| 日 時 | 2026年6月18日(木)14:00~16:00 |
| テーマ | 「社外役員のガバナンス機能向上に向けて ~取締役会運営と有事の危機管理を含めて」 |
| 講 師 | 竹内 朗 氏(プロアクト法律事務所 弁護士・公認不正検査士) |
| 場 所 | スタジオ751+Zoom |
| 参 加 | 34名(後日視聴した者を含む) |

講演概要
竹内氏は、昨今の株主総会における株主やアクティビスト等からの厳しい指摘や、ガバナンスコード改訂の動向を踏まえ、社外役員が「形式」ではなく「実質」的な機能を果たすための実務の要点を、第三者委員会等の豊富な不正調査や社外役員としての実務経験をもとに解説されました。
(1)取締役会が責任ある経営判断のプロセスを踏むことの必要性
• 取締役会の最重要機能: 周到なリスクテイクを行い、事業のサステナビリティ(持続可能性)を確保すること。
• 経営判断原則による免責:
①判断プロセス、
②判断内容の2点が不合理でなければ、損失が生じても損害賠償責任は問われない。
• 資料と議事録の重要性: リスクを多面的に抽出し、低減策を講じた上で、なお残るリスクを受容した形跡を議事録に明記する。
• 専門家意見の聴取: 所与の結論へ導くのではなく、「最悪の情報(最も痛いところ)」を共有して意見を聴取する(ダスキン事件判例)。
• 事務局(コーポレートセクレタリー)の強化: 経営判断原則を実践させて会社と役員を守るため、法務の素養がある人材の配置や適切な情報提供を担わせる。
(2)平時からの備え(内部統制と発見統制の有効性検証)
• 発見統制へのシフト: 不祥事の完全防止は不可能なため、早期発見を最大の予防策とする。
• エスカレーションの複線化: 職制上のレポートラインがメインラインであり、この目詰まりを防ぐため内部通報等のバイパスを機能させ、経営層は「バッドニュース・ファースト」を励行する。
• KPI管理: 「不正開始」「上長認知」「経営層認知」「是正完了」の4つの日付を管理し、期間短縮をKPIとする。
• 議論のあるべき姿: 取締役会は現場リスク(過去)ではなく、外部環境の変化を踏まえた「将来の経営リスク」の議論にシフトすべき。
(3)有事における取締役会の適正な対応
• 迅速な有事対応: 執行トップによる公表や出荷停止の遅れは、善管注意義務違反に問われる(社外役員は「知らなかった」では経営責任を免責されない)。
• 事実調査の3要素: 独立役員主導のもと、
①範囲(網羅性・組織性)、
②体制(独立性・第三者委員会の活用)、
③環境(デジタル証拠保全)を整えて精度の高い調査を行う。
• 対外公表の原則: 正確性を理由に遅れるのは隠蔽を疑われるため不可。正確性よりも「迅速な第一報」を最優先する。
• リスクの大局観: 目先の訴訟に勝つこと(局地戦)に囚われず、会社全体のリスク管理を見据えた大局的な判断を行う。
投資家の視点: パッシブ投資家(売却できない株主)は有事における社外役員の貢献度を厳しく見ており、機能しなければ再任に反対する
質疑応答・フリーディスカッション
| Q1 | 月1回の役員会と直前の説明だけでは、能動的な情報取得に限界がある。どう工夫すべきか? |
| A1 | 常勤監査役等と日常的に接して現場の生きた情報を得ること。また、法務・コンプラ部門とインフォーマルな対話の場を設け、本音を引き出す。会社行事や合宿にも参加し、社風を肌で感じることが実務において重要である。 |
| Q2 | インフォーマルな対話に時間を割くと、兼務できる社外役員の社数が限られるのでは? |
| A2 | その通りで、実質的な機能を発揮するには3〜4社(理想は2社程度)が限界。ただし、複数社を兼務することで「他社の優良事例の紹介」や「業界の大局観の獲得」ができるメリットもあるため、バランスが重要。 |
| Q3 | 製造業のリスクマネジメントにおいて、金融機関のような精緻なリスクマッピングは定着しているか? |
| A3 | 製造業は金融機関に比べ、ツールや専門人材が不足している。 内部監査部門を幹部候補のローテーション(1線・2線との行き来)に組み込み、現場(1線)自身がリスクオーナーシップを持つ「3ラインモデル」の導入を進めるべき。 |
以 上(深井淳)