第175回経済産業懇話会
-日本産業は何を目指せば生き残れるか-
「量子メスの活用研究と加速器のダウンサイジング」
「脳専用のPET検査機開発と活用事例」

  • LINEで送る
日 時2025年10月16日(木) 13:30~16:40
講演1「量子メスの活用研究と加速器のダウンサイジング」
講 師量子医科学研究所 所長 白井敏之氏
講演2「脳専用のPET検査機開発と活用事例」
講 師先進核医学基盤研究部 次長 山谷泰賀氏
会 場スタジオ751
参 加34名

今回は特別に量子医科学研究所から白井所長と山谷次長に来ていただき、最新の診断技術である量子を使ったがんの治療についてのお話を頂きました。
技術的な細かいところは別としても、がん治療の最前線とその応用で興味あるお話が伺え、質疑も活発で懇親会も含めて有意義な討議となりました。
また今回は2つの講話で、13時30分開始で会合は3時間となりました。

量子医科学研究所 所長 白井敏之氏
図をクリックでPDFを表示します
先進核医学基盤研究部 次長 山谷泰賀氏
Q原子核に炭素を選んだのはなぜか
A陽子でも十分だが、重い粒子の方が効果ある、しかしベリュームやホウ素では扱いにくい、炭素より大きいと効果は強いが副作用も大きくなる 炭素はバランスが良い
Q放射線で治療する意義は何か
A放射線で被ばくすると死亡するのと同じこと、被ばくを局所に止めて、がん細胞を死滅させる
Q癌細胞がどこにあるのか判らないときは
A判らないときは薬で対応するしかない 治療戦略が大切
Q体力がいるのか
A患者に優しい治療 抗がん剤などは副作用もある
抗がん剤との併用も容易 高齢者には良い方法
Q後遺症はないのか
AX線に比べ少ない
Q当てる場所は決まるのか
A癌細胞への狙いは正確、しかし問題は人間の方が動くこと(体を押さえても自然に内臓が動く)
QDNA分子に比べ原子核は小さいが分子は壊れるのか
A分子を構成する電子の共有結合を切る 電離は原子核よりも広い範囲で生じるため、原子核の大きさには関係ない 結合に寄与している電子を電離することによって、プラスの電荷をもつ核が電子をはぎ取る
Q患部への影響はないのか
A患部のところに炭素の核はとどまるが数は少ない 電子をはぎ取るとエネルギーを失いそこにとまる
Q半導体などには兆円単位の投資補助が出ている 医療分野では投資のアピールをしているのか
A現時点では医療分野は経済安全保障の分野に入っていない 半導体、量子などとは異なる 今後変えていく必要があるだろう
Q介護では5、6兆円使うが、そこからはないのか
A現時点では介護が必要にならないようにする先制フェーズにまで資金が回っていないようである
QGEやシーメンスは経営が成り立つのに、なぜ日本はダメか
A米国市場が大きい、日本は売り先が少なく日本勢はPETでは苦戦してる様子
グローバルにやらざるを得ないが、その際は検査薬も含めた総合力が物を言う
国研(QST)によるPET産業の牽引も限界点にあり今後はベンチャーに期待するしかない
Q重粒子の分野でも中国にやられる可能性がるのか
A国内マーケットを見ていては衰退、現在重粒子が続いているのは輸出が主体、国産PETは輸出が少ない
QVRAINの商品は世界へ進むか
A製造協力先国内企業は海外に弱い 米国は認証が必要 多くの資金も必要、商社はマーケットが小さいと扱わない
Q国内企業によるPET市場シェア拡大に向けた課題は
A検査薬市場のコントロールも必要
市場に出すには今の数倍の台数が必要、しかし、保険点数が低いので病院では大型投資できない
Qどうしたら重粒子の治療を受けられるのか
Aかかりつけ医師の判断から推薦 しかし医師が知らないと推薦もない、2ndオピニオンとして相談に来れば乗る
Qすい臓がんは手術が難しく、場所が分かっていてもできないと聞くが重粒子はどうか
Aすい臓がんは見つけにくい 手術できない位の時は手遅れ、生存2年はできても5年は難しい
大腸がんの再発治療には良い

以 上(浅野応孝)

  • LINEで送る
pagetop