第21クール企業ガバナンス部会
第2回(10月度)月例セミナー

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日時2025年10月27日(月)14:00~16:20
講演日本企業の価値を創造し、日本を元気にする知財・無形資産ガバナンスの実践法
講師一般社団法人 知財・無形資産ガバナンス協会 理事長 菊地修氏
会場DFスタジオ751+Zoom
参加31名(後日視聴者を含む)

1. 知財・無形資産ガバナンス協会の発足と概要

  • 欧米企業は知財・無形資産で企業価値が評価されることで成長し続けているが、日本では、失われた30年で企業価値を示す株価も低迷。研究開発投資や人的資本投資が減少。
  • 知財・無形資産ガバナンス協会(以下、協会)は、「知財で日本を元気に」をビジョンとしている。
  • 協会における知財ガバナンス研究会(以下、研究会)には4つの分科会があり、「人材育成・研修事業」「日本の未来創造PJ」「情報発信・普及啓発」の3つを活動目標としている。

2. 知財・無形資産投資に関するコーポレートガバナンス・コード改訂の経緯

  • 会社を成長させる資産、顧客が商品価値を見出す資産、業務プロセス等を価値化する資産等は知財・無形資産である。これらは特許権などの知財権のみならず、技術、ブランド、デザインなど幅広い概念。
  • サステナビリティ経営における稼ぐ力を発揮するには、知財・無形資産投資と人的資本投資、事業ポートフォリオ再構築で資本回転率向上が重要。これを実践している企業に古河電工などがある。
  • 2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂で、「知的財産」への投資に対する取締役会での監督、情報開示が追記された。これに伴い、知財部門の意識改革(知財・無形資産経営を自ら実行する)が求められる。また、内閣府から2023年3月に知財・無形資産ガバナンスガイドラインver.2.0が公表され、活用戦略の考え方と活動指針が示された。

3. 企業の価値や成長力を高める経営戦略と、その知財・無形資産戦略の実践法

  • 直近の経産省産業構造審議会で「中長期の成長戦略により、成長期待を高め事業ポートフォリオを最適化した上で積極的な成長戦略を実践する経営」が記載された。
  • 菊地氏が在籍していたナブテスコで具体的にどのようなやり方で知財・無形資産投資戦略を経営戦略に実装したのかをいくつかの実例で紹介。具体的には「各事業のコア価値の全社活用」を目的として現在保有しているコア価値を可視化。あるべきコア価値とのギャップを埋めるための各種戦略を策定、また、自動ドア事業におけるコア価値のVRIO分析したこと等。
  • ナブテスコ以外ではキーエンス、電線3社、日立製作所の知財・無形資産経営の実例を紹介

4. 価値創造プロセスにおける知財・無形資産戦略の情報開示の在り方

  • 企業と投資家等の思考構造には複数の観点でギャップが存在し、機関投資家協働対話フォーラムではエンゲージメントアジェンダで適切な企業価値評価のための説明項目を開示している。
  • 投資家が企業への投資判断で知りたいことは「会社の持続的成長の可能性」「企業の差別化要因」の2つに集約され、このためには、自社の成長ストーリーに知財・無形資産戦略をビルドインし、確実に実行して投資家へ発信することが重要。
  • その好事例として、旭化成と明治ホールディングスの開示事例が紹介された。

5. 知財・無形資産経営を実践するガバナンス体制構築の考え方

  • 知財・無形資産ガバナンス体制は、執行部門が知財戦略等の情報を取締役会へ提供。取締役会はそれに基づき長期経営ビジョン策定等行い、投資家へ情報開示し、かつ執行部門の監督を行う。
  • 日本企業での知財ガバナンス執行体制は、
    1. 知財部門が知財戦略委員会を支援し、委員会と取締役会が連携する体制
    2. 知財戦略部門が各事業の戦略を統括する司令塔部門設置
    3. 知財部門が縦割り組織へ指示を出す横断的な浸透の3つに大別される。
  • 実例として明治ホールディングス、ナブテスコ、森永製菓の事例が各々紹介された

6. 今後の企業価値を高める経営の在り方と、知財・無形資産戦略の実践

  • 経済産業省グローバル競争力強化に向けたCX研究会では、「なぜ“技術で勝って、ビジネスで負ける“のか?」ということが議論された。根源的には「現場任せ」「コーポレート不在」にあり、オープン/クローズ戦略等では「誰と組み/組まないか」「何を取り/捨てるか」を全社的戦略として意思決定することが大切である。
Q1投資家の見ている期間と企業の知財・無形資産戦略の期間は異なる。10年先に事業がどのように変化するかわからない。長期まで見通すことが困難な環境では、知財・無形資産戦略のマーケティングとしては、ライセンスアウトして収益化することが重要ではないか?
A1ライセンスアウトでの短期収益化ではなく、知財・無形資産投資戦略では、As-Is、To-Be分析に基づく知財・無形資産での自社の強みを確りと把握し、ビジョン実現に向けた価値創造・事業計画を立てて、投資活用することが最重要である。
Q2今回のセミナーはこれからの話であり、知財・無形資産戦略は稼ぐ力に結び付いていない。内閣府との協議で、来年のコーポレートガバナンス・コード改訂で知財・無形資産戦略の実質化はどういう内容で盛り込まれる見通しなのか(あるいは盛り込みたいのか)?
A2今後、まずは内閣府と協議して、その後金融庁へ働きかけ、来年のフォローアップ会議で詰めていく。2021年改訂では人的資本に加えて知財・無形資産も重要と主張して追記された経緯がある。次回の改訂でも同様で「経営資源配分先に知的財産への投資が重要」という金融庁資料もあり、知財関連でも更に踏み込んだ内容を盛り込まれることを期待している。
Q3知財分野では今は大企業中心で進んでいるが、中小・中堅企業の知財分野もハイライトすべきでは?
A3おっしゃる通り。中小・中堅企業での実行が重要であり、さらに地方公共団体での知財・無形資産戦略活用も重要となる。
Q4 知財・無形資産という言葉で「知財」という名称がつくとどうしても特許権となる。また、検討メンバーも弁理士が多く、過去特許庁が様々な施策を公表してきたが根付いていない。これを考えると、知財という言葉を除いた方が良いのでは?
A4同じ議論は協会でも議論された結果、この「知財・無形資産」と定義した。知的資本というのは投資家が使用する6つの資本の1つとして普及しているが、知的資産を小泉内閣で提唱したが、この名称だと企業内で所管部門が会社内で明確でないので普及しなかった。
Q52021年改訂CGCでは知的財産のみが使用され、無形資産の言葉はない。次回改訂では言葉の見直しも必要では?
A5このようなことも考えているが、企業内部でどこが主体性を持って取組むかは、言葉によって変わる可能性があるため悩ましい。
Q6液晶パネルの日本・韓国等の特許問題、太陽電池でのペロブスカイト問題、NTTのアイオン技術。これらの問題を踏まえた過去、現在、将来の特許戦略の評価は?
A6過去の特許戦略は、他国の参入を十分に防ぐことができなかった面もある。またライセンスアウトの収益も狙っていった場合には、事業自体をとられるリスクもある。
Q7右肩下がりの経済で経産省は大学スタートアップを支援している。大学発スタートアップに協会として関与しているのか?
A7協会では現状は東大との大学発スタートアップ企業の知財戦略について参画している。まずは企業変革から始め、大学の変革を進めていくのはこれからである。 

以上(加藤佳史)

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