6月20日、専修大学SDGs・CN連続講義の第4回目の講義を行った。
「持続可能なパーム油の開発」(松瀬高志会員)
最初に植物油脂として国内2位(世界1位)の消費量ながら、消費者の目に直接触れない「見えない油」と言われるパーム油の用途や特徴を示し、受講生自身も口にしていることを紹介した。

次いで、パーム油はその有用性の裏で農園での大規模な森林破壊が指摘され、生物多様性の毀損、地球温暖化、生産者の人権侵害の克服が喫緊の課題であること、パーム油を使う食品や日用品などの消費材メーカーはRSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil) 認証油の活用や農園支援を通じてこれらサプライチェーン上のESG課題解決に取り組んでいることを紹介し、受講生にも身近な環境問題であることを認識してもらった。
講義後のレポート課題「身近な認証制度・製品の考察」には、FSC(Forest Stewardship Council) やフェアトレードなど農水産品の認証を自分事として考察したものや、企業活動の認証を取上げる
回答が多く、認証制度が現代ビジネスの重要なツールになっていることに触れてもらう課題の趣旨にかなったものとなった。
「食料生産と環境問題~ウシのゲップは地球温暖化の原因?~」(永野章会員)
これまでDFでは4校の講師を務めたが、意外と食肉の分野は知られていないことも多く、50年近く業界に身を置いてきた者として食肉エバンジェリストを気取って学生に少しでも興味を持ってもらい、何かのきっかけに思い出してもらえるような内容を心がけてきた。よって、学生にとって身近かなことをテーマとして設定し、すこし掘り下げ、さらに思わぬ展開に持ち込み、時に若干の笑いを織り交ぜて、多面的に考えるヒントを提供しよう心がけている。

今回のテーマはウシのゲップやウシの言い分、食の未来としての培養肉、さらに大きな課題としての食品ロスの問題であった。提出されたレポートを見ると、取り敢えずは、所期の目的は達成された感を持っている。
特に多かった意見は、「人間の快適さのために多くの環境破壊が起こり、その対策が急務であるうえ、環境破壊をしてまでできた食物の多くが廃棄されている現実を見据えて、環境問題に一人でもするべきことがありこれから実行していこうと考えている」であった。どのレポートも理解力の高さとまじめさを感じさせるものであり、今の若い人たちにも大いに期待が持てるものであった。また、「面白い授業で強く印象に残り、環境問題の難しさを痛感した」という感想があり、この一行だけでもまさに冥利に尽きる思いであった。
以 上(松瀬高志、永野章)
編集者のコメント
一般社団法人全国肉用振興基金協会によると
「わが国の肉用牛が産生するメタンガスは年間155千t、牛肉生産量が336千tなので、牛肉1kg生産あたり0.46kgのメタンが排出されていることになります。」