| 日 時 | 2025年3月18日(火)14:00~16:00 |
| 場 所 | スタジオ751+Zoom |
| テーマ | 経営幹部がおさえるべきM&Aの最新動向 |
| 講 師 | (株)日本M&Aセンター 上席執行役員 雨森良治氏 |
| 聴講者 | 31名 |
講演概要
(1)M&Aのマーケット環境
国内のM&Aマーケットは右肩上がりで伸びており、2024年は4700件に達し、10年前に比べると倍になった。
〇タイプ別
タイプ別には事業承継型、業界再編型、成長戦略型の3タイプに分けられるがそれぞれ増加。特に事業承継型が後継者不在を理由に増加、また成長戦略型も会社の成長を実現させるために共同経営が必要との理由で増えている。売手市場となっており1件の売りに買手が5~6社もある状況。売手企業の経営者の年齢は若年化の傾向にあり50代の人も出てきた。
〇M&A仲介会社
M&Aを仲介するブティックの数はその高い利益率から異業種からの参入も多く、4年で13倍となり2023年は400社になり、2024年は1000社になった模様。
それにつれて品質の低下、不祥事も多くなった。買手企業もルシアン問題にみられるような吸血鬼型も現れてきて、買手企業をよく調べないといけない。
そのため、業界ではM&A支援機関協会を設立し、業界自主規制ルールの制定、品位のある広告・営業、契約事項重要説明、特定事業者リスト(ブラックリスト)の運用などを進めている。仲介大手には日本M&Aセンター(時価総額1,938億円)、M&Aキャピタルパートナーズ(同899億円)、M&A総合研究所(同718億円)、ストライク(同598億円)などがある。
仲介会社はディールプロセスにおけるリスクチェック体制を強化しおり、①反社チェック②譲り受け企業の資力チェック③スキームの妥当性の確認などの視点を重視し、しっかり審査している。
〇経営幹部として注力するポイント
①情報を収集する
②業者を選別する
③案件を選別する
④専門家を揃える
(2)同意なき買収について
経済産業省は2023年8月に「企業買収における行動指針」を発出した。
その中で、取締役・取締役会の行動規範として
①取締役会への報告
②真摯な買収提案の該当性の検討
③企業価値の向上と株主利益確保の観点での合理的判断が求められている
④判断の合理性について説明責任を果たせるよう行動すること
が求められているとしている。
事例①
ニデックが牧野フライス製作所に敵対的TOB
事例②
カナダのアリマンタション・クシュタールがセブン&アイホールディングスにTOB
伊藤忠がMBOを提案したが頓挫
事例③
第一生命ホールディングスがベネフィット・ワンをエムスリーとのTOB 争奪戦を制して完全子会社化
(3)上場廃止企業の増加、ファンドが後押し
2024年の上場廃止は最多の94社に上った。大正製薬ホールディングス、スノーピーク、東邦金属、ローソン、永谷園ホールディングス、日本KFCホールディングスなど。
上場廃止の主な理由は
①上場維持コストの増加
②アクティビストの存在
③世界的な資金動向などがある。
廃止には内外の投資ファンドが資金を投入している。
国内の投資ファンド(PE)は乱立気味で独立系、商社系、事業会社系、半官半民、DC特化、外資系、金融機関系、地域特化など多数。
そうした中で、東京プロマーケット(TPM)が中堅中小企業向けの市場としてプロの投資家に注目されている。現在136社が上場。監査期間は1期分でOK、上場準備期間は約2年~2年半で上場可能で短いなどメリットあり。
(4)PMI について
PMIは成約後に必ずあるものであり、M&Aの後工程。スムーズなスタートのために、その後のプロセスを見据えた準備をしておく必要がある。
会計領域では
①業務引継ぎ支援
②管理会計の導入
③単体決算の早期化
④連結決算体制の整備
⑤内部統制の整備が必要である。
ビジネス領域では
①経営ビジョンの共有
②業務フロー分析
③組織分析
④コミュニケーション支援
⑤人材育成が必要である。
そして、総合的に
①100日プランの策定
②成長戦略の立案
③事業計画の策定
④KPIの設計
⑤経営管理資料の作成などが必要。
M&Aの目的は両社がともに成長すること。自然体のままでシナジー効果を享受するのは難しく早くシナジーを創出して両社がともに成長を実現することが求められる。
成約前からゴールを明確にしたうえで、PMI に向けた準備をしておかないと失敗する可能性が高くなる。
M&Aが失敗した要因として買手側からは
①相手先の経営・組織体制が脆弱だった
②相乗効果が出なかった
③相手先の従業員に不満など
があげられている。
失敗するPMIは
①自社の当たり前を強要する
②気遣いという名の放任
・・方針や要望の未発信/遠慮
・・事業に対する理解不足
・・放置というマネジメントの放棄
③投資回収への焦り
④経営人材の不足
・・新社長候補がいない
・・PMIの実務担当者を確保できない
などがある。
しかし、買手が、いきなりコスト削減や過度なマネジメント体制構築などに着手してしまうと、売手は裏切られたと感じやすい。細かなテクニック等は資料参照。
(5) Q&A
| Q1 | 仲介会社は売手、買手の両方のサイドに立ち、民法で禁止されている双方代理にあたるのではないか? |
| A1 | 双方代理に当たらない。(企業の売買の契約を媒介する行為は不動産の媒介と同じように代理行為ではないとされているので、双方の当事者から同一人が媒介の依頼を受けても双方代理とはならない) |
| Q2 | TPOに上場してから、グロース、スタンダード市場の企業を買うことができるか? |
| A2 | TPO上場企業がグロース、スタンダード市場にステップアップして買うもよし、そのままTPOに留まり売るもよし。 |
| Q3 | 従業員による買収(Employee Buyout=EBO)もあり得るか? また多数株主が買収に賛成しても、少数の反対株主はどうなるのか? |
| A3 | EBOもあり得る。少数株主にも大体は納得してもらえるが、買収で残った少数株主の株式を買手が強制的に買い取るスクイーズアウト(Squeeze Out)の方法もある。 |
| Q4 | 日本政策投資銀行がPEファンドに入っているが公的機関がそんなことができるのか? |
| A4 | できる。 (ウエブを見ると、日本政策投資銀行は他の金融機関や事業会社と協働で協働ファンドを組成し、エクイティやメザニン等のリスクマネーを供給できる。災害復興、成長支援、観光活性化、事業承継等の分野) |
| Q5 | 中堅中小企業がPMI において、相手先をマネジメントする場合、経営人材が十分にいるとは思われないケースがある。買っても放任せざるを得ないようでは買収しないほうが良いのではないか? |
| A5 | その通り。買う前に派遣すべき経営人材を確保、育成しておくべきである。 |
以 上(越後屋秀博)