですので、1960年を学生として過ごされた方もいらっしゃるかと思います。
この年は
- 1960年安保闘争で東大生 樺美智子さんが死去
- カラーテレビの本放送が開始
- タカラのダッコちゃんがブームになる
- 池田総理の国民所得倍増計画が決定
- チリ地震で日本に津波の被害が発生
- 浅沼稲次郎社会党委員長が日比谷公会堂で演説中に刺殺される
ということ等があり、世の中が騒然としていた一方で、東京オリンピック開催を控えた建設ラッシュや、東海道新幹線開通工事など、高度経済成長への足掛かりがスタートした年と色々なメディアでは書かれています。

私自身の幼い頃の記憶でも、小学生時代、クラスの同級生がかなりいて、その中には、裕福な家庭の子供や、少し貧しい家庭の子供もいたようでしたが、皆、仲良く、あちらこちらにあった空き地の土管を基地にして、探検ごっこと称して元気に駆けずり回った思い出があります。
あれから64年経過して、社会や経済の仕組みが大きく変わり、当時予想もできなかったパソコン、インターネット、携帯電話、人工知能等が誕生。
生活は極めて便利になり、また、食品の衛生面や栄養面の改善、健康志向の高まりで、今や、日本人男性の平均寿命2020年で81.64歳となっています。
ディレクトフォースでご活躍されている先輩諸氏も、皆さん、生き生きとされ、知的好奇心も旺盛、活動も大変アクティブで、見習いたいとつくづく思っています。
その一方で、就職氷河期、失われた世代と呼ばれる1990年代半ばから2000年代初頭に大学を卒業した、現在、40代から50代半ばの方々の中には、正規雇用につけず、年収も低水準からあがらず、結婚もできないで苦しんでいる世代を、日本は生み出してしまいました。
誰もが今は貧しいけど明日は豊かになると懸命に働いた私の親世代と違い、今の40歳代は、たとえ、大手企業に就職したとしても。終身雇用制度の終焉や、年金受給への不安、加えて、子供の教育費負担等で、将来への展望が描きにくい状態にあるように、私の会社の40歳代の管理職を見て、感じているところです。
私の業務は、コーポレートガバナンスコンサルです。
上場企業の持続的な成長と企業価値の増加を目指すために、あるべき取締役会の構成、運営、実効性の向上や、サステナビリティ経営の仕方等を経営陣にコンサルしていますが、企業が誰のものかという議論はさておき、企業は最終的には人間(社員)の集合体です。
最近、はやりの言葉で、「人的資本経営」を目指すために、従業員エンゲージメントの改善や、ウェルビーイングの向上というものがあります。
「社員はコストではなく、資産として把握し、社員の働き甲斐を最大限引き出す経営戦略を採用する」という、とても耳当たりが良いワードが並びますが、その実態はつかめず、各社とも何をすべきか四苦八苦しているのが現状です。
人が何をもって幸せと考えるかは、人それぞれでしょうが、共通する点は「安心安全で快適な社会生活を不自由なく暮らせること」「自己実現を果たせるような社会貢献ができること」だと思っています。
今の日本は、株式市場も日経平均で最高値を更新し、企業業績も、バブル崩壊時と比べたら健全なので、一見、順調な軌跡をたどっているようには見えますが、この失われた世代と、その次の20代の若手世代は、政治への期待もなく、いわれない絶望感にさいなまれている人々も多数いるかと思います。
最近、頻発している闇バイトによる殺人請負が、20代が多いこともその証かも知れません。
私自身、30代~40代、バブル崩壊の影響で、特に金融業界は非常に厳しい局面が続きましたが、お陰様で今は何とか順調な生活を送っています。
近いうちに完全退職する予定ですが、ディレクトフォースの授業支援の会や企業ガバナンス部会等に積極参加し、少しでも次世代の方々の育成で、恩返しがしたいと思っています。
以 上
かとう よしふみ(1411)
(企業ガバナンス部会、授業支援の会)
(三井住友信託銀行)