世界初の商業規模CCSは1996年、Statoil(現Equinor)が操業するノルウェーのスライプナーガス田で始まった。天然ガスに含まれるCO2を洋上ガス田施設で分離回収し、地下約800mの地層に年間約100万トンのCO2を、30年間継続して圧入している。2004年、Statoil/BP はアルジェリアのサハラ砂漠のインサラーガス田で同様のCCSを開始した。CO2の挙動モニタリングに加えて、微小な地形変位を検出できる人口衛星搭載合成開口レーダーによる観測も行われた。CO2の地上への漏洩報告はないが、種々のデータの総合的分析の結果、圧入は2011年に停止された。累計圧入量は約380万トンであった。


筆者は1978~2003年、ジャパン石油開発(株)のアブダビでの油田開発事業に携わった。1996~2000年、アブダビ国営石油会社ADNOCと共同で開発している超巨大油田(東西50㎞、南北35㎞)にCO2 EOR (Enhanced Oil Recovery)を適用する研究を行った。水攻法による原油回収率は40%程度だが、CO2の油層への圧入によって回収率は60%程度まで向上する。三菱重工業(株)に委託して、アブダビの発電所から十分な量のCO2が回収できることも確認した。ADNOCからは、「回収率の最大化、環境保全、天然ガスの有効利用を促進する一石三鳥のプロジェクト」と高い評価を得た。この研究は、2014年、本油田の権益延長交渉を纏める上で大きな後押しになった。


上記事例に見られる通り、CCSは油田・ガス田開発の現場で始まったが、今や、脱炭素社会実現の切り札として、CO2を多く排出する工業地帯に適用されるようになってきている。
以 上 中西聡 (900)