技術部会 見学会報告記
野辺山宇宙電波観測所見学会

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日程10月20日(月)13:45 観測所集合 14:00~16:15 観測所見学
見学野辺山宇宙電波観測所見学
紹介中井直正会員(DF関西、同観測所第八代所長)
参加25名

技術部会(環境部会と共催)は、10月20日(月)~21日(火)の両日、長野県南佐久郡南牧村野辺山にある国立天文台野辺山宇宙電波観測所の見学会を行いましたので、以下要点を報告します。

この10月に技術部会ではJAXA、QST(量子科学技術研究開発機構)の講演会を実施しましたが、さらに今回の見学会でも異口同音に「資金不足」の声が聞かれました。「日本の基礎科学技術開発はこれでよいのか?」と大いに危惧されるところです。

観測所第八代所長であり、DF関西の中井会員により構内を案内いただき、観測所の使命、電波望遠鏡の特徴、天文学上の発見などについて、詳細なご説明をいただきました。

見学室へ移り、宇宙の階層構造をリアルタイムに可視化するソフト「Mitaka」を使い、地球から太陽系内外、銀河系、外宇宙、138億年前の宇宙まで3Dで説明をいただきました。

  • 国立天文台が運営する電波天文学の研究拠点で、長野県南佐久郡南牧村の標高約1,350mの野辺山高原にあります。野辺山高原は以下の研究上の利点があります。
    1. 高地のため電波を吸収する水蒸気量が少ない。
    2. 国有地(元信州大学農学部の農場)、かつ四方600mの広大な敷地
    3. 四方の山で都市電波を遮断できる
  • 1978年に設置され、(当時の予算で110億円、一番高かった加速器でも70億円)1982年に開所しました。現在所員は15名(観測者1名、技術者等14名)ほどですが、中井会員が所長を務められていた頃は100名を超えていました。
  • 役割: 全国および世界中の研究者に開放されており、電波天文学における国際的な拠点としての役割を担っています。
  • 主な観測装置
    観測所の主力は以下の装置です。
45m電波望遠鏡  ミリ波と呼ばれる波長の電波を観測する単一鏡としては、世界最大級の口径を誇ります。1982年に完成し、すでに40年稼働していますが、さらに20年は使われると思われます。星間分子の発見や銀河の構造、ブラックホールの探査など、多岐にわたる分野で先駆的な成果を上げてきました。
太陽電波強度偏波計複数の周波数で太陽全体からくる電波の強度や偏波を測定し、太陽活動の様子を調べています。

かつて活躍したミリ波干渉計や電波ヘリオグラフ(太陽専門の電波望遠鏡)は、運用を終了していました。

  • 中井さんの案内で45mミリ波望遠鏡まで600mほどの距離を見学しました。
  • 見学路の途中にはミリ波干渉計、45m電波望遠鏡、使用が終了している電波ヘリオグラフがあり、観測装置の解説や、電波天文学の基礎知識、過去の成果などを紹介する解説ポスターや看板が設置されていました。

アルマ望遠鏡は、12m望遠鏡64台を16kmほどの地域に建設され、ミリ波・サブミリ波の観測が行われています。現地は中井会員が、トラックにテントと寝袋を積んで走り回って見つけられました。日本で、アタカマが良いと言っていたら、欧州、続いて米国も乗っかってきたとのことです。

45m電波望遠鏡

45m、700t、当時の東京大学と三菱電機との共同研究で作られました。(素材は、FRPに導電性塗料を塗り、その上に遮光性塗料を塗ったもの。アンテナの一部(一番外側)はアルミニウム)
1982年にこの野辺山観測所ができて初めて日本の観測天文学が世界の最先端に躍り出ることになり、欧米の研究者が日本に来て観測をするようになりました。これを受けて、その後「すばる望遠鏡」、「アルマ望遠鏡」に進歩しました。

観測時期12月から5月が観測時期で現在はその準備時期です。夏は水蒸気が多く観測には不適切だからだそうです。
精度1枚のパネルで20μm、鏡面全体で100μmの精度を持ちます。方向が変わっても放物面を維持し(ホモロガス構造)、副鏡を移動させることで焦点を維持します。それでも波長の違いで、光学望遠鏡に比べ15倍ほど分解能は低いそうです。(逆にアルマは百倍ほど良好だそうです)
大きな成果ブラックホールの発見
  • 中井さんが持ち込んでくださった宇宙の3次元可視化ソフト「Mitaka」(国立天文台製作)を用いて見学室で「宇宙の旅」を説明いただきました。地球を出発し太陽系⇒αケンタウリ(4.3光年)⇒銀河系(10万光年)⇒アンドロメダ銀河(250万光年)⇒138億年前の宇宙、の中を3D眼鏡により立体感のある旅をしているような感覚で見ることが出来ました

以上一般見学者では経験することができない中井会員の丁寧な説明で、充実した見学会になりました。一方で、予算の削減による駐在する研究者の減少、機器の使用終了を見るにつけ、今後の日本の基礎科学の強化の必要性を感じました。

夜は地元ガイドによる星空ツアーを計画していましたがあいにくの天気で中止となりました。

10月21日(火)朝 現地解散

そのあと、ゴルフ会を開催、曇天ながら雨が降らなかったので実施しましたが、寒かったです。

以 上(山崎哲也)

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