| 日 時 | 3月31日(火)14:30~16:30 |
| テーマ | 環境コラム投稿記事から ・CCS (Carbon dioxide Capture and Storage) 4件 ・環境技術が切り拓く日本造船業の再生 ・臨海副都心地区地域熱供給 青海南プラント見学 |
| 場 所 | スタジオ751 |
| 参加者 | 25名 |
環境交流会は環境コラム欄に投稿されたコラム記事を題材として意見交換を行い、地球環境問題への理解を深めると共に、仲間との交流を深めることを目的としている。第3回環境交流会は3月31日に開催され、6つのコラム記事を取り上げた。
CCS (Carbon dioxide Capture and Storage)
1番目はCCS (Carbon dioxide Capture and Storage)を取り上げた4つのコラムで、中西から以下の話があった。
環境コラム17号 首都圏CCSと苫小牧CCS
「首都圏CCSは京葉工業地帯の工場の排ガスからCO2を回収し、房総半島を横断するパイプラインで外房まで輸送し、沖合の地下の帯水層に貯留する事業で、現在予備検討が進行している。CO2の貯留量は2030年に120万トン/年、2030年代半ばに5百万トン/年を計画している。

苫小牧CCSは苫小牧港工業団地の工場の排ガスから回収したCO2を、傾斜井を掘削して直接沖合の地下の帯水層に貯留する事業で、今年度内に最終投資判断がなされる予定。貯留量は2030年に150~200万トン/年。苫小牧CCSは既に実証試験が行われ、2016~2019年に製油所から回収した30万トンのCO2が圧入された。本CCSの貯留コスト(100万トン/年ケース)はこの実証試験結果に基づき、約6000円/トンCO2と試算されている。尚、2018年の胆振地震でも地下貯留に異常は観測されなかった。」
環境コラム18号 油ガス田とCCS
「今から30年前にCCSプロジェクトに関わった。当時勤務していたジャパン石油開発(株)はアブダビの超巨大海洋油田から水攻法によって原油を生産していたが、将来、CO2 EOR (Enhanced Oil Recovery)を適用することを想定し、石油公団技術センターと詳細な油層スタディを実施した。CO2 EORは油層にCO2を圧入して原油回収率の向上を図る方法で、同時にCO2地下貯留となる。三菱重工業(株)に委託してアブダビの発電所からCO2を回収する設備の概念設計も行った。天然ガスも原油回収率の向上のため圧入されるが、エネルギー資源の無駄使いになる。このため、CO2 EORは産油国にとって重要な技術である。」

「アブダビ国営石油会社ADNOCは2016年に陸上油田でCCS EOR(80万トン/年)を開始した。その後、同じく陸上のバブ油田で大規模なCCS EOR(150万トン/年、将来、230万トン/年に増強)を計画し、2026年にその第1段階の圧入が開始予定である。尚、同油田の随伴ガスにはCO2が含まれ、これを回収して圧入する。同じアブダビで30年前にCCS EORの検討に携わった石油技術者として、大変嬉しいニュースである。」
環境コラム20号 リバプール湾CCS、世界のCCS
「リバプール湾CCSは英国リバプール近郊のセメント工場、ごみ焼却発電所、ブルー水素製造プラント等で発生するCO2を回収し、沖合に位置する枯渇ガス田に貯留する事業。2025年に最終投資判断がなされ2028年に稼働開始予定。貯留量は450万トン/年、2030年代に1000万トン/年へ増強する計画である。尚、ブルー水素は天然ガスの改質によって製造し、英国北西部~北ウェールズの工業地帯にパイプラインで運ばれ脱炭素燃料として使用される(Hynet North Westプロジェクト)。」

「英国は2030年代に世界有数のCCS産業を構築するという国家戦略を立て、25年間にわたる220億ポンド(約4兆円)の支援枠を確保している。この支援スキームは、① CO2排出事業者を対象としたCO2回収に対する補助金、② CO2輸送事業者を対象としたパイプライン等の建設・運営支援、③ CO2貯留事業者を対象とした貯留量に応じた報酬(炭素価格連動)から成り、事業リスクが異なる3つ分野に応じた支援策となっている。」
「Global Status of CCS 2025” (Global CCS Institute)によると、現在、世界で稼働中の商業規模のCCSは77あり、合計貯留量は64百万トン/年である。建設中のCCSは47(合計貯油量は44百万トン/年)あり、近いうちに世界のCCS合計貯留量は1億トン/年に達する見込みである。現在、世界のエネルギー起源のCO2排出量は350億トンであり、CCSの貯油量はその1%にも満たない。しかし、CCSは脱炭素社会実現の一手法として近年、政策支援が強化されてきており、今後、大幅な増加が期待されている。」
環境コラム22号 CCS事業法と日本のCCS
「2024年、CCS事業法が制定され、首都圏CCS、苫小牧CCSを含む国内5か所のCCS事業(東新潟地域CCSは枯渇油ガス田に貯留)と、国外4か所のCCS事業が先進的CCSプロジェクトとして選定された。国外事業は国内で回収したCO2を船で運び、マレーシア、オーストラリア沖等の枯渇油ガス田に貯留する。これら9プロジェクトには、石油精製、鉄鋼、電力、化学、紙、パルプ、セメント等の企業が参加しており、国は2030年までにCO2の年間貯留量6百~12百万トンを確保したいとしている。」

「2026年度、GX推進法に基づき10万トン/年以上を排出する企業が参加して、CO2排出量取引制度(GX-ETS)がスタートする。発電/鉄鋼/セメント等、CO2を大量に排出する企業は、排出量が排出枠を超過するので不足分を購入する必要がある。CCS会社が貯留するCO2は、排出枠(クレジット)として排出権取引市場に供給される。CCSは森林吸収や省エネよりも信頼性が高い削減と評価され、高品質クレジットとして扱われる見込みである。苫小牧CCSの実証試験により貯留コストは6000円/トンCO2と試算されており、CO2取引価格が6000円/トンを上回れば、CCS事業は採算がとれることになる。」
CCSついて参加者から以下の質問があった
Q:地層に圧入・貯留されるCO2は液体なのかそれとも気体なのか。
A:地下深く貯留されるCO2は液体でも気体でもない超臨界状態になる。超臨界CO2は液体のように密度が高く、気体のように流動性が高い。そのため、地層の小さな孔隙に入り込み易い(AIの回答)。
Q:地下に貯留されたCO2は地表に漏れることはないのか?
A:貯留層の上部に泥岩等の不浸透性地層があれば、CO2が漏れることはない。枯渇油ガス田に貯留する場合、そこに数百万年~数千万年に亘って原油・ガスが留まっていた訳だから、漏洩の心配は全くない。
Q:EUのCO2排出量取引制度(EU Emissions Trading System)での取引価格は1300円/トンCO2位と聞いている。日本でのCCS実施コストは約6000円/トンCO2とのことなので、日本でCCSを実施するよりもヨーロッパからCO2排出枠 (クレジット)を買った方が、CO2排出削減策として合理的ではないか。
A:EU ETSは20年前に導入され、取引価格は円換算すると8千円~1万円/トンCO2と記憶している(現在の取引価格は約1万2千円。EU ETSはEU域内の排出量を削減するための施策で、日本企業は制度対象者ではなく、排出枠の取引はできない。)本年度開始するGX-ETSの取引価格は3千円/トンCO2程度に設計され(上限取引価格4300円、下限取引価格1700円)、将来、段階的に引き上げられる計画である。企業はJ-クレジットやJCMクレジットを購入して排出枠の不足を補うこともできるが、その利用量には上限が設定されている。GX-ETSはカーボンニュートラルと経済成長の両立を図る施策であり、企業はGX-ETSの活用が求められている。
排出量取引制度(GX-ETS)Deloitte 参照
C:国内のセメント需要は、年々、減っている。そのため去年の生産実績で排出枠を作ったら枠が余ってしまう。
C:個々の業界、企業ごとに排出枠をどう設定するかは難しい問題である。政府はCO2削減の新技術開発を進めている企業には、排出枠を多くすることなども考えている。
環境技術が切り拓く日本造船業の再生
2番目は「環境技術が切り拓く日本造船業の再生」で、廣島さんから以下の話があった。
「造船業は安全保障とエネルギー輸送を支える戦略産業として、サナエノミクスの17分野の1つに挙げられている。造船業の再生には、① 船舶燃料の脱炭素化(重油代替燃料の導入)、② 液化CO2運搬船の開発が2つの柱である。①は中期的にはLNGやメタノール、長期的にはアンモニアの導入である。LNG燃料船は既に大型貨物船やタンカーに導入されている。LNG燃料船、メタノール(化石燃料由来)燃料船は重油燃料船と比べてCO2の排出は20~30%減、再エネ由来のメタノールを使用するとCO2排出減は90%以上となる。」

メタノール燃料船、アンモニア燃船については、以下参照。
「常石造船が世界初となるメタノール二元燃料ばら積み貨物船を引き渡し」
「2050年温室効果ガス排出量実質ゼロに向け、海運大手の日本郵船がアンモニアを燃料とした船を世界で初めて竣工」(2025年1月18日)
「国内5か所のCCS事業の内、日本海側東北地方CCSと九州西部沖CCSはCO2排出源とCO2貯留地が遠く離れているので、回収したCO2を液化し(7~10気圧、マイナス50℃)、液化CO2(LCO2)船で運ぶ必要がある。また、複数のCO2排出源が分散している場合(九州西部沖CCSの排出源は瀬戸内・九州地域の製油所と火力発電所)、それぞれの排出源から小型LCO2船(5000トン)で一時貯蔵地まで運んでバッファー貯蔵し、そこで中型LCO2船(2万トン)に積み替えて貯留地へ運ぶ必要も生じる。海外へ運ぶLCO2船は大型(5万トン)になる。」
「LCO2運搬船の建造で中国、韓国と戦って勝てるかが問題だ。液化CO2船は構造が特殊でケミカルタンカーに近い。ケミカルタンカーは瀬戸内海の浅川造船に強みがある。まず5000トンのLCO2船から始めて、それから5万トンに拡大していく。工法はブロック工法で、船を100~300位のブロックに分けて陸上で作り、最後にドックで組み立てる。工場で部品を大量生産でき、並行作業が可能なため、工期短縮、コスト削減が可能である。今治造船や新来島ドックが伝統的に強い。政府のしっかりした助成の下、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)社のエンジン設計/線形設計と組み合わせるなど、造船業界一丸となって日本の造船業の再生に挑んでいる。」
LCO2船の開発については以下を参照。
「海運・造船7社連合、LCO2船開発へ。アンモニア焚きにも展開。造船他社も合流を(日本海事新聞、
2024年8月28日)」
「CO2船舶輸送に関する技術開発及び実証試験(日本CCS調査)」
日本造船業の再生について参加者から以下の質問があった。
Q:液化CO2の温度はかなりの低温と思うが、今の技術で対応できるのか。
A:LNGの温度はマイナス162℃、LCO2の温度はマイナス50℃であり、LNGタンカーに比べればLCO2船の難度は低い。液化水素の温度はマイナス253℃、メタノールは常温で液化する。
Q:LCO2の比重はLNGと比べて重たいと思うが、どうか。
A:LCO2(7~10気圧、マイナス50℃)の密度は1150Kg/m3。LNGの密度の倍程度である。従ってLNGタンカーは大きな容積の割に軽く、重心が上がりやすい。一方、LCO2船は重心が下がり復元性は良好だが、喫水が深くなる(AIの回答)。問題はLNGタンカーと同様、運搬中にCO2が漏れることである。
漏洩を少なくするにはエンジンとの結合とかの設計に工夫が必要であるが、ケミカルタンカーで実績があり、日本の造船業界の強みになっている。
Q:LNGタンカーのLNGも航海中に蒸発してロスする。中東から輸送される場合、積み荷の2%~3%が消失すると言われている。これは仕方がないのか。
A:ある程度ロスが生じるのは仕方がない。それを如何に少なくするかが設計の腕の見せ所である。
臨海副都心地区地域熱供給 青海南プラント見学
3番目は「臨海副都心地区地域熱供給 青海南プラント見学」で、橋本さんから以下の話があった。
「東京都は2050年カーボンニュートラルを目指し、水素エネルギーの社会実装を戦略として掲げている。臨海副都心地区の地域熱供給システムはその取り組みの一つである。その青海南プラントが本格稼働したので見学に行った。設備の眼玉は水素混焼ボイラーと水素貯蔵合金タンク(貯蔵量:350 Nm3)。

温水は都市ガスを燃焼し、蒸気の熱で製造するが、水素混焼ボイラーは都市ガスと水素を混合して(体積比1:1)燃焼できる。水素貯蔵合金は着火しないことが特長で、安全性が高い。尚、水素は燃料電池による発電にも利用される。」
「水素は山梨県の米倉山水素製造実証施設で、水の電気分解によって製造される。電力はメガソーラーの電力を使用(出力の安定時は電力系統に送電し、不安定な時に水素製造装置に供給)。水素は水素貯蔵合金タンクに貯蔵され、高圧ガスボンベを束ねたカードルに詰められてトラックで輸送される。」
カーボンニュートラルの実現へ!山梨県における水素エネルギー社会の実践とYHCによるエネルギー需要転換への挑戦
「山梨県は自然エネルギーの推進に力をいれてきた。現在、水素エネルギー社会の実現に向け取り組んでいる。」
【山梨県知事 長崎幸太郎×菊川怜 対談】次世代エネルギー・グリーン水素が未来を変える
「水素およびアンモニアは、鉄鋼・化学・セメントなどCO₂削減が難しい分野での代替手段として、また発電やモビリティの脱炭素化にも直結する重要な選択肢である。日本は水素の供給コスト目標(2030年30円/Nm³、2050年20円/Nm³)と、導入量の工程(2030年300万t→2040年1,200万t→2050年2,000万t)を掲げている。」
「ブルームバーグNEFによると、現在、世界のどの国でもグリーン水素の価格はグレー水素、ブルー水素よりも高い。特に、日本は高い。しかし、2030年には、ブラジル、中国、スウェーデン、スペイン、インドでグリーン水素の価格はグレー水素よりも低くなる。日本の場合、グリーン水素の価格はブルー水素よりも低くなる。」
“Green Hydrogen to Undercut Gray Sibling by End of Decade”(Bloomberg NEF August 9, 2023”
「ブルームバーグNEF【長期エネルギー見通し(NEO):2024】の2050年CO2ネットゼロシナリオは、今後、世界全体でどの技術がCO2排出量削減に貢献するかを示している。それによると、① クリーンエネルギー(45%)、② 電化(24%)、③ CCS(14%)、④エネルギー効率(8%)、⑤ バイオエネルギー(5%)、⑥ 水素(3%)」
ブルームバーグNEFによる「長期エネルギー見通し(NEO):2024」 現行の技術を早急に導入すれば世界のネットゼロ実現が近づく可能性
「経産省産業構造審議会(R3年6月18日)資料によると、グリーンイノベーションで成長が期待される産業は14分野あり、その内、5分野(① 燃料アンモニア産業、② 水素産業、③ 原子力産業(水素製造原子力)、④ 船舶産業、⑤ 航空機産業)に水素が含まれている。水素への期待が大きい。」
Q: 水素を燃料とするFCVは全く売れていない。何故か?
A:水素ステーションの閉鎖が相次いでいる。水素インフラの不足が根本的な原因ではないか。
(AIの回答:水素ステーションの建設費、運営費はガソリンスタンドの数倍である。そのため、水素インフラが増えない→FCVが増えない→水素インフラが増えないという悪循環に陥っている。政府は水素ステーションの建設費、運営費の低減目標を掲げているが、現状は達成途上である。車両価格が高い、水素価格が高いという問題も大きい。)
C:トヨタは色々な選択肢を提供する全方位戦略をとり、FCVも販売している。岩谷産業は有明で水素ステーションを運営している。都バスもFCVを何台か走らせている。日本はFCVに力をいれているが、まだ、テスト段階に留まっているという印象を持っている。
Q:水素ステーションは爆発の危険はないのか。
A:① 水素は空気の14倍軽く、上空に急速に拡散する、② 可燃範囲は広いが、滞留しにくい、③ 漏れた瞬間に上昇し、地面に留まらない。そのためガソリンのように地面に留まって大規模火災になるリスクは低いとされている。但し、着火すれば火炎速度は速いので、漏洩防止が最重要。(AI情報)
C:紹介した経産省産業構造審議会の資料は5年前のものである。中身の強弱は変わっているが基本は変わっていない。日本は水素に相当力をいれているという印象をもっている。
C:イスラエル・米国によるイラン軍事衝突が発生し、中東の石油の供給が途絶する事態が発生した。今や、石油に頼る時代から転換を図る時期にきているのではないか。ネットゼロを目指し世界はメタノール、アンモニア、水素などの脱炭素燃料に取り組んでいる。確信が持てている訳ではないが、前に進まねばという思いでやっている。そのなかで日本はそれなりに良い処にいくのではないかという期待がある。日本は水が豊富にあり水素の製造に向いているのかもしれない。
C:世界最大の海運会社であるデンマークのマースク社は、グリーン水素から製造したメタノールを燃料とする船舶を多数保有しており、将来的には自社の全船舶をメタノール燃料船とする考えである。マースク社の狙いは自社がユーザーとしてメタノールを使うという前提で、グリーン水素プラントメーカーと提携し、一気通貫のグリーン水素サプライチェーン作ることである。日本郵船も商船三井もこの動きに関心をもっている。日本の再エネをどの程度活用できるか、容量がどれだけあるかと言う問題はあるが、日本の船舶産業もそういう流れになっている。
Maersk Green Methanol Initiatives for 2025: Key Projects, Strategies and Market Impact
以 上(中西 聡)