| 日時 | 2026年1月26日(月)14:00~16:00 |
| 講演 | 上場企業の実質株主の透明化とその動向 |
| 講師 | 株式会社ICJ フェロー役員 坂東照雄氏 |
| 会場 | スタジオ751+Zoom |
| 参加 | 29名(後日視聴した者を含む) |

講演概要
(1) 実質株主について
- 実質株主とは、株主名簿に載らないものの株主総会で議決権を持つ株主である。機関投資家は運用業務に専念するため、株の保管や管理を「カストディアン」と呼ぶ資産管理銀行に委託する場合があり、その際、実質株主である機関投資家の名前は株主名簿に載らない。
- 名義株主は、会社法上、会社に対して権利を行使できる株主であり資産管理銀行、グローバル・カストディアン、常任代理人等が該当する。実質株主は議決権の行使、配当を受け取る権利などの実質的な権利を持つ内外運用機関である。
(2) 実質株主を把握する手段
- 実質株主を把握する手段は「法令に基づく開示制度(大量保有報告制度)」と「発行会社による独自調査(実質株主判明調査)」がある。実質株主判明調査を実施した一部の発行会社は、調査に要する費用・負担や、把握可能な実質株主の範囲に限界があることを課題として認識している。
- 主要国の実質株主確認制度として、アメリカはSECへの保有明細提出義務化、イギリスは会社法に基づく公開会社による開示請求制度、EUは仲介機関による会社への伝達制度等、対応が様々である。
- EUの制度では、円滑な処理を目的に株主確認プラットフォームが稼働しており、発行会社は請求から最短10営業日後以降に実質株主の回答を受領できる。
(3) 日本の実質株主透明化の動向
- 2023年3月に金融担当大臣による「公開買付制度・大量保有報告制度等のあり方に関する検討」の諮問が出されて以降、複数の研究会での議論を経て2025年6月にスチュワードシップ・コード第三次改訂でソフトローとして実質株主透明化が盛り込まれ、他方で会社法改正ではハードローとして透明化へのスキーム等につき議論がなされている。
(4) 実現に向けた課題と会社実務における影響
- 制度化の実現に向けて「開示(回答)義務を負う対象の整理」「義務違反に対する制裁の整理(過料か議決権停止か)」等、複数の論点が挙げられている。議論の根本では「誰のための制度なのか」を意識したサービスを実現することにある。
- 新制度が導入されても、既存の株主判明調査はなくならない。判明調査の役割は「判明」から、より充実した分析結果と、投資家との対話を促すソリューションに進化することが期待される。
質疑応答
| Q1 | 実質株主確認制度は各国により手法やスキームがバラバラということであるが、グローバルスタンダードはこれからできるのか? |
| A1 | アメリカを含む統一的な動きはないが、EUのSRD2(第2次株主権指令)に準拠した制度的な形は、EU以外のオーストラリア、南アフリカ、シンガポール等で見られており、このあたりのインフラがスタンダードになるものと考えている。 |
| Q2 | アクティビスト等が株式を購入してきた際の、迅速なアラートのようなものがあるのか? |
| A2 | アラートを発する仕組みはないが、欧州では1年間で40回を上回る利用があったケースが報告されている。EUではいつでも確認できる機能がある。また、サービスベンダーでは毎月調査して企業に通知するところもある。 |
| Q3 | 日本がEU制度に準拠するのは時間と費用を節約できる良い制度かと思うが、違反した場合の議決権行使停止と配当停止は、財産権の侵害になるのでは?この辺りのバランスがどのように議論されているのかを知りたい。 |
| A3 | 欧州では各国の制度において過料の金額水準や議決権停止をどのようにするかを決めている。欧州にはGDPRという個人情報保護規制があるが、開示対象の情報として株主所在地、連絡手段等がある。2026年末までにはSRD3の改訂の検討が予定されている。 |
| Q4 | 誰を意識した制度なのかという点が重要とあるが、現状の実質株主判明調査の期間と金額はどの程度なのか? |
| A4 | 3月決算では早い会社ではGW前、遅くなると5月末頃になるのが標準ではないか。コストも相当にバラツキがあり、国内判明調査は1回200万円、海外は1回400万円という相場観であるが、コンペ等で値引きされる事例もある。 |
| Q5 | これらのスキームで東証はどのような役割を担うのか? |
| A5 | 日本取引所グループには、傘下にJPX総研という別会社があり、関わる場面があるとすればJPX総研かICJになろう。現時点では関与の有無を含めて何も決まっていない。 |
以上 加藤佳史 (1411)