| 日時 | 2025年11月20日(木)14:00~16:00 |
| 講演 | 「優秀な社長の作り方と、そのためのガバナンスの在り方」 |
| 講師 | 三宅四郎氏 株式会社エゴンゼンダー パートナー 経営コンサルタント |
| 会場 | スタジオ751+Zoom |
| 参加 | 34名(後日視聴した者を含む) |
講演概要
1)ガバナンスと企業の成長との関係
- ガバナンスと企業成長に関する最近の論調として、日本企業に於いては外形的にガバナンスを整備するケースが多く、本質的な成長には繋がっていないというガバナンス形骸化論がある。
- ガバナンスは成長の為の必要条件であり十分条件ではないが、最低限の整備は必要。
- 経産省は取締役会の5原則を発表したが、優秀な社長の存在、優れた戦略の策定と変革を含む実行、市場環境を踏まえた忍耐力、チャンスを待てる余力・体力、危機感の存在が重要。
2)企業成長に必要なものは何か?
- 勝てるストーリーが業界や市場環境によっても異なるので、これをやれば成長できるという確実な要素は無いし、それを実行する人(組織ケイパビリティ)がネックになるケースも多い。
- 一方で、成功企業の「勝つストーリー」を分析することには意味がある。成功要因だけでなくそれを可能にしたEnablerは何だったのか、Enablerを作る為にどの様な変革を行ったのか迄を掘り下げて本質を理解することがポイント。直近15年間で時価総額が8倍以上に増加し持続的な成長を遂げている代表的な成長企業として日立、HOYAの2例を挙げ考察したい。
【日立のケース】
- 優秀な社長:確立した社長後継制度を構築し、長期的視野で多様なタイプの社長候補を状況や戦略に応じて選抜・育成。社長に就任してからも成長を継続。
- 明確な戦略:「収益力の強化(時価総額の向上)」を戦略の中心に置き、そのために必要な戦略を、ゼロベースで考えグローバル化、デジタル化、社会イノベーションを全社で実践。
- 大胆な経営判断:儲かっている事業でも、戦略に合わなければ売却、収益や売上が小さくても戦略上意味があれば買収する等「投資家目線」でポートフォリオ再編を果断に実行。
- 取締役会の強化:グローバルCEO経験者等を採用。取締役会やガバナンスの変革を継続実施(回数削減や海外での開催等)。社長の壁打ちや人材育成に取締役会を活用。
【HOYAのケース】
- 優秀な社長:カリスマ創業家社長から現社長への後継を円滑に実行、成長基調を継続。
- 明確な戦略:「大きな魚のいる小さな池を探す戦略」を徹底、自社技術や自社の目利き力が通じる領域を愚直に探し、M&Aを活用しポートフォリオを入れ替える戦略を積極的に実行。戦略を実行するために必要な人材は外部から積極的に登用。
- 強みを磨き続ける文化:徹底的に数字に拘り、予実管理を厳密に行い成果を上げる文化。収益性が高くなる可能性が高い事業を狙い、一旦保有したら徹底的に磨き上げる。
成長企業のガバナンスの共通点
- 成長企業のドライバーの主役は飽く迄執行側、取締役会はアクセル・ブレーキ両面でこれをどう支えるかに徹する。大所高所で執行側と議論し、「壁打ち」の機能が果たせるかが最大の役割(経営への細かい口出しはしない)。特に、戦略が正しいか、戦略を着実に実行しているか、その為のEnableは十分かを重視。社長後継者育成でも社外取締役は貢献。
- 特に優秀な社長(及びそれを支える経営チーム)の存在は成長の為の重要条件。従い、ガバナンスも人材を重視した「優秀な社長作り」に重点を置く。
- 社長後継に社外取締役はメンタリング等で積極的に関与。従い、昨今は社外取締役候補として目利き力のある元社長・会長のニーズが高まっている。
3)優れた社長の作り方
- 選定:社長後継制度を導入候補者プールを設計し、長期的視野で選抜。経営環境や戦略に応じ最適な社長を選ぶ。選定には、指名委員会や外部の視点も導入。
- 評価:パフォーマンスやあるべき姿との比較等の視点で社長の多面的評価を毎年行う。フィードバックも重要。期中の退任は難しく2年目に更新するかどうかの判断に活用。
- 育成:社長は成長機会が大きいポジションであり、コーチングやメンタリングも活用。社外取締役は1on1面談を通じ社長の良き相談役となる。毎年360度調査のフィードバックを実施(評価とセットで)。積極的に社外に出る機会を作り多様な人と会うことで成長。
4)最新の事例
- 経営チームの強化:執行役員の数を減らし経営チームの数を絞る。報告させる存在から相談する相手へ。ダイレクトレポートはCXOと事業部門トップで10人以下とする。
- 外部脳の活用:テクノロジー等専門知見が必要な領域は、外部人材の招聘やコンサルだけでなく、アドバイザリーボードの活用による外部脳(エコシステム)の構築が重要。
- 取締役の構成:社外取締役の選定は、出来るだけ社長も関与させる。長期的な視点で自身が「取締役会をどう使いたいか」を考えさせ、自身のディスカッション・パートナーとして選ばせる。
- 売上数十億円の中小企業に於いても、企業の成長は社長次第という点は大企業と変わらない。
【質疑応答】
| Q1 | 社長後継や育成について社長や人事部に対して社長候補者プールの必要性を社外取締役として訴えても響かないことが多いが、どの様にしてその重要性を認識して貰えば良いか? |
| A1 | 社外取にやれと言われた場合、ファンドに買収され経営チームを強化する場合、社長が変った場合等「変化がある時」に後継者計画を検討する機会がある。不祥事が起きた場合も同様。 |
| Q2 | 社長の任期と後継者育成計画の関係をどう考えればよいか? |
| A2 | 社長の任期は企業によって様々だが、短期で代わるコンティンジェンシーの場合や3年から5年後に代わる場合に備えて次期及び次々期の次世代後継者を育成しておくことが望ましい。 |
| Q3 | 社内人材を新卒から育成する場合とニーズに合わせて外から採る場合があるが、50歳を超えると価値観も変えにくい。経営人材はどの年齢で判断して外から補充するのが良いか。 |
| A3 | 夫々の年齢層や世代で、社内人材と外部採用人材の双方で育成するのが良いと思う。 |
| Q4 | カリスマ経営者の次の社長候補はどう見つけたらよいか。 |
| A4 | 退任するカリスマ経営者が後継者の選任を任せるとした会社の例では、6年後にワンマンでない普通の会社に変革する戦略を立て最初の3年をやれる社長候補者を見つけた例はある。 |
| Q5 | グローバル企業で日本人が社長になるケースや、国内でも転職組が社長になるケースは少ないと思うが何故か。逆に外国人経営者が今まで成功しなかった理由は何故か。 |
| A5 | 転職組が社長になる例はニコンの例があるが、米国でも少ない。社長マイナス1層で入社した外国人が成功する例は増加しよう。グローバル企業の社長が出来る日本人は少ない。 |
| Q6 | CGコードでは経営の監督が元々要請されていたが、今回のお話からは企業の成長を促す為に社長を支援するように変わりつつあるということなのか。 |
| A6 | 中長期や短期双方の株主に取り企業の成長こそ重要だ。新卒か中途採用かには拘わらず、次世代・若手・ハイポテンシャルの各層に育成対象の社長候補者がいることが重要になる。 |
| Q7 | 日立やHOYAでリタイアした方が社外取となるケースが多いが、現役の経営者が他社の社外取になるケース(SWCC長谷川元社長がHOYAの社外取に就任)をどう考えるか。 |
| A7 | 日本ではこれ迄例は少ないが、現役社長が社外取に就任することは望ましいと考える。 |
以 上(國安幹明)