| 日 時 | 11月7日(金)15:00~17:00 |
| テーマ | 「シニア就労を取り巻く現状と課題」最近の年金制度改革や高齢者就労の問題点等について |
| 講演者 | 八代尚宏氏(昭和女子大学現代ビジネス研究所特命教授) |
| 会 場 | 航空会館501会議室 |
| 参 加 |
「超高齢社会対応は年齢不問のAGE-FREE社会で」と強調
人生100年時代と言われる時代状況のもと、高齢社会に「超」がつく超高齢社会時代となったのは、皆さん、ご存じのとおりです。高齢者の中には、今の年金主体の生活では物価高に対応しきれないと、パートタイム労働で必死に働く人たち、また、生きがい就労という形で仕事を楽しむ人たちなど、いろいろな方々がおられますが、それらシニア就労の現場では、さまざまな課題が山積している、と言われています。
オンライン視聴を含め40人強のDFメンバーが参加
そこで、ディレクトフォース(DF)の超高齢社会問題研究会と知楽会との合同主催という形で、11月7日に、シニア就労問題などの専門家である昭和女子大学現代ビジネス研究所特命教授の八代宏尚先生をお招きし、東京新橋の航空会館で「シニア就労を取り巻く現状と課題」というテーマで、お話をうかがいました。当日は、オンライン参加の皆さんを含め40人強の方々が参加されました。
八代先生のこれまでの取組みをご紹介します。もともとは旧経済企画庁(現内閣府)で仕事をされていた官庁エコノミストです。米国メリーランド大学で経済学博士号を取得後、OECD(海外経済協力開発機構)にも出向されたりしましたが、ベースは日本国内で、上智大学国際研究所教授、日本経済研究センター理事長、国際基督教大学教授、昭和女子大学副学長を経て、現在に至っておられます。
この間、政府の経済財政諮問会議や規制改革会議、男女共同参画会議で委員として、政策サポートにもかかわられ、経済問題を中心にした政策問題スペシャリストです。



「高齢者が年齢に関係なく働き続けられる労働市場の改革を」
私たちDFにとって関心事の超高齢社会対応について、八代先生は「高齢者の高齢化が進んできており、それに対応する新たな社会システムづくりが必要になる」と述べられました。
その1つとして、八代先生は、米国などで定着しているAGE-FREE社会、つまり年齢不問、年齢にこだわらない社会をめざすべきであること、それに伴い高齢者が年齢に関係なく働き続けられる労働市場づくりに向けた改革が重要になる、と指摘されました。
八代先生によると、日本では、高齢労働者ができるだけ働き続けられるようにするため、政府から企業側に対して過去、何度も働きかけが行われたこと。その結果、1980年に、企業側の努力義務という形で55歳定年を60歳までに引き上げることが打ち出され、結果的に18年後の1998年に60歳定年の義務化が定着、その後、65歳までの雇用義務化が2006年に、また70歳までの継続雇用の努力義務化が2020年に実現した。ただ、高齢者雇用の制度化に関しては、かなりの時間を要したのは事実、との説明でした。
定年退職制禁止や平均寿命に比例の年金支給開始引き上げ提案
講演の中で、八代先生は、AGE-FREE社会形成の必要性を力説されました。具体的には定年退職制度の禁止と解雇の金銭解決ルールの設定、年功序列での昇進・賃金設定から職種別のフラット賃金への切り替え、年金支給開始年齢を平均寿命に比例した引き上げ、高齢者が働くと給付を引き下げる在職老齢年金の廃止などが重要、と提案されました。
とくに、定年退職制度について、八代先生は「定年制という名のもとに、働く意欲のある高齢者を解雇するのは問題」、「一種の年齢差別だ」と問題提起されると同時に、高齢者が働き続けられる労働市場への改革が今後、ますます必要になる、と強調されました。
八代先生はこのほか、欧米諸国では同一労働・同一賃金の考え方をベースに、年齢で差別する考えをとらず、管理職ポストについても、「職種」にふさわしい人材配置などを大胆に行い人材の流動化を目指している。それに対し日本では年功賃金のために高年齢者ほど高コストになっていることなど課題が多い、と述べられました。
「政府の年金財政は問題点多く、主要課題が先送り」と批判
今回の講演で問題提起されたもう1つの重要ポイントは年金制度にからむものでした。八代先生は、直近2024年の年金財政検証問題にスポットを当てられ、「率直に言って、政府の年金財政には問題点が多い。というのも、前提となる年金の将来推計に際して、出生率や就業率の推計値自体に過大な見積もりがあり、結果的に、極めて楽観的な見通しになっているためだ」と批判されました。
それに関連して、八代先生は、年金制度の抜本改革が先送りされていることも問題だ、と政府の年金財政を問題視されました。とくに、長寿化に対応した年金の支給開始年齢の引き上げといった問題、さらに共働き家族の増加に見合って国民年金の第3号被保険者(主に会社員のご主人などに扶養されている専業主婦)の廃止問題は、超高齢社会時代を乗り切るのに必死の高齢者世帯にとっては、死活的な問題だ。政府は、年金制度の抜本改革を先送りして、小手先で問題対応しようとしている、と述べられました。
「AGE FREE社会での就業はいつまで可能か」など活発な質疑
講演後の質疑では、DFメンバーから、いろいろな質問が出て、いい意味での議論交流となりました。
これらの質問の中で、興味深かったのは、仮に日本でAGE-FREE社会が実現した場合、高齢者就業はいつぐらいまで可能か、という質問でした。八代先生は、この点に関して、「年齢不問の社会では就業年齢に制限を設けないので、あとは就労する方々ご自身の判断だ。大事なことは、世界の潮流が、就業年齢に関して、働きたい人間を差別しない点にあることだ。定年制を設けているのは日本と韓国ぐらいでないか」と述べられました。
また、高齢者就業にからむ質疑の中で、八代先生は、「高齢者の高齢化が進み、超高齢社会時代にどう対応するか、日本は大きな課題を抱えているのは間違いない。しかし、今後の日本のことを考えた場合、もっと無視できないのは、少子化による人口減少の問題だ」と述べられました。確かに、日本は、超高齢社会時代に目が向きがちですが、人口の少子化問題に、もっと問題意識を持つことは重要であること間違いなし、です。
以 上(牧野義司)