日時 | 2月21日(金)15:00~ |
演題 | 「南鳥島EEZにおける海底鉱物資源開発の最前線」 |
講師 | 加藤泰浩氏 東京大学大学院教授 工学系研究科長 |
場所 | 航空会館 |
参加 | 103名(うちZoom52名) |
今回の講演交流会は、『太平洋のレアアース泥が日本を救う』(PHP新書、2012年)の著者で、この研究分野のフロントランナーである加藤泰浩東京大学教授を招きお話を伺いました。
「一編の論文が世界を変えた」との評された加藤教授グループの研究秘話なども交え、素人にも大変わかりやすい講演でした。
懇親会では、「お話を伺って、加藤先生のプロジェクトを応援したくなった」という会員の声があちこちから聞かれました。

講演要旨
2011年、加藤教授のグループは、日本の最先端産業に必要不可欠な希土類元素を豊富に含む海底堆積物「レアアース泥」を太平洋で発見し、次いで、2012年には、日本のEEZ(排他的経済水域)内である南鳥島周辺海域でもレアアース泥を確認して、世界に大きな衝撃を与えた。さらに2016年には同地域内でリチウムイオン電池材料のコバルト、ニッケルなどを多く含む「マンガンノジュール」の密集している海域を発見した。
加藤教授グループが2011年7月 Nature Geoscience 誌に発表した内容によると、この地域のレアアースは次の特徴を持っている。
- 特に産業上重要な重希土類が多く含まれる
- 遠洋域の海底に広く文賦するため資源量が膨大
- 地層として広く連続的に分布しているため探査が容易
- 資源開発で障害となるトリウム、ウランなどの放射性元素を含まない
この地域に眠るレアアースの埋蔵量は1600万トンを超え、世界の需要の数100年分に相当し、日本は世界有数のレアアース大国となる。採鉱、精錬システムとしても、次の利点が挙げられる。
- 水深約6000mの海底面下2~4mの浅い部分に存在するので、掘削が容易
- 粒径分布が周辺の泥と異なり、選択的に回収できる
- 揚泥システムは海洋石油生産で一般的なエアリフト法を応用できる
- 常温の希塩酸で容易に抽出、回収が可能
- 開発途上国での資源開発に伴う人権問題、環境問題が無い
日本の排他的経済水域外のハワイ沖やタヒチ島周辺では、中国はじめ各国が探査を進めており、日本も国策として、「海洋基本計画」の中に、レアアース泥の調査や開発技術の推進が明記され、2018年には「戦略的イノベーション創造プログラム」において、生産技術の研究開発が開始されるなど、国を挙げての取り組みが着実に進行している。加藤教授のグループは東京大学基金「南鳥島レアアース泥・マンガンノジュールを開発して日本の未来を拓く」を設置して寄付を募っている。
講演後の「DFの活躍する部門紹介」では、技術部会と環境部会から活動報告がありました。



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以上(小林慎一郎)