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2025年11月1日(No. 448)
乗田 佐喜夫

2023年4月にDirectForceに入会して、2年半が経とうとしています。このエッセイを書くのを機に、2年半のDF活動を振返ると同時に、70代を迎えた現在の心境を纏めてみようと思い立ちました。

大学を出てそのまま総合商社(三井物産)に入社し定年まで勤務し、60歳で第二の職場である(一社)日本鉄リサイクル工業会に入社したのが2011年7月、東日本大震災の傷跡冷めやらぬ時でした。物産時代は鉄鋼原料ビジネスが担当でしたが、入社後4年間は人事部で新卒者の採用業務に携わっていました。その時の経験が現在DF内で活動している授業支援と何等かの縁があるのかも知れないと感じることがあります。
第二の職場である日本鉄リサイクル工業会は、文字通り鉄鋼原料となる鉄スクラップ業界全般を取り纏める業界団体で、業界と関係官庁、地方自治体との関係強化を図ることに携わっていました。その一環としてリサイクルに関する法令整備に関わったことも、現在の授業支援活動に役立っています。

そして、DFへの入会ですが、65歳を過ぎた頃から高校時代の同期生のゴルフ親睦会に参加するようになり、その幹事がDFの事務局にいらっしゃる高橋氏でした。高橋氏より、ゴルフの後、『DirectForceという会があり積極的に慈善活動をしている、君も入会しては・・・』と何度もお誘いを受けました。当初は逃げ回っていたのですが、2023年春のゴルフ会の後高橋氏に『DFに入会します。』と申し出ました。その心境の変化の理由は自分でも分からず、『魔が差した』としか言えません。
次に授業支援の会への入会ですが、これは『乗田』という世の中にあまりない苗字のおかげです。新規入会者が会員内に周知された際に、物産の先輩でもある遠藤恭一氏が小生の名前を見つけ、すぐにメールを頂戴しました。もし、沢山ある苗字であったら遠藤氏も気が付かなったであろうと推測しています。数日後、新橋の本部で遠藤氏をお会いした際に、授業支援の会への入会を勧められ、活動内容を知る暇もなく同会に入会することになりました。

授業支援の会に入会後数カ月は、例会への参加や先輩方の授業を実際に見学することに費やし、8月になっていよいよ12月の桐生第一高校1年生への授業を担当することが決まりました。ELは盤若氏と根塚氏で、陰で遠藤氏がサポートしてくれる体制で準備が始まりました。しかし、9月、10月の2カ月間は、今思い出しても冷や汗が出てくるほどのつらい時間でした。勿論、高校生に対する授業は人生初めての経験ですから、何から手を付けていいのかが分からず、盤若氏、根塚氏には4回も新橋の本部で講義内容、それに伴う資料作成全般の指導をして頂くこととなりました。改めて痛感したことの一つが、ITリテラシーの著しい欠如です。現役時代にもパソコンは使用していましたが、e-mail、ワード、エクセルの知識しかなく、パワーポイントでの資料作成などは若手社員に頼っていたのです。従って、12~13ページの資料を作成するにも友人の助けを借り、しまいには高校生の孫娘の手を煩わせる始末でした。その頃毎日パソコンの前で苦闘している姿を見て、家内が『どうしたの、大丈夫?』と声を掛けてきたことを思い出します。

何とか、『皆さんの将来を考える3つのヒント』と題するA4判5ページの講義内容と13ページの資料を作成し、11月中は何回も自室でリハーサルを重ね、2023年12月14日(木)に桐生第一高校・進学コース1年生への授業に臨みました。勿論、緊張し声もだいぶ上ずったと思いますが、生徒諸君も積極的に参加してくれて、自分では楽しい授業だったとの思いを強くしたのを覚えています。幸い、振返りシートで見る生徒の感想も概ね講評でしたので、何とか次に進める気がしました。

その後、2024年、2025年と都立高校を中心に延べ十数校の1~2年生を対象に授業を担当してきましたが、テーマも『SDGsを支える3つのR』を加え、学校の要望に応じて使い分けるようにしています。授業を通じて意外なことに気が付きました。自分では、講義は何とか格好がつけられるが、生徒参加のワークショップは盛り上がらず不評ではないか、との先入観がありました。しかし、生徒からは『ワークショップが楽しかった・・・』の声が多数寄せられています、意外でした。これからは、先輩諸兄の御意見も聞いてワークショップの更なる充実を図りたいと考えています。

授業の中で、自分の高校生活で試験勉強は苦しくて、逃げることばかり考えていた、ことを経験談として話すのですが、現役を離れて3年が経った今、勉強が楽しく感じられるようになりました。毎朝、食事の後自室で5~6時間、机に向かって、新聞二紙を読み、授業の整理・準備、そして歴史書を中心に読書と、あっという間に時間が過ぎていきます。勉強が楽しいと感じたことは人生初めての経験です。高校時代の強制された勉強のつらさから、自発的に学ぶことの楽しさを先輩談としてこれからも語っていきたいと思っています。
12月には、3回目の桐生第一高校の授業が予定されています。授業支援の出発点としての同高の授業を楽しみにしています。

以上

   


のりた さきお(1435)
(授業支援の会)
(元 三井物産)

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