| 日時 | 2025年6月25日(水)14:00~16:00 |
| 講演 | 「資本効率経営の現状~資本効率・株価、資本市場の変化」 |
| 講師 | 川島輝夫会員(1489) ㈱UACJ エグゼクテイブアドバイザー、京都大学経営管理大学院客員教授 |
| 会場 | スタジオ751+Zoom |
| 参加 | 38名 |
講演要旨
1. 今回の講演の論点
- なぜ資本効率が求められるのか?
- 株主構成、資本市場、機関投資家との対話・情報開示対応すべきことは何か?
- 東証からの要請 とは何か?
- サステナビリティ情報(非財務情報)開示の現況?
- UACJの取組状況

2. UACJの概要
- 古河スカイと住友軽金属が統合してできた世界第2位グループのアルミ総合メーカー
- 売上高9,988億円、営業利益574億円(2025/3月期)
世界3極で生産販売(日・米・タイ) - 昨年度からスタートした第4次中計で、EBITDA 1,000億円(FY2027)を目指す
- アルミニウムにおけるサーキュラーエコノミーの”心臓”として循環型社会形成を牽引
- 2013年の会社設立当初はUACJという新社名が浸透せず、営業面で困難があった
3. なぜ資本効率が求められるのか?
- 企業価値を決めるファクターは、
① 収益性、② 成長性、③ 安定した利益・キャッシュフローの3つであり、それらを実現するために、① KPIとして資本コストと ② 株式価値の創出 が重要。 - 企業経営の重要な指標として、
- 資本コスト(=負債コスト+株主資本コストの加重平均資本コスト=WACC)、
- 資本収益性(ROIC、ROE)、
- 資本市場評価(PER、PBR) がある。
- 値創造=利益が資金調達コストを常に上回ることが企業がゴーイングコンサーンとして必須
- 経営戦略の視点からは、長期的なROIC(投下資本利益率)が指標として有効である。
- 川島講師作成「UACJ版 企業価値創造・資本効率・キャッシュフロー相関図」が端的に「あるべき収益性=資本効率」の重要性を表している。
4. 株主構成、資本市場、機関投資家との対話・情報開示
- 資本市場(株式市場)の現況は、
- エンゲージメント型投資家の増加、
- 株式持ち合い解消圧力、
- 機関投資家の議決権行使基準の見直し、
- 株主構成の変化等により、企業側に求められる対応がより重要かつ厳しくなっている。
- 現在、3月期決算企業の株主総会が6月末に集中しているが、各企業とも東証からの要請による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」(PBR要請)がかなり進んでいることが伺える。
- 企業側の対策として、IR(Investor Relations=投資家向け広報)活動や、SR(Shareholder Relations=株主向け広報)活動が今まで以上に必須になってきた。特にUACJの場合、海外の投資会社が同社発行株式の23%を保有しているので、CFOは年に複数回当該投資家とのミーティングを実施し、理解を得るようしている。
- SR活動のうち個人株主向け説明会や工場見学会等を通じて会社への理解を深めてもらい、長期安定株主=USAJファン作りに努力している。
- 統合報告書の作成は大変注力をして作成している。機関投資家は統合報告書を通じて企業の事業状況、トップ方針、財務・各事業方針を把握。金融庁より有価証券報告書の株主総会前提出の要請があり、今年度は総会前日の提出となってが、今後は企業側により早期提出が求められる。
他方、株主総会の開催時期の見直しなど制度面での議論も進む模様。
5. 東証からの要請
- 2014年伊藤レポートが発行され、資本効率を意識した企業経営が求められる発端となり、合わせて2014,2015年にそれぞれスチュワードシップコードとコーポレートガバナンス・コードが制定され、投資家側、企業側に投資行動や企業管理に関して、より健全な資本市場形成に向けた指針が示された。
加えて、株式市場区分も見直され、より基準運用が厳しくなりつつある。 - 2023年に資本コストや株価を意識した経営の要請(所謂PBR要請)があり、より資本市場・株価を意識した企業運営が求められる様になっている。更に
- 親子上場などグループ経営のあり方、
- MBO・支配株主による子会社化、
- それらの動きの情報開示など が推進されて来た。
6. サステナビリティ情報開示
- 非財務情報の開示も求められている。例えば、
① サステナビリティ情報、② 非財務情報の目標設定と進捗状況、など。 - UACJでは非財務資本を「6つの資本」(=財務資本、製造資本、知的資本、人的資本、自然資本、社会関係資本)に分けて「価値創出モデル」を整理し、経営に役立てている。
- UACJの長期ビジョン「UACJ VISION 2030」における非財務目標は、
- アルミニウムの循環型社会の牽引、
- 気候変動への対応、
- 自然の保全と再生・創出、
- 人権の尊重、
- 多様性と機械均等の浸透、
- 労働安全衛生、
- 製品の品質と責任、を置いている。
特に①のサーキュラーエコノミーに関しては、UACJリサイクル率目標を80%としているが、日本でのアルミ缶回収率はほぼ100%に達している。
- 人的資本と企業価値創出に関しては、現在川島講師が京大教授と連携して研究している。
7. Q&A
| Q1 | アルミ地金は100%輸入ということだが、入手難やトランプ関税による調達コストアップなど、様々なネガティブ要因があるが? |
| A1 | 地金は豪州や東南アジアから潤沢に輸入できているほか、スクラップ原料はUACJの場合日本国内で100%回収できているので問題ない。また、米国に生産拠点を持っているので、トランプ関税はむしろ有利に働く。 |
| Q2 | 連結ベースであり、CFOは全体最適経営を推進するには目配りが必要だが? |
| A2 | キャッシュ、税金、為替、関税、地政学など世界情勢は日々変化しているので、気が休まる時がない。今はCFOを退任して、正直ホッとしている。 |
| Q3 | 鉄やアルミなどの製造業は投資回収に時間が掛かる。その評価スパンはどのくらいか? |
| A3 | 工場を建てて稼働するまで最低3~5年はかかる。それから徐々に立ち上げて軌道に乗るまでさらに掛かるので、時間軸が普通の投資と異なる。設備投資に関しては別の評価基準を定めている。 |
| Q4 | 世界でIR活動をなさっているが、国によって投資家の考え方の違いはあるか? |
| A4 | 日本と米国の投資家はそう変わらないが、ヨーロッパと米国は異なっていた。これまでヨーロッパではサステナビりティが主だったが最近ではいくら儲かるのか? に変わって来たので、米国に近づいている。 |
| Q5 | 自社株買いが多くなっているが、大きな資金を使うなら投資に回すべきだと思うが、如何か? |
| A5 | UACJも今年2月に自社株買いを実施したが、自己資本と時価総額のバランスを考える事も重要。設備投資をしてEBITDA拡大=企業価値向上による株式価値拡大と株式価値向上は両方とも企業経営の求められる重要事項。事業戦略と財務戦略のバランス経営が重要になる。 |

セミナー終了後、会場参加者とともに別席にて懇親会を開催し、講演内容を振り返るとともに、川島講師の熱意あふれる真摯な取組に謝意を表したことを付け加えておきます。
以 上(平井隆一 部会長)