日 時 | 2025年4月8日~10日 4/8 宮崎本店 4/9 am 松阪市内名勝地散策、pm 福和蔵 VISON 4/10 am 伊勢神宮参拝後解散 |
参加者 | 平尾、宮武、近藤、樋口、平田、角谷 計6名 |
訪問先 | 宮崎本店(四日市) 宮崎会長、浅田醸造部長、岩田課長 福和蔵(三重県多気町)安田醸造部長 VISON(食を中心とする商業リゾート) |
今回訪問した2軒の蔵はいずれも酒造りの近代化を目指しているという共通点があった。通常酒蔵では蔵人がアナログで時に夜中まで働き汗水垂らしてといったイメージがある中、ITも駆使した近代化された蔵では想像つかない世界があった。杜氏や蔵人と言った呼称を使用せず、社員、課長、部長と呼び、週休2日制等、両社は人事制度においても一般的な製造メーカーの制度を導入している。設備もある程度IT化、スマホで自宅からの操業管理も可能とするなど驚きである。
1)宮崎本店


同社概要
- 1951年現在の三重県四日市市に(株)宮崎本店設立 。1846年創業以来180年を誇る老舗蔵である。現会長は6代目、ご子息の社長が7代目となる。四日市周辺には往時一時30軒近くの蔵が存在していたが、近隣の蔵約20軒を宮崎が引き受けたため蔵と蔵の間に “蔵通り” と呼ばれ現在も学童が行き来する公道が走っている。蔵の一部建屋は重要文化財指定を受けており風情がある。
- 同社は日本酒の他、焼酎、ウイスキー他酒類と食品を製造販売する三重県最大の酒類総合メーカー。売上(と利益?)の90%強は焼酎であるが、戦後 “キンミヤ焼酎“ としてブランド知名度高いことに依る。焼酎はサトウキビの搾汁から残るブラジル産廃糖蜜を原料として醸造後、近くの宝酒造の連続式蒸留器で委託蒸留する甲類焼酎である。
- かつて明治時代には樽廻船により酒を江戸の新川まで輸送し流通させていた関係で新川に現在も営業所を構えている。
- 日本酒の生産量は1,500石と中規模クラス。ブランドは ”宮の雪” 単一。
- この10年で昔の杜氏制度を廃止、社員杜氏はじめ全員社員と呼んでいる。又、旧設備は全て新設備に置き換え2018年より小規模生産(小仕込み)を可能としキメ細かい醸造が可能となりかつIT化も進めるなど働き方も含め近代化されている。
日本酒原料
- 地元産米の他、山田錦、五百万石、雄町等
- 水は鈴鹿山系の地下水で硬度は超軟水
設備刷新
- 38%精米まで可能とする精米機を備え自家精米している。
- 発酵用タンクは4~6t、600L 程度の仕込みが可能。
- 蒸し器は独自の赤杉製。
- 酒母造り1~2週間、醪造り20~38日
醸造のIT化
一般的に伝統的な蔵の醸造法とは異なり随所にIT化の工夫が為され、麴造り、酒母・醪造りがスマホ管理でき、自宅・出先からでも管理可能としている。
2)福和蔵(井村屋株式会社VISON事業部)

福和蔵概要
- 井村屋がVISONに創業した小さな酒蔵。規模は小さいながら近代的な酒造りを目指している。現製造部長は井村屋の設計・機械技師で、自ら蔵の設計・施工管理に当たり現在は製造部長として酒造りの全責任を負っている。
- 杜氏と称さず社員として醸造部長が杜氏の役割を担っている。酒造りに関わる社員数は5名。設備能力340石、現状生産量は110石と小さいが340t生産を見据えた準備をしている。
- 創業時全員酒造りの経験なく、近くの清水清三郎商店(作で有名)に3名の社員が派遣され3か月間研修を受けスタート。清水とは互いに情報交換したり杜氏自ら現場に来場してもらう等互いに助け合う関係が構築されている。
- 創業4年にして早くも賞を取っている。日本酒に関する品評会、コンテストは “ダメもとでなるだけ参加して第三者評価を得て励みにする” 方針である。
原料
- 米は県が開発した県産酒米神の穂や三重県産山田錦他
- 仕込み用水は奈良県との境にある飯高山で採水されるカルシウム豊富な超硬水(硬度250+)がタンクローリーで運ばれる。その他の醸造用水は水道水を使用。
製造
- 四季造り(1年を通して醸造)
- 設備は極めてコンパクト
洗米、吸水、蒸米、放冷、酒母、醪等 一連の醸造工程に必要な設備が夫々小さく70m2程度のスペースに詰め込まれている。酒粕は井村屋の肉まん,餡まんの皮に利用されており、ロスがない。醪発酵3tタンク5基、25~30日で醪完成。
酒の特徴
酒は純米酒、純米吟醸、純米大吟醸の3種に限定。いずれも低温発酵させる吟醸造りをしているため、純米酒もバナナ様の酢酸イソアミル、他2種の吟醸酒はカプロン酸エチル系。総じて甘いのは醸造部長が好みで意図して甘口造りをしている。
松阪市



松阪駅前はシャッター通りで寂しいが、伊勢街道に沿った宿場町であると共に、松阪城を中心とする城下町でもあり、昔栄えたであろう名残は感じられる。駅から徒歩20分の松阪城を中心に周辺に広がる豪商旧宅、本居宣長旧宅・記念館など歴史を感じる場所が徒歩圏内に散在しており3時間程度で見て回ることが出来、大変有意義であった。
VISON
数年前イオン、ロート製薬、アクアイグニスがJVを構成、三重県多気町の広大な山間地を開発した「食のリゾート」。ホテルを中心に、10軒近くのレストラン、食材店、野菜市場など家族ぐるみで日帰り或いは泊まって楽しめる。食品メーカー井村屋(本社;津市)が2021年に酒蔵を創業している。
以 上(角谷充弘)