理科実験と私

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8月1日(No.442)
加藤信子

理科実験グループは、「子どもたちに理科を好きになってもらいたい」「大きくなって科学技術の分野で羽ばたいてもらいたい」を目標に、2010年3月に16名で発足し、今年15周年を迎えました。生活に密着した現象やものを取り上げて独自のテーマを開発し、全体を説明し進行する大先生と、3~5人からなる班を担当して、実験を指導する小先生数人が一組になって出かけていくという授業形態が特徴です。現在は27のテーマがあり、年間180件余りの出前授業を実施しています。

私が理科実験グループに入ったのは2015年10月で、私にとっても理科実験グループでの活動が10周年という節目を迎えたことになります。

私の化学との出会いは、小学校の理科の実験でのリトマスの色の変化にあります。朝顔の花の汁でも同じように酸性とアルカリ性で色が変わるのは驚きでした。ところが高校生の頃になると公害問題が声高く叫ばれており、化学を悪の元凶のように思う友人もありました。それでも化学への熱はさめず、化学が引きおこした問題を解決するのは化学の力しかないと考えて化学を進路に選んだのですが、その思いは今でも変わりません。ただ、進路に化学を志望したものの、理系科目の中で私が好きなのは化学だけで、数学も物理も大嫌い、成績もどちらかといえば、文系のほうがよく、進路指導では、本当に理系に進むのかと念を押されました。それでも「好きこそものの上手なれ」という言葉を頼りに、第一人者になることは無理でも、自分の好きなことをやろうと、化学に進みました。

以前のメンバーズエッセイ(No.242)にも書きましたが、私は街、風景、建築、絵画等なんでも見るのが好きで、仕事もありがたいことに「見る」こと~分析~から始まりました。「見えているものしか見ることができない」という「見ること」の限界を感じることも多かったのですが、何かが新しく見えた時の感動は大きいものでした。化合物の構造が決まったり、現象が解明できたりした瞬間には、些細なことでも、一人、大きな喜びに浸ったものです。
男女共同参画の機運が高まるつれ、色々な機会を与えられ、専門の分析以外の分野も担当するようになりました。管理職としての仕事や学会活動など社外活動の場も増えてきましたが、生来の好奇心と楽天的な性格が幸いしたのか、化学から科学へと興味が広がり、さらには技術と社会の関わりへと考え方が広がったように思います。化学をきっかけとして世界が広がりました。

退職を前にしてセカンドライフを考え始めた時、私が感じた理科の感動を子供たちにも伝えたいと思いました。具体的にはどうしたものかと思案していたところ、高分子学会の集まりでDF会員の浅野応孝さんから、子供たちへの理科の出前授業のボランティアをしておられることを聞きました。学会活動のご縁で思わぬところで、探していた機会に出会うことができ、退職を期にディレクトフォースに入会し、同時に理科実験グループに参加しました。

理科実験グループの活動の中で、最も楽しいのは、何と言っても子供たちとの実験です。色が変わった瞬間に歓声があがると、私がリトマスの色の変化に感激したときを思い出します。自分が子どもに教えることが好きだという新発見もありました。
理科実験グループの活動のもう一つの柱、テーマの開発も楽しみの一つです。一つのテーマが出来上がるまでには、少人数で、コンセプトやストーリーを考え、実験の内容、説明資料、話し方と大いに議論し、一通り出来上がったところで、全体会議でメンバーが生徒役になって模擬授業を行います。ここでまたいくつもダメ出しがあって、テーマの完成度が上がっていきます。私も「デンプンを探そう」という分析化学のテーマを提案し、22番目のテーマとして登録されました。他のメンバーにはこだわりが強すぎると苦笑されますが、物作りには作る技術だけだはなく、分析も大切な分野だということを伝えたいと頑張っています。
他にも、小学校の理科でも分かっていたようで実は本質までは分かっていなかったことを認識させられたり、また、自分たちが小学生のころからの科学の進歩を再認識させられたり、楽しみは尽きません。

リトマスの色の変化に興味を持って以来、好きな道を歩むことができ、退職後もまた新しい機会に巡り合えた幸せを改めて感じます。化学に大きな足跡を残すことはできませんでしたが、一人の少女が理科の面白さを感じ、好きな道を歩み、小さな志をもって生きてきたことが、少しでも次の時代につながればと願っています。理科離れと言われますが、本当は、子供たちは「りかじっけん」が大好きです。現代文明が直面している様々な課題の解決を彼らに託したいと思います。
皆様も理科実験を一緒に楽しみませんか?参加をお待ちしています。


かとう のぶこ(1103)
(理科実験グループ、技術部会)
(元ブリヂストン)

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