人型ロボットによる次世代自動車の生産について考察した意欲的な動画を、山崎雅史会員(804)が提供されました。
次世代自動車の生産現場にヒト型ロボットを試験的に投入する動きが活発化しています。今年を最終年とする「中国製造2025」でEV、車載電池等で世界をリードする実績を示した中国では、次はヒト型ロボットで世界の覇権を狙う動きもあるようです。今回「ヒト型ロボットとクルマの電動化の現状」ということで、まとめてみました。 約33分の動画になります。
動画の要点は以下の通りです。
ロボットの開発と自動運転車の開発には密接な関係があります。その最初の接点は米国国防高等計画局(DARPA)が実施した2005年のロボットカーレースで、機械学習を取り入れたスタンフォード大学の車「スタンリー」の優勝にあります。いち早くその成果を取り込もうとグーグルが自動運転車の開発をスタートしました。機械学習を用いた画像認識の向上を目指して行われていたマシンビジョンコンテストで、2012年にトロント大学は深層学習による画像認識の威力を示し、オープンソース化したことで自動運転車は目の機能を持つことになり、自動運転技術が飛躍的に向上し、2015年にはテスラがいち早く自動運転レベル2に相当する「モデルS」の市販を始めました。テスラの進める自動運転技術は各種センサーやLiDAR、ミリ波レーダー、3次元地図やGPSに依存する自動運転技術とは一線を画し、実走行からの学びによって進化したAIとカメラだけというシンプルなアプローチで、中国勢も基本的にこの流れを追随する動きを取り始めています。
1992年にマサチューセッツ工科大学からスピンアウトしたボストンダイナミックスのバランス制御や俊敏な動作に卓越したロボットは、ロボティクスの進歩に多大な影響を与え続けています。ホンダのASIMOに触発され起業した中国のUBTECH、シリコンバレーのAIやロボット工学の専門家たちが立ち上げたFigure社、そしてAIとロボティクスを活用して新たな産業革命を起こそうとするイーロン・マスク氏が率いるテスラ等からヒト型ロボットが自動車の生産現場にも登場し始めています。
今まで中国でEVを凌ぐスピードで伸びていたPHVの普及が2025年には逆転する現象が起きつつあります。背景には中国政府のPHVよりもEVを増やしたい意図と、好調なレンジエクステンダーEVの販売があるようです。全米ではトランプ政権への移行後にHVの伸びの加速とEVの販売の減少が起きており、HVの渦が大きくなりつつあります。購入補助金の減額や廃止でEVの販売が揺れ動いた欧州最大市場のドイツではEVの販売が落ち込んでいましたが、ようやく補助金があった2023年レベルに戻りつつあります。イギリスでは年ごとのEVの新車販売比率の目標を定めたEVマンデートを2024年1月からスタートし、EVの比率の増加は起きました。しかし、初年度の目標には未達に終わり、イギリス政府はEV一本化の普及の難しさに直面しています。欧州全体の新車販売台数の7割をドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペインの5大市場で占めていますが、これらの市場に共通していることは電動車のなかでHVが最大シェアを占めており(25~40%のシェア)、EUが目指す2035年までの欧州全体でのEV化はまだ深い霧のなかにあるようです。
以 上(小林慎一郎)