「生涯現役社会」めざして大いなるチャレンジを
ニッセイ基礎研・前田展弘氏がDF超高齢社会問題研で問題提起

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日時1月23日(金)11:00~12:30
演題「超高齢社会国家・日本が直面する重要課題」
講師前田展弘氏 ニッセイ基礎研究所上席研究員
場所スタジオ751+Zoom
参加50名

高齢者の高齢化が進む日本で、超高齢社会現象が本格化しています。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では65歳以上の総人口に占める人口比率が上昇、2050年に何と37.1%、人口全体のほぼ4割を高齢者で占める、というのです。超高齢社会時代に対応する新たなプラットフォーム、社会システムづくりが間違いなく重要になってきます。

そこで、DF超高齢社会問題研究会は1月23日に、この問題の専門家、ニッセイ基礎研究所上席研究員の前田展弘氏をゲストスピーカーにお招きして、超高齢社会時代が本格化する日本の抱えるさまざまな問題や課題について、率直にお話をうかがいました。

まず、前田氏は超高齢社会の未来図を描いた場合、人口構造が高齢者4割、現役世代5割、子供1割となり、経済社会にとって高齢者の存在が大きな重圧となりかねないこと、このため、いずれ社会や市場の創り直しが必要になってくることを指摘されました。
 しかし、前田氏は、65歳以上でもまだまだ活躍できるシニアが非常に多いので、高齢者層の存在を社会への重圧とせず、むしろ、それらシニアを活かす方策の創造が必要で、まさに「生涯現役社会」づくりに向けた大いなるチャレンジが重要とも強調されました。

そうした中で、民間企業のリクルートワークス社は2040年に1100万人の労働力不足が見込まれる、との予測数字を出しています。ところが大企業は、雇用創出に向かうどころか、AI(人工知能)を活用したロボットに肩代わりさせる一方で、旧来型の大企業は機械化による省人化、ムダ削除による経営効率化で乗り切ると同社では見ています。

では、問題は1100万人の人手不足の充足を、どうするのか。産業や企業の現場では深刻な問題になりかねないため、行政や政治、そして企業自身も、働く意欲のある高齢者シニアの雇用などを含め新たな雇用創出で対応せざるを得ないのでないか、と考えられます。

この点に関連して、前田氏は、「エッセンシャルワーカー」の人材確保が今後、大きな社会課題になるだろう、と見ておられます。「エッセンシャルワーカー」は、医療や保健分野、運輸・物流や建設分野、接客などサービス分野、さらには地域コミュニティを支える中核人材を指しますが、前田氏の指摘どおり、この労働力が大きく不足すれば社会インフラや生活基盤が成り立たなくなるため、2040年に向け大きなテーマになるのは確実です。

前田氏は、今回の講演テーマ「生涯現役社会」実現に向けてのチャレンジとして、いくつか具体的な問題提起をされました。その1つが、エイジフリー、つまり年齢に制限を設けず能力や意欲に基づいて自由に働ける、という価値観の醸成で、企業が定年制を止めて新たな人事制度に踏み切るパラダイムシフトを行え、という点です。

関連して前田氏は、企業が中高年の中途採用に踏み切り雇用流動化を進めること、政府も中高年の転職が不利にならないよう労働法制見直しに踏み出すことを挙げておられます。

「生涯現役社会」に関する前田氏の問題提起の中で、興味深かったのは、プラットフォームづくりの勧めです。前田氏によると、このプラットフォームは「中間支援組織」とも呼べるもので、アクティブな地域コミュニティづくりをめざす地方自治体の中に「高齢者雇用・地域参加」を促進する組織をつくる、というのも、その一例、またシルバー人材センターを
もっとアクティブな支援組織にするのもそれにあたる、と述べておられます。

しかし、プラットフォーム関連でDFメンバーの関心を引いたのは、前田氏も関与される「湘南ライフデザインスクール」計画の話です。

神奈川県茅ケ崎市にある文教大学湘南キャンパスの一部スペースを借りて、2026年4月に開講、毎週1回、密度濃い学習プログラムで1年間、集中的に授業を行うそうです。企業での定年を終えて今後のセカンドライフをどう過ごすか、いわゆる「定年後の空洞化問題」に悩んでいる人はじめ、新たな自分探しにチャレンジしようとしている人などが対象。

さまざまな分野の専門家などを講師役にして、たとえばジェロントロジー(老年学)などを学んで長いシニア人生に自分は何ができるかを問い直したり、同じシニアと議論交流するだけでなく、文教大学の学生との世代間交流など多種類のプログラムが準備されている。いわゆる地域シニア向けの大人の学校だそうです。

前田氏は講演の中で、「開講に向けての準備プログラムの形で2025年秋にトライアル講座を6回にわたって行ったら、シニアの人たちに好評で、主宰者側は自信を持ちました。そして、その実績などをもとにクラウドファンディングの形で資金支援を募りました。うれしいことに160人の方々から291万円の支援を得ました」と語っておられました。

この話に、講演を聞いていたDF関係者も一斉に「すごい」と声を出すと同時に、中には「クラウドファンディングでそれだけの浄財が集まる、というのは、生涯現役社会づくりに共感する人たちが多い、ということだ。敬意を表したいな」という声もありました。

前田氏は、このあと1人暮らしの高齢者が増えている現状に対応して、多世代がともに安心して地域で暮らせる社会づくりとして「地域共生社会」、また、加齢に伴う認知機能や身体機能の低下などに対応した新たな社会システムづくり、行政などのきめ細かい施策の展開としての「認知症フレンドリー社会」の実現の必要性についても言及されました。

「生涯現役社会」実現に向けての講演の締めくくり部分として、前田氏は、「年齢にかかわらず活躍し続けられる社会にするにはどうすればいいか」というテーマで、超高齢社会時代に対応したビジネスチャレンジの事例を紹介されました。興味深い事例がいくつかありましたので、紹介してみます。

まず、株)タイミー。「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするスキマバイトビジネスというのが、企業側メッセージ。履歴書も面接もなしに、企業側が来てほしい時間帯や希望するスキルをスマホ画面などで設定し、条件に合った働き手が応募してすぐに働けて、勤務終了後にすぐ報酬を受け取るシステム。シニアなどにも人気で、21.520万社・39.2万39店舗がその対象という(2025年10月時点)。

株)銀座セカンドライフ。シニアを対象に、シニアの人たちの新たなセカンドライフ起業支援が主な業務内容。起業したい人たち向けにレンタルオフィスの提供、セミナー交流会の開催、個別の起業相談窓口の設定、事務サポートなどで、ニーズが高い、という。

株)マイスター60。1990年創業で歴史と実績を持つ。「年齢は背番号、人生に定年なし」をモットーに、働く意欲のある高齢者の人たちに寄り添いながら、働き甲斐のある職場を提供して評価を得ている、という。

株)シニア経理財務。名前のとおり若手起業者の人たちを対象に、経理財務のプロシニア人材を派遣してアドバイス支援するのが業務内容。

株)いろどり。徳島県上勝町で日本料理を美しく彩る季節の花や葉っぱ、山菜などを栽培、出荷、販売する農業ビジネス。いまや年間1000万円以上も稼ぎ出すシニアもいて、全国的に有名となっている。

株)高齢社。東京ガスOBの人たちが東京都内に立ち上げた65歳以上の高齢者人材の派遣ビジネスを専門に行う企業。シニアの人たちの働き場を創る企業として、かなりの実績を持っている。

株)加藤製作所。高齢者雇用の先進的な数々の取り組みで有名。岐阜県中津川市で金属製品製造の企業。「土曜・日曜はわしらのウイークデー」というユニークなキャッチフレーズで、高齢者就業に積極的に取り組んでいる。工場はまさに年間フル稼働状態。もちろん、企業側は、働く高齢者の健康管理などにも気を配るなど苦労も多いが、高齢者雇用の先駆的ビジネスモデルをつくった、という自負が企業にある。岐阜県も積極サポートしている。

うきはの宝(株)。「75歳以上のおばあちゃんが働ける会社」として、いまや大きな高齢者の就業企業と全国的に話題になっている企業。福岡県うきは市で2019年に創業。主な事業は「ばぁちゃん食堂」、「ばぁちゃん喫茶」、「ばぁちゃん新聞」の3つ。いまでは、ばぁちゃんと若者たちが互いに協力して働くことで、地方の田舎を元気にする、というビジネスモデルを確立した点がすごい、と言っていい。食品の製造販売、イベントマルシェへの出店に加え、ばぁちゃん喫茶というばぁちゃんたちが経営する喫茶店が主体。

このあと、前田氏の講演を締めくくる形で、DF超高齢社会問題研究会で高齢者雇用などを研究テーマにしている得丸英司氏から「生涯現役を自ら実践している私たちDFとしては、何をすべきか、何が貢献できるか」といった視点で発言がありました。

得丸さんはその中で、DFとしては、

  1. 「中間支援機能」の役割の発揮、
  2. 「生きがい就労(社会参加)」のロールモデルとして、
  3. 「社会的な居場所」としての社会貢献

の3つがある、と述べました。

DFにとっては、いずれも活動の重要ポイントですが、得丸氏は、
まず「中間支援機能」の役割の発揮については、シニアと事業者(企業、NPO、教育機関)をつなぐコーディネート力をDF会員が持っている、という強みがあることがポイントだ、と述べました。

続いて、2つめの「生きがい就労(社会参加)」のロールモデルについては、得丸氏は、
強制ではなく「自分らしく活躍し続けられる」新たな就労(社会参加)形態を「実践者」として社会に貢献できるのでないだろうか、と述べました。

そして、最後の3つめの「社会的な居場所」としての社会貢献については、得丸氏は、
DFの活動自体が「健康寿命」を伸ばすための「社会的な居場所」として機能するのでないだろうか、と問題提起しました。

このあと、質疑の中で、平尾さんから「生涯現役社会づくりの重要性だ。しかし、政治が、超高齢社会時代対応の制度設計などを行っていないことが問題だ。どう考えておられるか」との質問がありました。これに対して、前田氏は「ご指摘のとおりだ。私自身も、もどかしく思っている。政治の責任は大きい」と回答されました

続いて、中尾さんから「得丸氏の問題意識と同じで、DFの課題対応が今後、問われる。アドバイスをいただけるか」との質問があった。これに対し前田氏は「さきほど事例紹介した企業などを見ても、さまざまな興味深いビジネス展開をしている。DFも知見やノウハウ、人脈ネットワークをフル活用してアドバイスされたらいいのでないか」と述べました。

また、宮崎さんは「私自身は、千葉県柏市の現場で地域再生のプロジェクトにかかわっているが、世代間交流を活発にしていくには、どういった対応があるだろうか」と質問、これに対し前田氏は「重要なポイントだ。地域にかかわる人たちをプロジェクトやイベントなどにできるだけ巻き込むと同時に、互いに結びつけたり、つなげていくことで、関係人口の輪をひろげていくしかないのではないだろうか」と回答されました。

このほかにも関連する質問がいくつかありましたが、生涯現役社会づくのテーマは、DFメンバーにとっても大きな関心事だったのか、DF本部会議室への現場参加、Zoomでの参加を含め50人強の方々が参加されました。DFメンバーの関心度の高さがうかがえる研究会会合だった、と言えそうです。

以 上(牧野義司 研究会代表世話人)
 

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