「中国自動車産業鳥瞰図」
レポートと動画 山﨑雅史会員(804)

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山﨑雅史会員(804)より「中国自動車産業鳥瞰図」のレポートと動画を頂きました。
以下要約の最後に、「日本勢の戦略が試される時が近づいています。続々と発表される日本勢のEV販売計画縮小の報道に、日本の自動車メーカーは本当に世界の流れを正しく把握しているのだろうかと不安になります」と、自動車産業OBとして真剣に警鐘を鳴らしており、まさに必見の内容だと感じます。
以下、山崎会員の要約、レポートPDFと動画(YouTube)をご覧ください


技術と台数において異次元の進化を遂げ続けている中国車の背景を理解するために中国自動車産業を俯瞰してまとめてみました。
約49分と長い動画になってしまいました。
アクセス用のURLはhttps://youtu.be/XAzIxgQDYoAとなります。

動画の要点を以下に示します。お時間のある時にでもご覧いただきご参考にしていただければ幸いです。

(要点)

1984年にフォルクスワーゲンが上海汽車と始めた合弁事業が、外資が地場の自動車メーカーの育成を始めた出発点で、以来、外資の指導の下で中国の国有自動車メーカーは外資の技術を取り込み本格的な成長期に突入しました。一方、BYDや吉利汽車を初めとする民営企業も誕生し独自の成長を始めました。

2020年のコロナ禍を境に今までの「ステータスシンボルとしての外資」から「実用重視の国産ブランド」へと消費者マインドは大きく変わり、新エネルギー車を中心に「より高性能でスマートなクルマ」、コストパフォーマンスのいい車へと流れが大きく変わりました。その流れの変化に遅れを取った外資は中国市場でシェアを落とし始めました。一方、中国ブランドは右肩上がりでシェアを伸ばし、今ではそのシェアは7割を目前にしています。ホンダや日産はピーク時の販売台数の4割まで落ち込み、トヨタはかろうじて9割の販売台数に踏みとどまっています。

中国の消費者は車内の快適なリビング化を求め、プライベート時間を楽しむためにテレビや冷蔵庫、快適なシート、スピーカーやスマートコックピットを必須とするトレンドが加速していきました。走行性能へのこだわりが強い日本車はこの流れに乗れず「日本車は安全だけど退屈なクルマ」との評価を受ける結果となり、販売の右肩下がりから抜け出せない状態にまで追い込まれました。

模倣を組み合わせることでイノベーションが生まれる、模倣とは巨人の肩に立つ行為で模倣を通じて先人の技術を学び、その先を目指すという、模倣を積極的に捉える姿勢は民営企業として大きく飛躍したBYDの躍進の根幹でした。ベストから学びその先の本物を目指す貪欲さは今の中国自動車メーカーの中にも生き続けており、飛躍し続ける原動力となっています。

米国から制裁を受け西側諸国での活動が制限されているファーウェイと、世界トップの電池メーカーになったCATLが、2019年に結んだ中国の自動車メーカーの電動化とスマート化を促進するための協力協定は、スマートカー技術における格差危機に直面している国有企業を中心に技術の底上げを図り、民営企業に負けないヒットモデルを出し始めています。スマートカー技術の提供に徹し自らはクルマを生産しないファーウェイはそれゆえに間口を広げ、存在感を増しています。世界に類を見ないファーウェイとCATLによる協力協定は、中国自動車産業の強靭な横糸となって今後もその強さを発揮していくことでしょう。

その中国の自動車産業にEVの販売台数でトップとなったBYDをも脅かす変革の新しい風が吹き始めています。ひとつはAIを駆使し自動車だけでなく空飛ぶクルマや人型ロボットへと活動領域を広げているシャオペン(小鵬)で、新テック企業として飛躍の段階に移行しつつあり、テスラに更に近づいた存在となっています。もうひとつは2年前にスマホから参入した「中国のスティーブ・ジョブズ」といわれる雷軍(レイ・ジュン)氏が率いるシャオミ(小米)で、スマホと家電とEVを組み合わせた完全エコシステムの構築を目指しています。

ファーウェイのスマートカー技術やシャオペン、シャオミの先進AI技術は、中国車の競争軸が、ソフトウエアがクルマの価値を決めるSDV(Software Defined Vehicle)から、搭載しているAI技術がクルマの価値を決めるAIDV(AI Defined Vehicle)へと変わりつつあることを示しています。

成長の活路を海外に求めている中国OEMの、国外での生産拠点の建設の主力は東南アジアや中央アジアから欧州に移りつつあり、特にドイツに次ぐ欧州第2の自動車生産国、スペインがその目玉となっています。生産委託の名門であるオーストリアのマグナシュタイヤーの活用も、投資リスクの軽減と高品質の確保の切り札としての選択肢となっています。一帯一路の要衝であるエジプト・アルジェリア・ナイジェリアへの生産拠点の建設も、将来のアフリカ市場を狙い中国勢は手を打ちつつあります。南米最大の経済大国ブラジルでの生産も、メルコスールの活用によるアルゼンチン等への周辺国への市場拡大も視野に入れ手堅く進めています。欧州での販売においては、欧州最大市場のドイツでは BYDを筆頭に中国勢は日本勢を追い上げており、イギリスでは販売トップ10に中国勢2社が食い込むまでになっています。

中国には日本の約1.7倍の10万社以上の部品メーカーがあり、日本の約2.6倍の 95兆円規模の自動車部品市場を形成しています。中国のサプライチェーンはOEM から分社した組織と独立系のふたつのビジネスモデルが競い合うことで、世界最強ともいわれる競争力を生み出しています。中国OEMからの部品部門の分社化の最大の狙いは外販を通じて大量の部品をつくり、スケールメリットを活かして部品コストを下げ、自社車両のコスト削減を図ることにあります。

(これは動画ではカバーしていない番外のコメントになりますが)2024年以降EVが着実に増え始めている欧州市場(下図参照)において、本格的な攻勢をかけ始めた中国勢に対して日本勢はどこまで競えるのか、日本勢の戦略が試される時が近づいています。続々と発表される日本勢のEV販売計画縮小の報道に、日本の自動車メーカーは本当に世界の流れを正しく把握しているのだろうかと不安になります。取り越し苦労で終わればいいのですが・・・。

資料PDFは上記をクリック
動画(YouTube)は上記をクリック

2026.5.30 山崎 雅史


以 上(横山英樹)

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