8月末、三菱商事は2021年12月に落札した千葉県と秋田県の合計3か所の洋上風力発電事業から撤退することを表明した。三菱商事グループの落札価格は、石炭・天然ガス火力に対して競争力のある価格であり、洋上風力主力電源化への第一歩を記したが、今回の撤退表明はその期待を打ち砕く衝撃的な出来事であった。三菱商事の社長は、「落札以降、世界的なインフレや風車メーカーによる値上げなどが重なり、建設費用は当初見込み額の2倍以上の水準となった。そのため採算が取れなくなり撤退の判断に至った。」と述べた。
国内洋上風力発電事業に係る事業性再評価の結果について(三菱商事)
三菱商事グループの秋田県由利本荘沖区域(発電規模模819MW)の応札価格は11.99円/kWhであった。入札評価2番手事業者の応札価格は17円/kWh、3番手の応札価格は24.50円/kWhであった。三菱商事によれば「建設費用が当初見込み額の2倍以上になった」とのことなので、仮に、入札評価2番手、3番手が落札したとしても、事業を完遂できなかった可能性は十分あると考えられる。
日本の洋上風力発電の導入はヨーロッパ諸国に20年以上遅れており、洋上風力産業のサプライチェーンが未発達である。建設費の2割を占めると言われる風車のメーカーは日本には存在せず、基礎のモノパイルも昨年、1か所の製造拠点ができたのみである。世界的なインフレや風車メーカーによる値上げは洋上風力先進国のヨーロッパにおいても問題になっているが、日本の洋上風力産業のサプライチェーンの脆弱性がより大きな打撃となったことは間違いないであろう。
日本には過って風車メーカーが3社あった。その中で最大の三菱重工業は1990〜2000年代に米国の風力ファームに多数の風車を納入し、世界の十指に入る風力タービンメーカーであった。しかし、リーマンショック等の影響で米国市場から撤退し、また、国内需要の低迷もあって、2020年にタービンの製造から撤退した。このようなことを考えると、今般の三菱商事の撤退は単なる企業の経営判断にとどまらず、日本の再生可能エネルギー政策全体の構造的課題を浮き彫りにしていると考えられる。
三菱重工は風車で世界一になれたはずだった:日経ビジネス電子版
2022年1月、英国スコットランドで洋上風力発電の入札(ScotWind leasing round)結果が発表された。区域は全部で17あり、その内6区域は海底着床式(発電規模10 GW)、11区域は浮体式(発電規模15 GW)である。(その後、3件のプロジェクトが追加され、現在、合計20件のプロジェクトが進行中) 日本の洋上風力第1ラウンドと同時期にスタートしたこれらのプロジェクトは総て、順調に開発段階へ移行中のようだ。
スコットランドにおける再エネの今(2)洋上風力を支える港湾インフラ(英国) | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ
洋上風力は脱炭素社会の実現のためにも、エネルギー自給率の向上のためにも重要である。今後どのように政策を修正していくのか、しっかりと見極めていく必要がある。その際、スコットランド沖の入札方式は大いに参考になると思われる。AI(無料)で詳しく調べることができるので、トライしてみては如何でしょうか。

以 上(中西聡)