環境コラム第24号
「幸せの国ブータン」は世界初のカーボン・ネガティブ国

  • LINEで送る

2025年秋にブータンを旅行し、CO2排出がゼロ以下のCarbon Negativeの国が実際に存在することを初めて知った。AIによると他には南米のスリナムやパナマ等が挙げられる。ブータンは、北側は中国チベット自治区とヒマラヤ山脈、南側はインドの東端に囲まれ、九州とほぼ同じ面積に約80万人が住む小国である。国土の85%は森林地帯、南部は標高1000m程度、北部は4000m以上の山間部となり、平地はほとんどない山岳地帯である。国土の50%が国立公園に指定され、国民はチベット仏教の一派のラマ教を信仰し、厳格な規律習慣に従い伝統的な生活を営んでいる。

「カーボン・ネガティブ国」に共通する条件は、高い森林率(国土の8~9割)と、水・風力・太陽光などの再生エネルギー活用が行われていることの2点である。ブータンの憲法では国土の70%以上の森林保護を定めており、多くの樹木の二酸化炭素吸収量が貢献している。電力は化石燃料に依存せず、豊かな水資源を利用した水力発電で国内の電力需要を賄っている。余った電力は隣国のインドに輸出し、炭素クレジットとして売却して外貨収入を得ている。国内にはビール工場があるだけで、CO2を排出する工場がほとんどないこともその理由である。

ブータンは立憲君主制の王国、細長い渓谷にあるパロ国際空港に降り立つと現在の5代ワンチェック国王一家の壁画が来訪者を温かく迎えてくれる。国王一家自らが地味で質素な生活を重んじており、中道の教え・考え方を世界にPRしている。「幸せの国」と呼ばれる由来は、ブータン政府が導入したGNH(Gross National Happiness国民総幸福量)という制度であり、4つの指標【①経済成長と開発、②文化遺産の保護と伝統文化の継承・振興、③豊かな自然環境保全と持続可能な利用、④良き統治】に基づき、数年ごとに無作為に抽出した国民に148の質問を行い、その結果を数値化して「幸福度」を検証している。

ブータンは立憲君主制の王国、細長い渓谷にあるパロ国際空港に降り立つと現在の5代ワンチェック国王一家の壁画が来訪者を温かく迎えてくれる。国王一家自らが地味で質素な生活を重んじており、中道の教え・考え方を世界にPRしている。「幸せの国」と呼ばれる由来は、ブータン政府が導入したGNH(Gross National Happiness国民総幸福量)という制度であり、4つの指標【①経済成長と開発、②文化遺産の保護と伝統文化の継承・振興、③豊かな自然環境保全と持続可能な利用、④良き統治】に基づき、数年ごとに無作為に抽出した国民に148の質問を行い、その結果を数値化して「幸福度」を検証している。

厳格な仏教国では殺生を禁じており、むやみに生き物を殺してはいけない。そのため、肉や魚はインドから加工されたものを輸入している。町には欧米の有名ブランド店や飲食チェーン等はなく、人々は物質文化に染まっていない。敬虔な仏教徒が多く、大乗利他の精神で他人への思いやりが強く、困っている人達への支援は惜しまない。

現在ブータン王国では国王主導で、インド国境に近いブータン南東部に、自然と文化に根差しつつ成長と革新の新たなマインドフルネス・シティ(GMC: Gelephu Mindfulness City)プロジェクトが進行中である。マスタープランでは、1000km2超(シンガポールと同程度)の敷地に、新国際空港、鉄道網、水力発電ダム、公共スペース、東洋+西洋の医療施設、大学施設と国民総幸福量GNHの原則に基づく9つの領域を建設する。敷地内を流れる35の川と橋で周辺の山や森を取り込み、野生動物の移動ルートを設け、豊かな生物多様性を増幅することを目指している。

設計には仏教の曼荼羅の思想を取り入れ、瞑想スペースや寺院もあり、過去の文化遺産継承と未来への繁栄を目指している。建設費用はマイニングで得た国内準備金のビットコインと、新たな水力発電の余剰電力輸出などから得られる利益等を活用する計画である。新国際空港は2029年頃の完成を予定しているが、全体のプロジェクト実現にはこれから数十年単位の年月が必要と思われる。ブータン国民が求め続ける「幸福」とは、文明社会に生きる我々の観念とは異なる別の次元にあるように感じる。

以 上(山本明男 977)

  • LINEで送る
pagetop