第45回OVER80安全保障問題分科会報告

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当会主宰和田文男さんが問題提起した「米中の間で日本はどう対処すべきか」という課題について、2026年3月5日、8名の有志でZoomオンライン放談会が開催されました。

和田さんがまとめた下記の資料「大国に挟まれた日本の生存戦略と外交」および、「憲法改正の是非」をタタキ台にして、折しも、米、イスラエルのイラン攻撃が勃発、日本を取り巻く安全保障問題は枚挙に暇がなく、テーマを上記2点に絞り、時に脱線もありましたが、2時間に亘る活発な意見交換会となりました。

様々な意見はありましたが、和田主宰が資料に記された考えに一同賛同する結論に至りました。 次回分科会は、日米首脳会談、米中首脳会談が終わった4月8日に開催することにし、お開きとなりました。


2026年3月5日

DF OVER80

安全保障問題分科会

和田文男

第2次世界大戦後、米ソ冷戦を経て、米国を中心とする世界秩序が米国の構造的変化と中国の台頭が本格化し、大国の覇権構造がぐらついている。

米中対立という構造的な緊張の下で、安全保障を米国にアウトソーシングして来た日本としてどの様に立ち回るか、生存を賭けた大きな課題である。

直近の世界動向と先日行われた日本の衆院選挙の結果を踏まえて、これからの日本の生存のための外交戦略を提言致します。

先ず、外交方針(私見)を提示し、そのベースとなる日本を取り巻く世界秩序の環境変化を述べたい。本私見を叩き台にして頂き、活発な意見交換を期待致します。

  1. 日本の外交戦略
    1. 基本方針

※先般の衆院選挙で国民の日本の安全保障への関心はある程度高まったと感じるが、高市内閣は更なる実態インプットを国民に行うべき

日米同盟を堅持しつつ、今後米国のアジア離れが(日本を含む)起っても耐えられる安全保障対策を段階的に構築する。

米・中・ロ3強に挟まれ、弱肉強食の環境下で国益を守り、世界から認められる国家で在り続けるには、それなりの国力、国民の理解、約束を守る力、危機に対する対処能力、他国から信頼される安定した国情と制度が求められる。※

  • 具体的戦略

対米関係

米国と同一の普遍的価値(民主主義、自由、人権、資本主義)を有する日本との同盟関係を直ちに切れるものではなく、又、ユーラシア大陸の東の端に、それなりのpowerを持つ日本は米国として必要なはずである。

但、今の米国は国益中心のディールを旨として同盟国への圧力や要求を強めているので、逆にその機会を利用して(米国の所為にして)関係の是正(希薄)を行うのも一案。政権の巧みなマネージメントが求められる。

※高市内閣が日米同盟強化を唱えつつ、日本の国益をどう守ろうとするか、watchが求められる。

中長期的には日米同盟強化を唱えつつ、同盟の役割分担や対等化等の問題を見直す作業も求められる。※

対中国関係※

中国とは極力対峙する事は避け、日本側から問題を起こさない付合いを心掛けるのが得策と考える。

※中国は欧米と異り、戦略の時間軸が極めて長い事に留意。

又、情報戦・心理戦を長期に亘り展開するので、その対応策も必要。

付合いは「譲歩」ではなく、中国が日本を挑発しやすいネタを与えないことが肝要。

日中の経済関係は切っても切れない深い関係にあるが、中国側が戦略物資の対日規制を仕掛けて来る以上、日本としても、経済面での対中依存の上限を内々に設ける事も必要と考える。

特に日本製 戦略物質、重要技術、重要インフラ。 今迄の出し放し、与えて放し、置き放しのお人好し日本では日本は生きて行けない。

米中以外の国々との関係※

※現行日本の外交の柱

  • 日米同盟の強化
  • FOIP(開かれたインド・太平洋)
  • グローバル・サウスとの連携

       ↓

新たに、「ユーラシア大陸諸国との関係強化」を提言

当然の事ながら米中以外の国とは多層的な外交を目指し、日本の発信力を維持し、信頼される外交行う。

欧州:安全保障協力

豪州:経済安全保障

インド:技術協力 

 ASEAN諸国等の積み上げ

  1. 日本の安全保障を取り巻く環境の変化
    1. 米・中・ロ3国の対立激化

米国・中国・ロシアの3つの大国が明確なルールや秩序を共有しないまま、自国の利益中心に、相互不信の中で牽制し合う状態に突入した。

かつての米国のように一国で世界の覇権が獲った体制ではなく、中国・ロシアにもそこまでの実力は無いので、結果として3国は自分の圧力が効く地域・地盤で覇を確保しようとしている。

(縄張り)米国は西半球及び中東

                 中国はアジアとグローバル・サウス

                  ロシアは旧ソ連圏と東欧

各々の地域で力の圧力を掛けようとしている。米国のアジア離れが進めば日本との同盟関係に大きな影響を与える事は必至。

米国の凋落と中国の台頭、中・ロの接近で最も影響を受けるのは日本である。

  • 同盟国、米国の信頼性低下

長年世界の警察官として国力を費やして来た米国の凋落はトランプ政権で始った事ではなく、オバマ政権時代から米国の対外介入に伴う米国の負担に対しリターンが無さすぎるとの国民感情が充満しており、トランプ政権になって今迄かろうじて維持して来た民主、人権、法の支配と云った普遍的価値をかなぐり捨てて、同盟関係無視のディールに突入している。

  • 世界秩序に対する意識の変化

国連を中心とする「世界平和」の理想・理念から現実主義へ

国家は道徳や理念で維持出来ない(中・ロの国家統治の現状からしても)

今の国際社会に最終裁定者は存在しない(国連の無力)

安全保障は自助努力しかない時代に頼れるのは自らの意思と能力

  • 中国の戦略

米国のアジアからの撤退が進めば中国はアジアの覇者として日本の主権を脅かして来るのは必至。

※併せて、ロシアの便上侵攻での北海道進出も心配

領土に関しても尖閣諸島は勿論、沖縄本島に対してもちょっかいをかけて来ており、将来日本の人口が確実に減少するのに合わせる形で、中国人の強制移民もあり得る。※(日本を侵略した場合)

日本の人口    2020年:12,665万人

2070年予想: 8,700万人(△4,000)

日本の整備されたインフラと水を含む自然環境は中国によって大きな魅力で、併せて太平洋の玄関として利用出来る。

中国の長い時間軸によるタイミング待ちの戦略は日本人は真似は出来ない。

日本として逃げ場のない地政学的関係が中国である。

※日本外務省の中国関係者チャイナスクールのメンバーは「日本と中国の近代史は助け合いの歴史であり、重なり合う部分が多い」として歴史に恥じない外交に精進しているとの事。

従い、中国とは「戦略的互恵関係※」を活かし乍ら、長い時間軸に対応してこつこつと日本の平和

主義を唱えて中国との有効関係を築いて行くしかない。

但し、中国が意図的に行ってきた日本の軍国主義や中国侵攻についての子供への教育が中国人の民意にどう影響しているか極めて心配である。

以 上


2026年3月5日

DF OVER80

安全保障問題分科会

和田文男

世界の秩序が揺らいでおり、特に日本の安全保障の環境は厳しい様相を呈している。衆院選挙に大勝した高市2次内閣は「憲法改正」を注力政策の一つに掲げ、内閣発足時のコメントとして「憲法改正の実現に向けて、力強く取り組みを進めていかなければならない」と強調している。

確かに厳しい安全保障環境下で筋の通った外交を展開するためには国内外から認められた拠り所となる憲法が不可欠である。

現行日本憲法は太平洋戦争後米国の管理の下で作成・制定されたものであるが、運用面からして実態にそぐわないので日本人自らの考えで実態に即した改正をすべきであると考えるグループと他国の管理下で作られたものであっても平和への理念の国民への浸透は十分で、運用面の不都合は補足で補えばよいとする護憲グループに2分されている。

今後の高市内閣の改憲への動きに際し、改めて現行日本憲法の改正の是非を検討致したい。

  1. 日本憲法改正の手続と改正限界

憲法改正と唱えるが、先ずは改正の手続きを理解しておく。

国会発議

※通常の法案は提出要件衆議院 20名以上参議院 10名以上

憲法26条 

衆議院議員の2/3 改正発議(※但、100人以上)

参議院議員の2/3 改正発議(※但、50人以上)

国民投票 過半数の賛成を要す。

26条には発議や国民投票の方法は詳しく定めておらず、詳細は「国会法」と「日本国憲法の改正手続に関する法律」で規定。

国会法第68条の3 内容について事項ごとに区分して発議が求められている。

  • 国民投票

満18歳以上の国民

国会発議から60日以降180日以内

※2012年自民党の改正案は53項目もあって53枚の投票用紙となるので実行不可。

※投票用紙は改正内容ごとに配布され○式で投票

  • 国際法に適合が条件

「武力行使」に関する憲法条文は国際法に違反する内容は不可

  • 「戦争」と「武力行使」の法律用語上の違い

「戦争」 …相手国が自国や他国を侵略していない状況でなされる宣戦布告を経た武力行使

…現在違法となっている

「武力行使」…ある国が他の国に対して実力を行使する行為。戦争も含まれる。自分の国が攻撃された場合も該当。

  • 憲法改正の限界

憲法の基本原理に反する改正は、仮に国民投票で可決しても無効。

日本国憲法に「〇〇条は改正できない」と定める規定はない。しかし、立憲主義・国民主権・平和主義・基本的人権の尊重・権力分立等の憲法の根本原理に反する改正は違反で「改正限界」と解される。

日本憲法9条1項の

「国際紛争を解決する手段として」「戦争と、武力による威嚇又は武力の行使」

「永久に放棄」の文言から改正が出来ない限界規定との見解もある。

  • 個別的自衛権と集団的自衛権

※侵略に武力攻撃を受けている状態

「国連憲章」により世界は国際関係において「武力不行使」が原則となっている。しかし、侵略国家が登場した場合、※侵略を受けた国を武力行使をもって助ける決議を国連が行えば、国連軍を編制して武力行使が実行される。

但、国連決議や国連軍の編成には時間を要すので、侵略を受けた国は自ら直ちに侵略に武力で対抗する事が認められる。それが「個別的自衛権」。

※過剰反撃を防止するために、「必要性」と「均衡性」が求められる(小銃に大砲で反撃はダメ)

「集団的自衛権」とは侵略された被害国から要請を受けた国が、※被害国の防衛を援助するために武力行使をする権利を云う。

※濫用されやすい危険を含んでいる

これ等の権利は相手国に攻撃されて始めて権利行使(武力による反撃)が出来るが、現代の武力行使はミサイル等により攻撃されてからでは遅すぎて防衛出来ないので、ミサイル発射着手の段階での反撃防衛と認めている。※

  1. 日本憲法の意図(第9条)

第9条

※ありとあらゆる武力行使を放棄しているのではなく、国際的な紛争の際に「自分から先に手を出す」事は一切ない。永久に無いと宣言している。改正する必要は無いとの意見多数

  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、※国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  2. ※前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

※解釈が分れる。

侵略用以外の軍隊なら保有出来るとの理解(芦田修正説)

あらゆる戦力を認めていないので武力保有や行使は一切禁止との理解

日本政府は第9条の解釈として他国から攻撃を受けた際、国連決議があろうが、自衛権に根拠づけられようが「武力を一切禁じる」を旨とするが、それでは日本国民の生命や自由を守れないので第13条を適用し、「例外」として自衛のための「武力行使」を認めたものと解釈している。

第13条

すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第9条・第13条と自衛隊存在の関係

説明1. 自衛隊は「戦力」であるが、憲法第13条を根拠に第9条の「例外」として認められた存在。

※政府の今迄の説明自衛隊は9条2項が禁止する「軍隊」ではないので、72条が規定する行政各部に含まれるとして首相―防衛省の管理下に置いている。

※説明2. 保有が禁じられた「軍事」・「戦力」とは「自衛のための必要最小限度を超える実力」を云い、自衛隊はそれに該当しないから第9条2項に違反しない。

  1. 日本憲法の抱える矛盾

日本政府の運用上の解釈はあくまで日本憲法上の解釈で、国際法上第9条を解釈すると、日本が武力攻撃を受けた場合に防衛のため武力行使が行われる事は国際法上「個別的自衛権」として正当化されている。

※2015年の閣議決定で、日本への武力攻撃が無くても、日本の「存立危機事態」と判断されれば武力行使が可能となった。集団的自衛権の行使

他方、日本への武力攻撃がなければ、安保決議で国連軍が組成されても、武力攻撃を受けた同盟国から武力援助を求められても参加不可である。※

現在日本政府は、憲法改正を行わないで※別の補則により集団的自衛権を行使出来るようにしている。

2014年7月1日 閣議決定

2015年5月  平和安全法制提案

       公聴会・反対運動

2015年9月  安保保利の成立

我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、武力行使が可能となった。※

※識者・参考人から憲法違反との指摘を受けている。

当時の世論も56.7%が違憲と答えている。

我が国の存立危機の判断は誰がするのか?その基準は?

憲法上は第9条により集団的自衛権を禁止している事への矛盾を残したまま。

憲法改正の必要性が問題

日本の防衛に関する日米安全保障条約上の規定は、第5条により、

「日本国の施政下にある領域におけるいずれか一方に対する武力攻撃に対し、共通の危機に対処するよう行動する」としており、我が国の施政の下にある領域内にある米軍に対する攻撃を含め、両国が共同して日本防衛に当ると規定している。

日本の防衛は自衛隊と日米安保により一応の態勢は整っており、自衛隊と米軍の防衛能力次第となっている。

又、世界に対して憲法上、日本から侵略する武力使用を含め他国での武力使用を禁止する事を明文化しており(但し、日本の存立危機事態と判断された場合は集団的自衛権行使を可としているが)、日本は平和主義を理念として世界に貢献する旨のアピールが出来ている。

  1. 自衛隊の憲法上明記問題(矛盾の一つ)

高市内閣も今までの自衛隊違憲論を終止させるべく改憲へのアクションを急ぐと思われるが、改めて自衛隊に対する国民の意識と憲法上明記に伴う問題についてレビューする。

2026年1月高市内閣府発表による昨年行われた世論調査によると、

自衛隊は役に立っている:92.0%

    役に立っていない: 7.1%    

自衛隊に良い印象を持つ :93.7%

    悪い印象を持つ :3.0%

日本の防衛は日米安保と自衛隊で行う:90.9%

日米安保を廃棄し自衛隊のみで守る:一桁

日米安保の自衛隊も無くす :一桁

自衛隊の規模・能力を増強すべき :45.3%(2015年調査20.9%)

2015年1月内閣府調査

自衛隊の合憲性

違反している:21%

違反していない:69%

集団的自衛権行使容認

違反している:40%

違反していない:41%

憲法9条改正の是非

改正必要 :49%

改正不要 :47%

日本国民の意識として

自衛隊は防衛上も災害対策上も必要とし、又、現憲法上も違反していないのではと考えている者が大方である。従い、現在の憲法の改正までする事の是非は拮抗している。

集団的自衛権行使容認については現在の防衛環境も影響して、かつての容認少数から拮抗へと上昇しているものの容認多数とまでは至っていない。

現在、日本の多数の国民は他国が武力をもって攻撃して来た場合自衛隊が武力を持って防衛を行う個別的自衛権の行使や、そのための自衛隊の設置は憲法9条に違反しないと考えている。それならば、世界でとりわけ近隣大国から敏感に反応される心配がある憲法改正をする必要があるのか疑問

  • 改憲の難しさ

大方の国民はここまで認知された自衛隊はやはり憲法に明記すべきと思っているものと想像する。

法律上自衛隊を明記すると、自衛隊とはどの様な組織で、何を目的に何をするかを明記しなければならない。

必ずぶつかるのが自衛隊の集団的自衛権との関係と解釈で百家争鳴となり大混乱を招く事必至と考える。識者・マスコミ・政治家を含め中途半端な主張が多く、国民をミスリードする恐れがある。

(和田私見) 

日本の防衛環境の現状と現実的な外交を考えると、世界に対し、特に近隣大国に誤解され易い憲法改正は避けるべきと考える。

国民投票を含む多大のコストと場合により国の分断を招く恐れのある改憲は控えるべきと考える。(1回の国民投票のコスト約850億円)

むしろ、現実的に自衛隊の人的・装備・技術の能力アップを着々と進めておく事に注力すべきと考える。

(結論)

非改憲 但、防衛力強化

以 上

以 上(保坂洋)

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