観光立国研究会
近江八幡市視察報告

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令和5年9月4日~5日の1泊2日の日程で、観光立国研究会の有志10名による近江八幡市視察を実施いたしましたので、その概要をご報告いたします。近江八幡市は近江商人発祥の地であり、また日本の街おこし活動の先駆けとして知られる八幡堀浚渫事業でも著名な地域です。今回の視察は、寺田会員のご尽力により、地元で長年街おこし活動に従事されている有限会社ラビットハウス代表取締役の高木茂子氏にご協力いただき実現いたしました。

 6〜7名乗りの平底舟による約30分間の堀巡りを体験しました。乗降時の揺れにはスリルがありましたが、堀の水質は綺麗で、かつてヘドロで荒廃していた状態からは想像できないほど美しく整備されていました。視察中、短時間台風接近による激しい雨にも見舞われましたが、無事に体験を完了することができました。現在の八幡堀周辺は時代劇の撮影地としても頻繁に利用されており、「鬼平犯科帳」をはじめとする多くのテレビドラマの舞台となっているとのことです。

毎年3月の「左義長まつり」と4月の「八幡まつり」という二大火祭りで全国的に知られる神社です。三祭神の一柱として誉田別命(応神天皇)が祀られており、地域の精神的支柱としての役割を果たしています。

蚊帳・畳表の商いで財を成した西川利右衛門家の旧宅で、近江商人の人材育成にも貢献していた歴史を持ちます。家訓「先義後利栄・好富施其得」からは、商売繁盛と人間形成の両立を重視する近江商人の精神を読み取ることができます。

西川甚五郎本店資料館は西川株式会社の歴史を展示する施設で「布団の西川」の歩みを辿り、萌黄蚊帳の展示に懐かしさを覚える会員もいました。

豊臣秀次による城下町建設の功績と、青年会議所主導による八幡堀浚渫事業の詳細について説明をいただきました。その後の懇親会では、地域活性化に関する活発な議論が展開されました。

特筆すべきは、近江八幡市の観光客動態です。年間644万人の来訪者のうち、ラ・コリーナ近江八幡だけで409万人を集客している一方、宿泊客は10万人程度にとどまっています。この日帰り観光の傾向により、旧市街の多くの飲食店が夜間営業を行わない状況が生まれています。木口会員からは、第二世代交付金等の補助制度を活用したストーリー性のある事業展開により宿泊客増加を図るべきとの提案がなされ、ディレクトフォースとしての支援可能性についても言及いたしました。

台風の影響により、当初予定していた八幡山城跡視察は中止となりましたが、以下の施設を見学いたしました。

館長より近江瓦の歴史と特徴について詳細な説明を受けました。特に印象的だったのは、織田信長と豊臣秀吉の金瓦の比較で、それぞれの性格の違いが瓦の様式にも表れているという興味深い解説でした。

近江八幡市名誉市民第1号である米国人ウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏の功績について学びました。キリスト教伝道師として来日し、教師・事業家として活躍、メンソレータムで有名な近江兄弟社を設立するなど、近江八幡市の教育・産業発展に大きく貢献した人物です。

私は今回初めて近江八幡市を訪問いたしましたが、旧市街が広範囲にわたって重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、碁盤目状の道路配置と相まって歴史の重層性を感じさせる魅力的な街並みが形成されていることを確認できました。特に近江商人の街並みの特徴が色濃く残っている新町通りには、旧西川家をはじめとする見越しの松が植わっている商家が並んでおり一見の価値があります。

街並み以外では特に興味深かったのは、この城下町を築いた豊臣秀次に対する地元の人々の敬愛の念です。一般的な歴史認識では必ずしも高い評価を受けていない秀次ですが、地元では漫画やDVDが制作されるほど愛され続けており、高木氏の「秀次愛」は現代の推し活動にも通じる熱烈さでした。

近江八幡市は合併により安土城跡、八幡山城跡といった貴重な歴史資産を市域に有し、近江商人のふるさととしての伝統を残す旧市街や八幡堀などの優れた観光資源を備えています。しかし、観光的には京都・大阪からのアクセスの良さが逆に宿泊客数の伸び悩みを招いているという皮肉な状況にあります。視察後、宿泊先のホテル内で大型バスの団体と遭遇しましたが、確認するとランチのみの利用で宿泊はなしとのことでした。日帰り中心の実情を象徴する場面でした。

この「交通至便のジレンマ」をいかに克服し、観光客の市内滞在時間を延長するかは、我々地域おこし分科会にとって格好の研究課題といえるでしょう。日帰り観光から滞在型観光への転換を図ることで、地域経済の活性化と持続可能な観光振興の両立が期待できるのではと感じました。

台風の影響で一部予定変更はありましたが、八幡堀や旧市街散策を通じて近江八幡市の魅力を十分に体感することができました。高木氏をはじめとする地元関係者の皆様の熱意ある取り組みに触れ、地域おこしの原点を再確認する貴重な機会となりました。今後、ディレクトフォースの知見を活かした支援の可能性についても検討してまいりたいと思います。

最後に、今回の視察にご協力いただいた寺田会員、高木茂子氏、並びに近江八幡市関係者の皆様に深く感謝申し上げます。

以 上(木口利男)

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