| 日時 | 11月13日(木)15:00~16:40 |
| モデレータ | 中西聡会員(900) |
| 話題 | 「アカデミー賞に見る風力発電の変遷」 「ワット・ビット連携による電力システムの改革」 「日本の洋上風力に突き付けられた試練」 生成AIとの対話 |
| 会場 | スタジオ751+Zoom |
本年7月に環境コラム欄を開設したところ、興味深いコラム記事が多数寄せられました。
そして、コラム投稿者と読者の直接的な意見交換によって環境問題の視野を広げたいとの思いから、環境交流会を設定しました。第1回の交流会は11月13日に開催し、4つのコラム記事を取り上げました。
1.「アカデミー賞に見る風力発電の変遷」
最初のコラムは「アカデミー賞に見る風力発電の変遷」。廣島さんから以下の話がありました。「1988年公開の【レインマン】(ダスティン・ホフマンとトム・クルーズがW主演)の冒頭の一場面で、カリフォルニア州パームスプリングスの砂漠地帯に建設された風力発電ファームがスクリーン一杯に映し出され、3000基の出力250kWの風車が扇風機のように勢いよく回っていたのが強く印象に残っている。」これに関し、「1980年代にカリフォルニア州で風力発電ブームが起こり、3カ所に大規模な風力ファームが建設された。パームスプリングスはその内の一つ。」との追加情報が参加者からありました。
「2021年公開の【テネット】(クリストファー・ノーラン監督)では、「ウクライナのテロ事件から逃げてきた主人公が洋上風力発電所に暫く身を隠すシーンがある。このシーンはデンマークのニステッド沖の洋上ウインドファーム(162基の出力2.3MWの風車があり、2003年操業開始)で撮影され、壮大な映像美を作り出している。アカデミー視覚効果賞を受賞したのもうなずける。」。この2つの映画は意図せずとも過去50年間の技術革新による風力タービンの大型化と、ヨーロッパにおける洋上風力発電の発展の歴史を視覚的に示しており、是非見ておきたい映画である。
参加者から次のようなコメントもあった。「クリストファー・ノーラン監督の【インターステラー】という映画も興味深い。映画の舞台は環境破壊と食料不足が深刻化する近未来。巨大な砂嵐が日常的に発生し、農業はトウモロコシ以外ほぼ全滅。元宇宙船のテストパイロットは家族と共にトウモロコシ農場を営んでおり、その農場に風車がチラッと写っている。人口爆発・資源枯渇・環境劣化などの複合要因で、文明が終焉に向かうシナリオが示唆されているようだ。」
2.「ワット・ビット連携による電力システムの改革」
2番目のコラムは「ワット・ビット連携による電力システムの改革」で、石毛さんの話は以下の通り。
「ワットは電力、ビットは情報通信の単位。ワット・ビット連携の本来の目的は、電力と情報通信を結び付け、電力の需給の一致を容易にすることである。これは近年、5GやIOWN (Innovative Optical and Wireless Network)の登場など通信技術の革新があり、電力の需給調整や系統運用をアナログ管理からデジタル管理へ移行することが可能になってきたという背景がある。」
「現在の電力系統は人体で例えるなら、毛細血管側に設置された大量の太陽光発電所や風力発電所から新しい血が流れ込んできている一方、心臓側にある石炭火力・LNG火力・水力・原子力発電所は今までどうり、大量の血を流し続けている形である。これでは人体に必要な量より多くの血液が流れ込み、血管は耐えられず破裂してしまう。」
「ワット・ビット連携は電力の需給調整を効率化し、太陽光や風力のような変動性電源を効率的に電力系統に取り込むことを可能にする。日本は2040年度再エネ比率40~50%の目標を掲げている。目標の達成には従来の供給側の論理だけではなく、需要側の管理が決定的に重要になってきており、ワット・ビット連携は不可欠である。」
「再エネ拡大は重要電力課題の一つだが、現在、生成AIの急速な普及に伴うデータセンター (DC)の電力需要対応が緊急課題となっている。今年3月、総務省・経済産業省合同でワット・ビット連携官民懇談会が開かれたが、地方にDCを分散配置する、地域で発生するデータを地域で処理する地産地消などが議論の主題であった。これでは、ワット・ビット連携懇談会の本来の趣旨から離れていると言わざるをえない。」
「分散型エネルギーリソース(DER)統合プラットホームは、電力需給を情報通信技術でリアルタイムに制御する具体的な実装形態の一つである。この統合プラットホームを早急に作り上げ、全国レベルで管理することが再エネ拡大の第一歩である。EUでも同じような問題意識で取り組みが進んでいる。」
新しい分散型エネルギーシステムの構築は、エネルギーの海外依存からの脱却に繋がる。私たち一人一人がどういう役割を果たせるのか、しっかりと考えて行く必要があると感じさせられました。
3.「日本の洋上風力に突き付けられた試練」
3番目のコラムは「日本の洋上風力に突き付けられた試練」で、中西から以下の話がありました。
「新聞報道では三菱商事はけしからんとの論調が多いが、風力発電所の建設費用が当初見込み額の2倍以上に上昇しており、仮に、入札評価2番手、3番手の事業者(それぞれの応札価格は三菱商事の1.4倍と2倍)が落札したとしても、採算が合わず事業を完遂できなかった可能性は高い。」
「廣島さんの話にあったように、デンマークのニステッド沖の洋上風力発電所は2003年に稼働を開始した。日本は2023年に稼働した秋田港と能代港外に建設された風力発電所が日本初である。デンマークにはVestas社という世界的な風車メーカーが育っている。一方、日本にはかって風車メーカーが3社あったが、国内の風力発電の発展の遅れなどの影響を受け、既に撤退した。風車製造のみならず、風車を設置する海洋構造物の製造・設置等のサプライチェーンの発達も遅れている。世界的なインフレや風車メーカーによる値上げは洋上風力先進国のヨーロッパにおいても問題になっているが、日本の洋上風力発電のサプライチェーンの脆弱性がより大きな打撃となっている。」
「従って、今般の三菱商事の撤退は単なる企業の経営判断にとどまらず、太陽光発電に比べて風力発電の導入が大きく遅れた、日本の再エネ政策全体の構造的課題を浮き彫りにしている。」
「三菱重工業はかって日本にあった風車メーカーの一つ。1990年頃、風力発電ブームにあったカリフォルニア州の風力発電力ファームに多数の風車を納入し、世界の十指に入る風力タービンメーカーであった。」
「三菱重工業が納入した風車は【レインマン】に出てきたパームスプリングスの風力ファームではなく、ロスアンゼルスの北120kmに位置するテハチャピ峠風力ファーム。」とのトリビアな話もありました。
(ロスアンゼルスに遊びに行くことがあれば、これらの風力ファームを訪れるのも一興では。)
4.「残酷暑お見舞い申しあげます」
4番目のコラムは「残酷暑お見舞い申しあげます」。浅井さんの話は次のように始まりました。
「8月5日、群馬県伊勢崎市で41.8℃という国内最高気温が記録された。(桐生では41.2℃)かつて長く40.8℃(1933年、山形)が最高であったものが、(中略)熊谷で41.1℃に達したのが2018年。それが今年は一気に0.7℃も跳ね上がったのだから、もはや【気候カタストロフ】と呼ぶほかない。」
そして話は以下のように続きました。「こんな酷暑の夏は、ふつう思考を鈍らせるものだが、(中略)朝、新聞やテレビを見て心に浮かんだ疑問をAIに問いかけるのを日課にしたのだ。どんな問いにも誠実に応じてくれるその存在は、炎暑にくじけそうな心をかえって刺激し、思索を深める助けとなった。気候変動とAIの登場、両者はまるで、科学技術の果てに現れた奇妙な【シンクロニシティ】のようにも思われる。」
シンクロニシティとは、内的な心理状態/思考と外部の出来事の間に、因果関係では説明できない意味的な繋がりがある現象のことで、心理学者のカール・ユングによって提唱された概念のようだ。
浅井さんは、「気候カタストロフとAIの出現を受け、われわれのこれまでの生き方は根本から変えなければならない。希望に満ちた人間とAIの共生社会を作るために皆さんと一緒に考えていきたい。」と熱心に語られました。その話は大変内容が深く、ここでは到底、書き記せません。
浅井さんはNPOブルーアースのオープンサロンで、「生成AIとの対話;AI時代を日本人はどう生きるべきか?」、「AIと日本の未来」のタイトルで話をされています。関心のある方はそちらを是非、ご覧ください。

第1回環境交流会の参加者は21人、その内、リアル参加者は9人。
参加者は少なめでしたが議論は多面的に発展し、有意義で楽しい交流会になりました。
以 上(環境部会長 中西聡)

