第20クール企業ガバナンス部会
第8回(4月度)月例セミナー講演要旨

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日 時2025年4月25日(金)14:00~16:10
場 所スタジオ751+Zoom
テーマ日本企業のガバナンスと監査役等の関係
講 師元三井物産副社長CFO、元常勤監査役、元日本監査役協会会長 岡田譲治氏
聴講者41名

講演概要

監査役には責任ある仕事を気概をもって成し遂げることを誇りに思う心構えや、大きな火事にならない様ボヤの内にリスクを見つけ警告する姿勢が求められるという思いから、 「監査役の矜持~曲突徙薪に恩沢なく~」(同文館出版)を2023年に上梓した。本日はその話をしたい。

  1. 我が国では商法改正により監査役の権限拡大や任期の延長が度々行われ、1993年には議決権がなく経営から独立しているマネジメントモデルとして「監査役会設置会社」が大会社に導入された。

    監査役は選任の同意権があり、常勤監査役が必置である。その後不祥事の多発により「指名委員会等設置会社」が2002年に導入された。社外取締役が過半数の指名・報酬・監査の3委員会が大きな権限を持ち、米国型の執行と監督を分離するモニタリングモデルで、大規模な大手上場企業に採用されたが広く普及しなかった。

    監査委員には選解任に対する同意権なく、常勤の義務もない。2014年に上記の中間形態として経営と執行の分離なくマネジメントモデルのまま移行可能な「監査等委員会設置会社」が導入され、社外監査役が社外取締役に横滑り可能で使い勝手の良い形態として導入が進み、社外取締役の増加に繋がった。

    監査等委員の選任解任に同意権あるが、常勤監査等委員を置く義務はない。上記の通り、3つのガバナンス制度の内容は夫々微妙に異なる。
  2. 「指名委員会等設置会社」を導入した上場会社で東芝で大規模な不祥事が発生した。取締役の一部しか参加していない指名委員会が社長の選解任を取締役会を経ずに決定し株主総会に提案出来るという点で指名委員会の暴走リスクがあり、又監査委員に同意権がなく指名委員会が監査委員を勝手に解任出来るという問題もあり、同制度がスタートして約20年が経過した現在制度の見直しが法務省等で行われつつある。
  1. ガバナンス制度の見直しと監査役等の権限強化に拘らず、オリンパス、東芝、スルガ銀行、関西電力、日産自動車、小林製薬等で不祥事は頻発している。

    不正に関った責任者が昇格し監査役等に就任するケース、兆候を知らされても事実を知ろうとしない監査役等、問題を知った時点で取締役会に報告する行動を起こさなかった監査役等に夫々問題の根源があり、社内の上がりのポストとして監査役が選任されて来た従来の慣行から脱皮し、監査役等候補者の選任は監査役会等の責任において行う様な制度の見直しと改善が必要な状況にある。
  2. 「監査役会設置会社」の監査役は独任制(単独で監査権限を行使可能)で、常勤監査役は社内の情報に通じ取締役会や社外役員に報告し易い立場におり、実効性のある監査が本来期待出来る。然し、関西電力や小林製薬では情報を入手した常勤監査役は取締役会に報告していなかったという問題がある。
  3. 不祥事の頻発は監査役等の制度の欠陥というよりも、監査役等の選任システムに問題があるのではないか。

    会社法上監査役には同意権や提案権はあるものの、監査される立場の(かつての上司である)会長・社長から選任されることによる弊害から、監査役の独任制を担保するだけの選任システムになっていない点や、矜持やインテグリティを持ち社長に物申す人物が選任されず、温情人事による上がりのポストになり勝ちという問題がある。

    社内出身の常勤監査役と社長との上下関係や報酬・退任後の処遇等により監査役の指摘が甘くなる可能性もある。
  4. 上記問題の解決策として、リコーでは監査役会が監査役候補をリストアップしCEOと協議、指名委員会と監査役会を経て、取締役会に監査役候補者として提案し株主総会で選任する選任システムのプロセスを策定、有価証券報告書にその詳細を開示している。

    三井物産でも岡田講師のケースでは、候補者の条件を監査役会からCEOに予め提示する様にしていた。
  5. 監査役等候補者の育成に当たっても、冨山和彦氏が金融庁フォローアップ会議で提言した様に、監査役を法務・財経の専門家のゴールであり重要かつ栄光あるポストとしたり、セカンドライン・サードラインの経験者を関係会社の監査役として経験を積ませる等の工夫が求められる。
  1. 最近のガバナンス改革の動きでは、「監査役会設置会社」・「監査等委員会設置会社」・「指名委員会等設置会社」の制度を整理する必要があるとの指摘が出ている。一本化が望ましいという声がある一方、現在の建付けのまま「指名委員会等設置会社」への一本化は難しく、例えば指名委員会を取締役会の諮問機関とする等見直しの上、「監査等委員会設置会社」の機能と統合するのも一案である。

    但し、その対象はプライム上場企業であり、スタンダード等その他の企業は従来型の「監査役会設置会社」が良いと個人的には考えている。
  2. 監査役制度から見たガバナンス改革の一案として、監査委員・監査等委員への常勤の義務付け、「指名委員会等設置会社」に於ける監査委員選解任への監査委員の同意権の必要性、内部監査部門を社長の指揮下に代え監査役等の指揮下に置いたデュアルレポートラインとすること等が挙げられる。
  3. これ迄監査役の権限強化、監査役等の制度の見直しの歴史が続いて来たが、金融庁や東証でのインサイダー取引等深刻な不祥事が相変わらず頻発している。重要なことは監査役等の制度を変えることよりも、先ずは執行側の内部統制体制が確りしていること、監査役等は矜持を以て正々堂々と執行側に物申し、良い意味での緊張関係を構築することが重要と考える。
Q1国内に加え海外やサイバー攻撃対策など監査役等が監査する範囲は広がっていないか?
A1監査役等が全てを監査することは困難だが、オリジナルの証憑を確認することや、内部監査部門との連携やセカンドラインによる各種リスクのチェック体制を確認することが重要。
Q2常勤監査役は社外監査役の情報源になるが、リコーの件について詳しく教えて欲しい。
A2リコーの場合、監査役選任プロセスを作った監査役が執行側と調整の上情報開示、現在もその選任プロセスが続いている。監査役の提案権を上手に行使した好事例である。
Q3ガバナンス改革に於いて監査等委員の独任制は実際に実現しそうか伺いたい。内部監査部門との連携や監査役等との指揮命令のラインがあれば不祥事も予防出来そうだ。
A3監査等委員の独任制の件は、岡田講師が個人的に提唱しており、今後の課題でもある。
Q4監査役の選任に当たっては、候補者自身が矜持をもって監査意見を言える資質を備えていることが重要。監査役等の独任制を勧められる背景について伺いたい。
A4監査役会等では合議が一般的だが、不祥事を見過ごして意見を言わないのでなく、寧ろ必要なら声を挙げることが可能な心の拠り所として、重要な制度と考えて提唱しているもの。
Q5常勤社外監査役等と常勤社内監査役等についてどう考えたら良いか。社内出身だとオーナー社長に物を申し難いが、社外の自分は最悪首になる覚悟で物を言った経験がある。
A5常勤社外の方が忖度なく発言出来るので、常勤社外監査役等の方が良いと私も思う。
Q6IPOを目指す中小企業では自律的経営の観点で内部監査部門は社長直下で良いと考えているが如何。デュアルレポートラインがベストだが、監査役等の下だけに置くことには反対。
A6内部監査部門を監査役等の指揮下だけに置くのは無理としても、内部監査部長の人事や評価について牽制出来る関係にしておくことが望ましい。
Q7内部監査部門のレポーティングラインに関しガイドライン又はソフトローがあっても良いと思う。
A7ガイドライン等はあった方が良いが、法制化を余り強く言うと企業側の反発もある。

講演終了後、場所を変えて講師と参加者が懇談した。 

以 上(國安幹明)    

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