ブラジル人学校への理科実験の取り組み

  • LINEで送る

ブラジル人学校への理科実験は13年前の2012年5月に始まりました。
この年に茨城県常総市のエドカーレ校とつくば市のオプション校で「冷却パック」「墨流し」「エタノール船」「飛行機」「表札」「電池」を170人の生徒に行いました。
ブラジル人学校にとっては貴重な体験授業の機会であるとの認識が先生方に定着し、その後毎年両校での理科実験は続けられました。

一方で、景気後退や東日本大震災の影響で在日ブラジル人が減少しました。
また2015年9月には鬼怒川の反乱のためオプション校のある常総市は洪水による甚大な被害を受けました。このため2015年の理科実験は中止のやむなきに至りました。
しかし2016年9月には洪水から立ち直ったオプション校を皮切りに再開されました。
さらにこの年から新たに埼玉県上里町のティー・エス学園(TS学園)が始まり、ブラジル人学校3校がそろって理科実験を毎年行うようになりました。
新型コロナの流行時期と日伯経済文化協会 (ANBEC) の栗田政彦専務理事が逝去された昨年は中止しましたが今年から3校そろって再開することができました。

ブラジル人学校はブラジル文部省の認可学校です。
授業はポルトガル語で行われています。
したがって日本語を話せたり、理解できる生徒は限られています。
理科実験授業は大先生の日本語の説明を通訳のANBECの中島ひろさんがポルトガル語に通訳しながら進めます。

テーマが決まると事前に大先生(その日の実験をリードする先生)と中島ひろさんはじめANBECの方とが打ち合わせて、説明用のスライドのけポルトガル語翻訳版を作ります。このポルトガル語のスライドが良くできているため、生徒の集中が途切れないで授業が出来ていると大変好評です。
生徒が実験の時に使うワークシート(プリント)もポルトガル語版です。
小先生は担当のテーブルの生徒に実験器具の使い方、実験手順などを懇切丁寧に教えます。言葉は十分に通じなくても実験を通じて生徒と気心が通じ、喜んでくれた時の笑顔は何物にも代えがたいご褒美です。

今年は5月にオプション校とTS学園で「磁石」、6月にエドカーレ校で「香の粒」の理科実験を行いました。「香の粒」の実験では吸水性樹脂が、樹脂の200倍もの水を吸うこと、このことによって「赤ちゃんのおむつ」などに利用されていることを勉強しました。最後に吸水性樹脂にピンクやブルーの色を付けて、さらに海の香りやバラの香りの香料を付けて「香の粒」のパッケージを完成させました。この時の生徒の喜びの声が聞こえてきます。

資料の翻訳と当日の通訳をお願いしているANBECの中島ひろさんからは「遠方からお越しいただきありがとうございました。生徒たちからは、とても面白かった、新しいことをたくさん覚えたなどの感想がありました。先生からは、教科書で勉強するだけでなく、実際に自分で操作して結果が見えることは、何者にも変えがたい体験ですとのお話を伺いました。」とのお礼の言葉を頂いています。

日伯経済文化協会(理事長田中充氏)の支援・協力によってブラジル人学校の理科実験の運営が行われています。今後とも同協会と緊密な連携を保ちながらブラジル人学校の理科実験授業を発展させていきたいと考えています。

以 上(小林 健)

  • LINEで送る
pagetop