環境交流会は環境コラム欄に投稿されたコラム記事を題材として意見交換を行い、地球環境問題への理解を深めると共に、仲間との交流を深めることを目的としてる。
第2回環境交流会は1月29日に開催され、以下の4つのコラム記事を取り上げた。
(各環境コラムは、タイトルをクリックすると閲覧できます)

1.「クマ出没が映す生態系の乱れと教訓」
最初のコラムは「クマ出没が映す生態系の乱れと教訓」で、鍵和田さんから以下の話があった。
「年末の風物詩、音羽山清水寺の今年の漢字一文字に【熊】が選ばれたほど、昨年はクマが沢山でた。NPOブルーアースで子供向けの環境教育活動をしているが、新たに『クマ除けストラップ~熊と共に生きる』という教材を作った。クマ除け缶(飲料スチール缶の中にボルト等を入れ、缶のタブにゴム紐を付けたもので大きな音がする)と、クマ除け笛(牛乳パックの紙を折って作ったサイコロ型の笛)を工作し、ものつくりを体験する。そして、クマはなぜ人里にでるのか、生態系、地球環境の変化とどう関係しているのか、どうしたらクマと共存できるかを一人一人に考えさせたい。」
クマ除け缶と笛は会場の参加者に回覧され、楽しい手作り教材に皆、感心した様子であった。
「クマが人里に出てくるのは、ドングリ類の不作のため食料不足になっていることが大きい。神奈川県山北町のハンター杉本一(88歳)さんは、親の代から長年、どんぐりを育てて苗木をつくり、山奥に植林している。授業でこの『栽培狩猟』の取り組みを紹介する。」
「熊と共存するためには、① ごみ・食べ物を外に置かない ② 山や里山をきれいにする(熊の隠れ家をつくらない) ③ 登山・キャンプの正しい行動を広める ④ クマを悪者にしない(クマにも生きる権利がある)⑤ クマを知る学習(調べて伝える、ネット発信等)が大事であることを伝えたい。」
上記 ③に関する経験談。「日本100名山の95座に登った。クマに遭遇したことはあるが襲われたことはない。むしろ、クマが逃げていく姿を何度も目撃した。クマは基本的に人を避けるが、予測できない行動をするとパニックを起こし襲う。登山道をテンポよく歩けば、クマは『いつもの通りの登山者だ。危害の恐れはない。』と考える。クマを驚かさないことが大事だ。」
参加者から以下の質問があった。
Q:クマの人里への出没が増えたのは、クマが増えすぎたことが原因ではないか。
A:勿論それはある。保護政策が長く続いた結果、クマが増えすぎた。保護政策を見直す必要がある。
Q:一部のジビエ料理店ではクマを提供しているようだが、緊急銃猟で処分したクマをもっと積極的に食用に回していくことはできないか。
A:北海道ではエゾシカが大量に繁殖し、ジビエとして消費されている。北海道だけでは食べきれないので全国流通を整える動きもある。クマのジビエ料理も将来的にはあり得る。しかし、ハンターが不足している。まず、ハンターを育てるところから始める必要がある。また、クマ肉は他のジビエと比べて、衛生管理が難しく、適切な処理施設をもつ業者を育てる必要がある。これらは政策の問題であり、そう簡単にはいかない。
鍵和田さんは子供向けの環境教育活動に楽しく取り組んでいます。(『夜光ケルン~蓄光と蛍光について学ぶ)』https://www.youtube.com/shorts/l8j0JhFJ9Xs)。『クマ除けストラップ~熊と共に生きる』も楽しい探求型の授業になるでしょう。
2.「熊との共生」
2番目のコラムは「熊との共生」で、赤堀さんから以下の話があった。
「クマは本来、臆病な性格で人を恐れる。人里に現れるのは異常。但し、ヒグマは凶暴性が高く、獲物に対する執着性がある、特に獲物と認識した対象物に対して過度の執着性がある。」
「ヒグマもツキノワグマも雑食性で植物が中心。秋に実る木の実や鮭はクマにとって、1か月以内の一時的な食べ物だと考えている。3mもあるクマザサの中に落ちたドングリを大きな爪で食べるのは難しい。地面に落ちたドングリは1週間も経つと虫食いで食べられなくなる。クマはカニなどの甲殻類、昆虫、鳥、蛇などの爬虫類も食べる。ツキノワグマもヒグマも死肉をあさる動物で、生きた動物を襲うことはほとんどない。」
「クマはこの30年間人間を観察して、安心・安全な動物だと認識している。但し、以下の様な場合は人を襲うことがある。① 山菜採りシーズンに突然出くわした時(見通しが悪い、藪や沢、洞穴)、従ってクマ除け鈴や笛は有効 ② 発砲等により危害を与えた時(手負いのクマは仕返し本能が働き、死んだふりをして、近づいてきたハンターを襲う)③ リュック等を食べ物と認識し、奪おうとした時 (登山にはリュックを2つ持ち、襲われたら1つ置いてくることを勧める) ④ 子連れ、子育て中の場合 (母クマの子クマを守る本能は強く、本気で殺しにかかってくる) ⑤ テリトリー内 ⑥ 獲物と認識(俺のもの)」
上記 ④に関する体験談。「昨年暮れ、大雪山系トムラウシの奥地で単独シカ猟の最中、30m前に突然大きなヒグマが現れた。しかし、地域の生息環境と住民からの得ていた情報があり、驚きはしなかった。子連れではなく親クマ1頭だけだったからである。撃つことも考えたが、大き過ぎて回収が困難なので諦めた。代わりに挨拶をして44秒間、クマをビデオに収めた。しかし、スタートボタンを押し忘れ、写っていなかった。」
赤堀さんは北海道十勝清水町の生まれで、ハンティング経験は36年。クマ問題が大きくなってから、エゾシカを中心に獣害対策で狩猟をされている。凄腕ハンターの赤堀さんも、ビデオ撮影は100発100中とはいかないようだ。
上記 ⑤と⑥について。「クマもテリトリーを持っている。今まで農家のイヌは放し飼いであったが、最近は鎖に繋がれたり、家に中に入れられたりして、犬のテリトリーは狭くなっている。そこで、クマは農家の敷地にある野菜も柿も俺のテリトリーのものと認識し、平気で入ってくる。」
「ヒグマは生息環境(酪農地、畑作地、林業地、観光地、国立公園)の違いによって食性が変わり、習性も異なってくる。函館や釧路根室地域は東京からクマ撃ちが沢山きて発砲が多い。銃弾を体に残しているクマの割合は50%を超えていると思う。これらの地域のクマは凶暴性が高くなり、仕返し本能が強くなっている。一方、十勝のクマは殆ど箱罠でとっており、発砲しても1発で仕留めるので(凄腕ハンター)クマの性格は穏やかである。」
「クマの出没増加の要因は、以下のように考えている。① ヒグマの場合、1990年に『春グマ駆除(冬眠明けのヒグマの捕獲)』が廃止され、生息数が増加 ② 広葉樹林の伐採による本来の山の餌の減少 ③ 過疎化と耕作放棄地の拡大 ④ 農作物、野菜、果樹の未収穫 ⑤ 廃屋が増えクマの棲家が増加 ⑥ 温暖化及び栄養状態の向上による繁殖率の上昇 ⑦ シカの残滓問題(駆除されたシカの多くは現場で埋設され、それをクマが食べる)」
上記 ①に関して。「ヒグマは現在1.2~1.5万頭、ツキノワグマは4~5万頭いると推定されている。いずれも増加傾向にある。ヒグマの場合、春グマ駆除が行われていた時期の生息数は、4~7千頭と推計されている。廃止後、生息数は大きく増加している。
読売新聞オンライン
「春グマ駆除」廃止でヒグマ増…20年度は農業被害2・5億円、死傷者も
「クマの捕獲数も増加傾向にある。2019年:北海道750頭、本州5300頭、2025年(~10月):北海道1400頭、本州8800頭。クマとの共存のためには生息数の管理が必要であり、ヒグマの適正数は5~6千頭、ツキノワグマは12千頭と考えている。」
最後に狩猟経験を通して伝えたいこととして以下が挙げられた。
〇 日本における野生鳥獣の環境(世界的に見て良い)
〇 野生鳥獣による被害の実情(被害甚大)
〇 国や自治体の対策の曖昧さ(補助金頼み)
〇 野生動物を良く知る(飼育動物とは違う)
〇 次世代への自然環境教育(命の尊さ)
〇 マスメディアや専門家の報道問題 (過剰報道、情緒的報道、実態とずれた意見の氾濫)
〇 個人個人がもっと状況に応じて考えること
赤堀さんは第44回知楽会 (2025年12月24日)で、「熊の生態と共存」について講演されている。こちらもご覧ください。
第44回知楽会
「熊の生態と共存について~現役猟師が語る:
熊の出没はなぜ増えたか?人はどう対処するべきか?~」
参加者から以下の質問があった。
Q:クマ対策はどこの官庁が管轄しているのか?
A:環境省、農林水産省が管轄し、都道府県市町村が現場での対応を担っている。市町村は、「獲ったら補助金(1頭3~5千円)を出すから、獲ってくれ」というだけの施策で終わっている。これではダメだ。共存の為になにをするべきかについて頭が回っていないのが実情だ。藪を刈るのは個人では無理。予算を付け行政がやらなければだめだ。山に返すだけでは問題は解決しない。最終的にはハンターが銃器で駆除するしかない。その際、山を熟知しているハンターと手を組んでやらないと上手くいかない。
クマの出没増加は単一の原因ではなく、「里山の管理低下 × 人口減少 ×クマの個体数回復 × 気候変動」という複合的な現象である。現役ハンターである赤堀さんから、リアルな話をたっぷり聞くことができた。
3.「フジパンの持続可能な原材料への取り組み」
3番目のコラムは「フジパンの持続可能な原材料への取り組み」で、松瀬さんから以下の話があった。
「昨年7月、フジパン(株)は、『本仕込』食パンにRSPO認証パーム油を使用していることを表すテレビコマーシャルを始めた。RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil)は持続可能なパーム油の普及を目指して2004年に設立された国際NGO。パーム油は、即席麵、スナックなどの揚げ油、加工油脂(チョコレート、マーガリン)、界面活性剤(洗剤、化粧品、工業用添加剤)として広く使用されている。」
「世界の主要植物油である大豆油、菜種油、パーム油の生産量は、近年、人口増加、生活向上、用途拡大を背景として急拡大している。中でもパーム油の生産量は、約100万トン(1961年)から約9000万トン(2025年)へと急拡大。パーム油は世界最大の植物油となっている。」
「パーム油はパーム椰子から採取される。パーム椰子は赤道直下(赤道±5度)の地域でしか商業的に育たないため、インドネシアとマレーシアがパーム油の主要生産国である。スマトラ島とボルネオ島ではパーム油農園の拡大によって多くの熱帯林が失われ、生物多様性の危機、地球温暖化(パーム椰子のCO2吸収量は自然林の1/3、スマトラ島の熱帯林には泥炭地が多く、泥炭地の破壊によってCO2が排出)、人権侵害問題(農園労働者の劣悪な労働環境、児童労働)等を引き起こしている。」
「RSPO認証には農園や搾油工場など、パーム油の生産者側を対象とする農園認証と、パーム油の加工・流通・製品化企業を対象とするサプライチェーン認証がある。いずれも第三者機関による監査を実施し、持続可能なパーム油の普及を目指すRSPOの原則と基準を満たしていることを保証するものである。」
「現在、農園認証は産出量の1/6に留まっている。言い方は悪いが、5/6の農園は好き勝手をやっている状態だ。農園認証が伸び悩む背景には、農園管理の改善、労働環境の整備等に費用がかかることがある。フジパン「本仕込」のRSPO認証マークは、サプライチェーン認証を受けている。サプライチェーン認証の費用は農園認証と比べると少ないが、監査や社内体制の整備等に手間がかかる。」
参加者から以下の質問があった
Q:ほかのパンメーカーの対応はどうか?
A:山崎製パンも敷島製パンもRSPOに加盟しているが、商品にRSPO認証マークは付いていない。認証パーム油をパンに使用しているかどうかは不明。
(注:山崎製パンは2020年に、サプライチェーン認証パーム油の調達を開始した。認証パーム油の調達はサプライチェーン認証を取得していなくとも可能だが、製品に認証マークを付けることはできない。)
フジパンは「環境配慮をブランド価値にする」という戦略を明確に打ち出し、認証マーク表示に踏み切った。山崎製パンも敷島製パンもまだそこまで行っていないと考えられる。
Q:パーム農園の拡大には森林破壊が伴う。農園認証の中身は妥協の産物であり、あまり酷い破壊はするな、しかし、ある程度までは森林破壊を許容するという考えに立っていると思っている。農園認証はなにをどのように審査するのか。その結果、森林破壊がどの程度抑えられたのか?
A:以下は後日、AIに聞いた回答。「農園認証の審査項目は以下の通り。① 農園運営の情報公開
② 法令順守 ③ 長期的な経済的実行性 ④ ベストプラクティスの採用 ⑤ 環境保全と生物多様性の保護 ⑥ 労働者と地域住民への配慮 ⑦ 新規農園の責任ある開発(泥炭地の新規開発禁止、土地紛争の回避等)⑧ 継続的改善。審査は書類確認と現地調査によって行われる。」
以下は松瀬さんの回答。「パーム農園の開発は2000年頃までは自然林を焼き、焼いた木の灰を肥料とする焼畑的な開発をしていた。この方法は低コストで、短期的に土壌肥沃度を上げられるためである。しかし、その効果が薄れてくると新たに自然林を伐採し農園を拡大してきた。このようなムダの多い開発は森林破壊を加速するため、現在、焼畑的な開発は禁止、又は規制されている。」
「パーム椰子は成長が早く、25年程経つと収量が低下するので植え替えられる。このタイミングで初めて農園認証を取得するケースもある。しかし、小規模農園にとっては制度の複雑さとコスト高が壁になって認証を取得できないケースがある。RSPO認証は一定の効果が確認されてはいるが、制度上の限界や抜け穴も多い。RSPO認証はまだ発展途上であり、現在進行中の仕組みである。」
「パーム油の生産量の伸びは全く衰えておらず、スマトラ島の森林の半分以上が既に潰されている。ボルネオ島では現在、急速に森林破壊が進んでいると聞いている。」
Q:既存農園の単位面積当たりの生産量を増やせば、新規開発を減らすことができる。生産性向上の試みはされていないのか?
A:パームオイルの収量は小規模農園で1トン/ヘクタール、大手の農園で3トン/ヘクタール、一番進んだ農園で5トン/ヘクタール。規模が大きいほど技術・資金力が高く、大規模農園では収量を上げる技術開発が行われている。(注:品種改良、土壌・施肥管理、水管理、病害虫管理、収穫・運搬の効率化、植え替え戦略等)
Q:日本へ来る渡り鳥の数が平成元年頃から激減している。その背景にはシベリアが温暖化して日本で越冬する必要がなくなったことがある。東南アジアからの飛来も減っている。焼畑によるトウモロコシ栽培が原因ではないかと思っている。(注:東南アジアの山岳地帯では焼畑でトウモロコシが栽培されている)スマトラ島のパーム油農園の拡大の影響はあるか。
A:スマトラでは森林破壊が進み、そこに住んでいたネズミなどの動物がいなくなるなど、生態系のバランスが大きく崩れている。その結果、餌が減少して鳥の生息数が減っているかもしれない。スマトラタイガー、オランウータンは激減している。2000年頃は生物多様性の危機が問題になったが、2010年頃になるとバイオマス発電の燃料として日本が大量に輸入するパーム椰子殻(PKS: Palm Kernel Shell)が話題になった。パーム椰子殻は現地でもボイラーの燃料として使用しており、不足すると代わりに重油を燃やすことになる。これでは椰子殻バイオマス発電は地球温暖化対策にならない。バイオ燃料も中身をよく見ておかないと、何をやっているんだということになる。
松瀬さんは花王の出身。購買部門で原料調達を担当し、RSPOにも関わった。スマトラ島の持続可能な
パーム油への取り組みについての、体験を交えた貴重な話であった。
4.「山林経営で見えた林業の現実」
4番目のコラムは「山林経営で見えた林業の現実」で、喜藤さんから以下の話があった。
「なぜ山林を保有するに至ったか:秋田県八郎潟の生まれ。(株)ダイエーに入社し、人事・企画部門等を担当。退社後、秋田で事業承継と首都圏の[憲喜1.1]ベンチャーの社外役員、県の総合政策審議会の委員などを務める。10年ほど前、思いがけず、義兄、義父、義母所有の山林を譲り受けることになった。」
「環境問題・林業についてにわか勉強:① 国内の2/3が山林、その内2/5が人工林(スギ、ヒノキ、カラマツ等)② 森林資源は毎年増加(1966~2017年の間、人工林は約6倍に増加)、③ 人工林の半分が樹齢50年以上 (樹齢20年を超えるとスギ、ヒノキのCO2吸収量は減少)
参照:第5回DF環境サロン【林業とバイオマス発電】三浦陽一、【日本の国土の特性と森林管理について考える】横井時久
④ 2020年の山林保有者は69万人。その内、60万人は小規模所有者(10 ha以下、殆どは1ha未満)。
持ち主不明の山林が多い。急峻な土地に植えられた樹木が多い(戦後、無理して植林)。林道・作業道が未整備。再造林率が極めて低い。⑤ 木材価格は1980年に最高値を付けたが、その後下落し長期低迷。(ヒノキ山元立木価格:43千円/m3 (1980年)、7千円/m3(2021年)。輸入材の増加と建築に木材を使わなくなったことが原因。)」
「現場を見て歩いて勉強:中国木材日向工場 (日本一大きい製材所)、秋田の製材所、バイオマス発電所(大仙バイオマスエナジー)等を見学、県の森作り推進課、森林組合を訪問」
「山林を所有するために困ったこと:譲り受ける山林がどこにあるのか、隣の山林との境界がどこなのか、(道路があるから何となく分るが)良く分からない。航空写真を見ても良く分からない。登記簿と山林簿で内容(面積、所有者)が異なる。譲渡対価をいくらにするか難しい。(税制上は山元立木価格で決めるが、それだと高過ぎる。)
提出書類が多い(法務局に不動産登記届、森林組合に所有者変更届/組合員変更届、県に水源森林地域の保全に関する事前届、市に森林の土地所有者届/国土利用計画法に基づく届)」
「いざ、間伐を!森林組合に委託して実施:秋田市郊外の山林(スギ)18 ha、間伐本数率29%、現場はかなり急峻な斜面のため、作業道の開設に際し、真直ぐに山を上がる路線がとれない。クラッシャーで岩を削る工事があり、作業道の開設に効率を求めると山を荒らす恐れがあると感じた。伐採はチェーンソーではなくハーベスタという大型機械で行い、生産性は非常に高い。伐採費/作業道開設費約2000万円、販売代金約1000万円、補助金約1100万円、差引き受取額は約100万円。補助金がないと持ち出しになる。また、補助金の申請から決定まで5年もかかった。」
「県営林の隣地の皆伐を実施:県営林の皆伐計画に合わせ、隣にある山林を皆伐した。登記簿と山林簿で面積が違っていた、名義も違っていて(50年以上前に亡くなっていた祖父の名義)山林の確定に手間がかかった。立木を計り、皆伐費用は相手持ちで一括売却した。」
「皆伐した山林の再造林:再造林について県に相談したら、お任せしますと言われ見積もりを取った。その内容は、① 再造林費用は将来の伐採収益より大きい。② 再造林には国から補助金がでるが、少なからず自己負担がある。③ 差引きの手取りは約200万円。造林から伐採まで50年以上を要して、この程度の利益では誰がやりますかという話であるが、再造林をおこなった。その後、県から補助金がでて、実質的に自己負担はなかった。④ 植えるにも切るのも補助金頼みで、山林経営の大きな制約になっている。」
「これからの林業と我々が取り組めること:① 森林環境税と森林環境贈与税 (森林環境税は1人あたり1000円/年課税され、すべて森林環境贈与税として都道府県、市町村へ配分・譲与される。金額は約600億円/年。一方、国 (林野庁)の林業振興に係る予算は約3300億円/年。森林環境税と森林環境贈与税については以下参照。
参照:1人1000円の「森林環境税」は何に使われるの?森の無い自治体は「ストック」
参照:② 木材の利用拡大。第5回DF環境サロン「日本の林業、森林管理の問題点」(2022年9月)
参照:第8回DF環境サロン「木造高層建築」(2023年3月)金井英雄、山本明男
③ 再造林の促進、④ IT化の促進とDX化、⑤ 森林認証制度、⑥ 山を大事に、そして愛着を
「再造林の課題と対策;秋田県の再造林率は30%程度、事業としては50年の長期事業で投資回収率が極めて低い。
2500本植えて、最後に使える木は600本程度。林道付けや急斜面作業場、再造林が難しいところも多々ある。林業従事者の減少。今とられてる対策は、① 補助金の拡充、② 低コスト/省力造林、③ 森林環境税の活用
C:ヒノキは沢山持っていると価値がある。先祖代々ヒノキの山を持っている家では、百年伐らずに育てなさいと言われている。間伐の費用はヒノキを何本か伐って賄うような、自給自足的な経営をしているところもある。
Q:ロシアからの木材輸入はどの位あるのか?
A:ロシアから製材品、集成材を輸入していたが、ウクライナ侵攻後、輸入禁止措置が実施されている。集成材はEUからの輸入が多く、中国からも輸入している。丸太は米国、カナダからの輸入が多い。
逆に木材を輸出する動きもあり、中国向けに丸太を輸出している。
Q:森林が吸収するCO2の量をクレジットとして取引できる仕組みがあるが、進展はどうか。
A:九州でやった人の話をちらっと聞いたが、手続きがとても面倒で大変だと言っていた。
参考:東急リゾーツ&ステイ「森林経営活動に基づくCO2排出削減プロジェクト」
Q:蓼科に山小屋をもっている。近くの山林は殆どカラマツである。カラマツは材木としてはあまり役に立たないと聞いているがどうか。
A:カラマツも材木として使用されている。手入れができていること、まとまった量があることが大事。
(AI情報:蓼科周辺は標高が高く、冷涼で乾燥した気候・火山性土壌が広がる地域。この条件はカラマツの生育に非常に適しており、八ヶ岳山麓は古くから天然カラマツの自生地として知られている。長野県は全国でも特にカラマツが多く、人工林の約55%がカラマツという突出した割合を占めている。八ヶ岳・蓼科周辺はその中心地で、明治以降の造林政策で大量に植林された。カラマツ材はスギより硬く、粘りがある、樹脂が多く、耐久性が高い等の特徴があり、長野県では建築・土木用材としての利用が非常に多い。)
Q:若い世代には、「平日は都会で働いて、休日は山で過ごす」というライフスタイルが広がっている。木を植えるだけが山の使い道ではない。林業は大事だが、観光的な山の使い方もある。実態はどうか。(観光ほど一過性ではないが、移住ほど重くない中間的な関わりかたもある。)
A:長野などでやっている人いる。北海道では夏場農業をやって、冬場はスキーの仕事をやっているような例もある。
(AI情報:蓼科・八ヶ岳では「山に行く=登山」ではなく、「山で働く・暮らす・学ぶ」という新しい文化が定着しつつある。宿に泊まり、カフェで過ごし、コワーキングで働き、週末は山を歩くという、山に係ることで価値を循環させる事例が生まれている。)
山林経営者のリアルな体験談を聞くことができ、日本の林業の再生について考える良い機会になった。
今回の交流会も取り上げた話題はどれも多面的に議論が発展し、有意義で楽しい交流会になりました。
以 上(環境部会長 中西 聡)