「社会に出たら理科は不要」5割弱
~日本の高校生意識調査~

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8月16日(No.443)
神永剛

何とも刺激的なタイトルですが、文科省傘下の機関が行った調査を報じるニュースの実際の見出しです(*1)。
その調査とは、高校生の科学に対する意識や学習状況を把握し、科学教育の向上のための基礎資料を得ることを目的とし、2024年から2025年にかけて国立青少年教育振興機構が行ったもので、同時期米国、中国、韓国で実施された調査と比較、考察しています。(*2)(*3)

この調査報道は「子供たちに理科を好きになってもらいたい」を合言葉に活動を続けてきて、それなりの手ごたえを感じてきた理科実験グループの一員としてはショッキングなものでした。かなり大部の報告ですが、その一端を見てみたいと思います。

図1
図2

図1は全述の報道のポイントであり、私も一番気になったところです。「社会に出たら理科は必要なくなる」と考える高校生が5割近くいて、調査した国の中では最高というのはまさに驚きです。私たちの身の回りの物や事象は理科(科学)を通してみるとその仕組みがよく理解でき、次のレベルの理解に進む基礎になるにもかかわらず、「理科は必要ない」と考える高校生が半数近く、しかも調査4か国中最大なのは驚きであり、残念でもあります。この結果は、図2の「学んだ科学技術を普段の生活に活かすことができる」と考える日本の高校生が半数を切り、調査4か国中最低なことと呼応しています。すなわち理科・科学が身の回りのことと切り離されてとらえられているのではないでしょうか。

図3
図4

高校生がどのような「科学についての学習活動を希望しているか」の分野での二つの質問に対する答えを見てみましょう。図3では「教科書に沿った勉強を希望している」日本の高校生の割合が中国と並んで高い一方、図4に見られるように、「自分たちで課題を設定し、情報集をして、整理・分析・まとめをしたい」と考える高校生の割合が韓国と並んで中国・米国の半分以下となっています。
「子どもたちに理科を好きになってほしい」をモットーに15年にわたって小学校を中心に行ってきた理科実験教室で、科学に魅せられた子供たちの輝く顔を見て感じてきた大きな手ごたえと、これらの調査の大きなギャップは何なのでしょうか?

ここからは私見ですが、子供たちは小学校のうちは身の回りのことがどう、なぜ起こっているのかに自然に興味を持ち、その仕組みが理解できると満足し、さらに深い仕組みを理解することに興味を持っていきます。しかしながら、中学、高校と進む中で理科の勉強が身の回りのことと切り離された、勉強のための勉強、受験のための勉強になってきて、小さいころに持っていた理科への興味が「すり減って」しまうのではないかと思います。

「理科を好きになってもらいたい」ということは、子供たち全員が理科系に進んでほしいということではなく、理科・科学を通して身の回りのことを理解し、合理的判断をできるようになってもらいたいということです。もちろん、理科系に進んで技術立国日本を支える人たちになってもらえればそれに勝る喜びはありません。

従いまして、私たちだけで受験制度や社会の仕組みを変えることは難しいですが、中学、高校と進学し受験のための理科・科学の勉強をしなければならない中でも「すり減らない」強い理科への興味を育てるべく理科実験活動を続けたいと思っています。

参考資料

  1. https://news.jp/i/1313440603951317216 他
  2. https://www.niye.go.jp/wp-content/uploads/2025/07/kagaku_zentai.pdf
  3. https://www.niye.go.jp/wp-content/uploads/2025/07/kagaku_gaiyou.pdf
カメラのクラブを主宰する筆者が
カナダユーコン準州Klaune湖で撮影したオーロラ
理科実験Gでは「磁石」のテーマで子どもたちに地球には
空気と磁場があるのでオーロラができることを伝えています

以 上


かみなが たかし(914)
(理科実験グループ)
(元・ダウ・ケミカル日本)

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